製品含有化学物質の管理
製品含有化学物質に対する規制が国内外で強化されています。2006年7月に欧州(EU)で有害物質使用規制「RoHS指令」(*1)、07年3月に「中国版RoHS指令」が施行されたほか、07年6月には欧州の新化学物質規制「REACH」(*2)も施行されました。RoHS指令では鉛、六価クロム、水銀、カドミウム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の6物質の管理が求められ、REACH規制ではその化学物質が3万種類を超えるとも言われています。成形品(アーティクル)に含有する化学物質をいかに管理していくかがメーカーの課題であり、サプライチェーン全体を含めてその情報管理体制の構築を急いでいます。
例えば欧州市場に投入する製品の含有化学物質を調査するには、素材そのものを製造する川上分野、部品をつくる川中分野、完成品メーカーの川下分野がそれぞれ情報を共有する必要があります。その情報伝達を支援する仕組みが国内で完成されつつあります。それが、多くの企業が参加するアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)が提案する化学物質情報伝達手法です。同手法の一つである情報伝達シート「AIS」(*3)は、成形品の材質や質量、各種化学物質規制に該当する物質の含有量、濃度などの情報を記載した共通シートを、企業間で共有化できるようにした仕組みです。共通フォーマット形式のシートを川中企業(部品メーカー)が川下企業(完成品メーカー)に伝達していくことで業界の化学物質情報管理を効率化することができます。
JAMPは素材メーカーなどの川上企業から川中企業への化学物質情報伝達にも同様の情報伝達シート「MSDSplus」(*4)を提案しています。川上・川中・川下のそれぞれの伝達手段にAISとMSDSplusを活用すればサプライチェーン全体での情報管理が容易になるため、AISとMSDSplusは国内企業がREACH対応を進める上での標準手法の一つとして期待されています。
REACHなどの規制は、環境を保全し、私たちが健康で、安全・安心に暮らしていくことを目的としていますが、一方で企業にさまざまな負担がかかることから、企業の国際的な競争力の低下やコスト増、動物実験の増加を助長するのでは、といった意見もあります。日本政府は、REACHの目的を理解しつつも「過剰な義務・負担を事業者に課すべきではない」、「新たな規制が貿易制限的にならないように配慮すべき」とし、EUなどとの交渉で「規制の適正な実施・運営が図られるよう」働きかけを行っています。
*1)RoHS指令(Restriction of Hazardous Substances Directive):家電・電子機器に含まれる有害物質に使用を制限する指令。
*2)REACH(Registration,Evaluation,Authorization and Restriction of Chemicals):化学物質を総合的に登録・評価・認可・制限する制度。
*3)AIS(Article Information Seat):国内外の化学物質管理に関する法令で必要とされる情報を記載するシート
*4)MSDSplus(Material Safety Data Sheet plus):国内法で定められているMSDS(化学物質等安全データシート)に、海外の規制に必要な情報な情報を追加記載するシート。
(掲載日:2008/09/25)
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