護岸に絵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/13 10:24 UTC 版)
80年代後半から90年代前半にかけて、建物に施されるスーパーグラフィックスのように河川護岸のうち堤防護岸・高水護岸や水門ゲート、トンネルの坑口や擁壁などコンクリートの広面積が生じる箇所に絵を描く事例が見受けられた。現在でも、南沢川水門(宮城県登米市津山町柳津)や古川水門(東京都港区海岸)など、水門などに当時描かれたと思しき絵画や模様などが残るものがある。90年代初頭には、陶芸の町として知られる多治見市を流れる土岐川のように陶製タイルを貼って図柄を描く手法や、レリーフをほどこすもの、あるいは化粧型枠で模様をつけるものも多く見受けられたが、多くの土木景観に関する識者や研究者からの相次ぐ批判により、実施事例は少なくなる。 山梨県(2018)や国土交通省河川局が発表した河川景観に関するガイドライン(2006)留意点 4:護岸の模様、など「控えめで周囲の中にとけ込む風景づくりを基本に考え、護岸に絵や模様を描かないようにする。」としており、理由として佐々木(1994)は、土木構造物に生じる広面に絵を描いたことによって、風景全体のバランスが崩れてしまうこと、時間とともに汚れて見苦しくなること、一方で見苦しくならない塗料を開発しても、周囲の木々は季節とともに色を変えていくのに、絵だけはいつまでも同じ色で輝いているという違和感を生じさせること、絵の題材に対し現在だけでなく将来においても全ての人々に受け入れられるようなものを特定することが困難なことなどで、公共性の高い土木構造物のデザイン手段として、不適当であることを挙げている。 一方でうるま市教育委員会主催津波防止用護岸に絵を描く「平宮護岸アートコンクール」や、横須賀市馬堀海岸の護岸壁に描かれたアートペイントを展示する「うみかぜ画廊」、新潟西海岸消波ブロックにペンキで絵を描く「ブロックアート」若洲海浜公園『SEA-FRONT-MUSEUM』、一般社団法人沖縄青年会議所主催沖縄市後援の「泡瀬の護岸に絵を描こう」など、海岸線に沿う護岸などに対しては頻繁に絵画が描かれる。 河川での近年の取り組み事例では、一般社団法人ソトノバは2017年12月初旬、街おこしプロジェクト「染の小道」の実行委員有志による、実験プロジェクトで東京都新宿区の落合・中井エリアを流れる妙正寺川の護岸に染物の文様を描いているほか、落書き防止の意味合いで実施事例がいくつか紹介がなされている。 なおこうした「護岸のペインティング」は屋外広告物に該当するが、東京都屋外広告物条例では護岸に描かれるのは屋外広告物の設置対象場所ではないため、条例に基づく「適用除外の審査」が必要になる。また、道路を使用する場合や道路交通安全上の視点から「ペインティング」が目立つ場合は、交通管理者や道路管理者と事前協議を行う必要が生じる。そして費用は申請者の負担であり、ペインティング掲示期間も永続的ではなく、後の現状回復も実施者当人の自己費用で行う必要がある。
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