米国でのBSE発生への日本と各国の対応
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「BSE問題」の記事における「米国でのBSE発生への日本と各国の対応」の解説
2003年12月23日、米国内で BSE の疑いを受けた牛が発見されたと発表されたため、日本と韓国は直ちに今後の状況が判明するまでの間、当面の米国産牛肉輸入差し止め措置を取った。世界最大の牛肉生産国である米国に対し、牛肉輸入量で第1位と第3位を占めるといわれる日本と韓国の輸入停止により、米国経済・国際経済に与える影響は、きわめて大きくなることが予測された。 厚生労働省は、第三者機関による検査結果を待つことなく、米国農務省の独自の検査結果評価への第三者機関の同意をもって、食品衛生法第5条第2項に基づき米国産の牛肉と牛肉加工品について輸入の禁止を正式に決定した。 翌12月24日(日本時間12月25日)朝までの間に、日本と韓国に続き、メキシコ(輸入量第2位)、ロシア、ブラジル、オーストラリア、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、チリ、コロンビアそして香港が相次いで輸入差し止めあるいは一時輸入差し止めを決めた。この時点で、輸入差し止め措置を行なった国は少なくとも12か国と1地域となり、その合計は米国の牛肉輸出量全体の7割に及ぶ。ちなみに、欧州連合は牛の成長ホルモン(成長促進剤)投与をめぐってすでに輸入を禁止していた。 日本国内の報道によれば、農林水産省と厚生労働省は同日午前中に米国産牛肉と牛肉加工品、生体牛の輸入を一時的に取りやめとし、輸入に必要とされる動物検疫所の輸入検疫証明書発行も停止。その日のうちに BSE 対策本部(本部長・金田英行農水副大臣)を設置した。 国内の外食産業やスーパーなど牛肉を取り扱う企業は、終日今後の対応に追われた。日本子孫基金の小若順一事務局長は毎日新聞のインタビュー取材に応え、「米国は BSE は出ないという大前提に立ち、欧州並みの対策すら取ってこなかった」ことを挙げて米国の対応を批判、米国での BSE 発生に違和感を覚えないと述べ、さらにオーストラリア産牛肉など、安全上比較的リスクの少ない市場へシフトしてこなかった企業の対応を批判した。 また、亀井善之農水相は25日午前の記者会見で、(ウェイブリッジ獣医学研究所による検査の)結果次第と条件をつけながらも、米国に対し牛の全頭検査を求めたいと言明した。 日本では2001年10月から、病死・事故死も含め、すべての牛を検査する全頭検査 (blanket testing) を実施してきた。のみならず、2003年6月4日に成立し、6月11日公布、12月1日に施行された「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛肉トレーサビリティ法、あるいは牛肉履歴管理法とも呼ぶ)によって、すべての牛に個体識別番号を付けることを罰則つきで義務づけ、識別番号をインターネットで検索すれば「出生年月日」「雌雄の別」「母牛の個体識別番号」「飼養施設の所在地」「牛の種別」など牛の個体がたどった履歴を調べることができるようになっている。これは世界でもっとも厳格な牛の個体管理であるといわれている。 2003年12月25日に行なわれた記者会見で福田康夫官房長官が「〔米国で〕全頭検査をしなくても納得いく状況があれば、〔日本への輸入を〕認めなければいけない状況もあるかもしれない」と述べた発言は、全頭検査なしで輸入解禁を容認するもので、関連業界や酪農団体などからダブルスタンダード(二重基準)だと批判する声が上がっているという報道もあった。実際、日本は2003年5月からカナダからの牛肉輸入を禁止している。このときにカナダ当局へ要求した全頭検査が受け容れられなかったことが、禁輸の理由とされていたからである。 なお、米国からの輸入を停止していたメキシコは2004年3月に輸入再開を決定。台湾は2005年3月、輸入再開を決定し、2005年4月に輸入を再開した。
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