運行管理体制と設備の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 23:16 UTC 版)
「JR羽越本線脱線事故」の記事における「運行管理体制と設備の問題」の解説
東北地方日本海沿岸地域は冬になると頻繁に暴風雪警報が発表されており、当時も暴風雪・波浪警報が発表され、大規模な寒冷前線と通称「爆弾低気圧」発生が予測されていた。リアルタイムの気象レーダーには寒冷前線前縁付近に集中して通常の冬季積乱雲の2倍以上の高度に達する大規模な積乱雲が事故現場に掛かるのが観測されており、激しい雷を伴った暴風雪であったが、この情報が鉄道側では全く利用されていなかった。そもそも事故当時、新潟支社の指令室に設置されている、気象庁からの警報・注意報などの気象情報を受信するためのファックスが数日前から故障したままとなっており、暴風雪・波浪警報を受信できる状態になかったことも、後に明らかとなっている。 警報発表下でも極力生活路線を維持せねばならない事情があるとはいえ、運行見合わせ等の措置を講じずに運行を継続した点においては、JR側に一定の責任を問う事も道義的には可能と考える余地もある。また、気象情報活用法の具体的研究の必要があると思われ、気象庁もとりあえず「気象情報の共有」をJR東日本に対して提案しているが、事故時点では気象情報もそれに基づく減速・抑止規準も無かった。 @media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}事故前日の12月24日にも秋田支社管内で、輸送指令の運行判断の誤りによるものとみられる運行事故が発生していたことが、事故に遭遇した乗客によってインターネット掲示板に書き込まれている。トンネル出口に雪だまりが発生していることが輸送指令に伝わらず、先行の特急が問題なく通過したとして運行を指令し、その結果、列車がトンネル出口で立ち往生してしまったという。輸送指令が判断した先行の特急は、前日に途中で運行を打ち切っており、該当区間を運行していなかった。この事実を知っていた当該列車の運転士は、対向列車の運転士から「雪だまりがある」との情報を聞き、トンネル出口手前で減速していたため、脱線等の事態を免れた。[要出典] また事故の現場となった「第2最上川橋梁」付近では、山陰線余部鉄橋列車転落事故で問題となったパドル型風車利用の風速計(風が水平方向から大きく傾いた場合、正確な風速を計測できなくなる)を使用していた。 加えて、従来は駅長の目測で風速20メートル以上と認められる場合に、輸送指令員に報告する義務規定があったが、風速計と自動防災システムなどの整備を理由として2002年3月に廃止されている。 余部鉄橋列車転落事故は、「警報装置が作動していたにもかかわらず運転を続行した」として、1994年に発生した根室本線の列車転覆事故は、「警報装置の故障を放置したため、異常を検知できなかった」としてそれぞれ立件されたが、1994年に発生した三陸鉄道の列車転覆事故は、「突発的な暴風で、列車が転覆するほどの突風の予測は困難であった」として起訴猶予処分になっている。 2009年12月21日、山形県警は当時のJR東日本新潟支社の輸送課指令室長ら3人を業務上過失致死傷容疑で書類送検したが、2010年3月19日に山形地検は突風の予測は不可能だったと判断し、不起訴とした。なおJR東日本は、遺族や負傷者全員との示談が成立したことを2017年に明らかにしている。
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