新撰姓氏録とは? わかりやすく解説

しんせんしょうじろく〔シンセンシヤウジロク〕【新撰姓氏録】

読み方:しんせんしょうじろく

平安時代諸氏系譜集成30巻・目録1巻多(まんた)親王らの編。嵯峨(さが)天皇勅命により、弘仁6年(815)成立京畿の1182氏を、皇別神別諸蕃分類し、各系譜記したもの。


新撰姓氏録

読み方:シンセンショウジロク(shinsenshoujiroku)

古代系譜書。万多親王ほか編。


新撰姓氏録

読み方:シンセンショウジロク(shinsenshoujiroku)

分野 系譜

年代 平安前期

作者 中務卿四品万多親王〔ほか撰〕


新撰姓氏録

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/04 13:17 UTC 版)

新撰姓氏録』(しんせんしょうじろく)は、平安時代初期の815年弘仁6年)に、嵯峨天皇の命により編纂された古代氏族名鑑。

概要

および畿内に住む1182氏を、その出自により「皇別」・「神別」・「諸蕃」に分類してその祖先を明らかにし、氏名(うじな)の由来、分岐の様子などを記述するものであるが、主として氏族の改賜姓が正確かどうかを判別するために編まれたものである。後述するように、記載氏族が限られているとはいえ、日本古代氏族あるいは日本古代史全般の研究に欠かせない史料である。

現存する『新撰姓氏録』は、目録だけの抄記(抜き書き)であって本文は残っていないが、所々にその残滓が認められるとともに、若干の逸文が知られている。なお、本書の対象とする範囲は京(左京・右京)と五畿内に住む姓氏に限られており、また「序」にはそれすらも過半が登載されていないと記している。

なお、書名に「新撰」とつくのは、企画倒れで終わった『氏族志』のやりなおしという意味であって、『新撰姓氏録』以前に『姓氏録』なる書が存在していたわけではない。

『新撰姓氏録』には「逸文」がかなりあり、その内容にも曾孫を四世孫とする場合や玄孫を四世孫と書いたり、同神あるいは同一人物が違った文字で書かれている場合などがあり、内容のすべてを信頼することはできないという指摘がある[1]

構成

全30巻が3冊の形状となっており、30巻目の後に不掲載の姓氏の記録も添付されている(平氏阿蘇氏など)。

本書には、全部で1182氏姓が記録され、その出自により「皇別」・「神別」・「諸蕃」に3分類され、さらに国別に天神天孫地祇に分類されている。

皇別

筆頭にあげられた「皇別」の姓氏とは、神武天皇以降、天皇家から分かれた氏族のことで、335氏が挙げられている。代表的なものは、清原などがある。皇別氏族は、さらに、皇親(「真人」の姓(カバネ)をもつ氏族)とそれ以外の姓をもつ氏族に分かれる。

神別

「神別」の姓氏とは、神武天皇以前の神代に別れ、あるいは生じた氏族のことで、404氏が挙げられている。神別姓氏は、さらに、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)天孫降臨した際に付き随った神々の子孫を「天神」とし、瓊瓊杵尊から3代の間に分かれた子孫を「天孫」とし、天孫降臨以前から土着していた神々の子孫を「地祇」として3分類している。

「天神」に分類された姓氏は藤原大中臣など246氏、「天孫」は尾張出雲など128氏(隼人系の氏族は天孫に分類される。)、「地祇」は安曇弓削など30氏がある。

諸蕃

「諸蕃」の姓氏とは、渡来人系の氏族で、326氏が挙げられている。諸蕃氏族は、さらに5分類され、「百済」として104氏、「高麗」(高句麗を指す)として41氏、「新羅」として9氏、「加羅」として9氏、「」として163氏それぞれ挙げられる。しかし、「」も元々新羅系の氏族であり、新羅国が敵国になった叱責から逃れるために坂上苅田麻呂は以前新羅から来たと記録されていた先祖「阿知使主」を東漢氏と名乗り、「」から来たと創作した[2]

また、これらのどこにも属さない氏族として、117氏が挙げられている。

記載姓氏

以下、新撰姓氏録に記載されている姓氏を記す[3]

皇別

息長真人、山道真人、坂田酒人真人、八多真人、三国真人、路真人、守山真人、甘南備真人、飛多真人、英多真人、大宅真人、大原真人、島根真人、豊国真人、山於真人、吉野真人、桑田真人、池上真人、海上真人、清原真人、香山真人、登美真人、蜷淵真人、三島真人、淡海真人、三園真人、笠原真人高階真人、氷上真人、岡真人、息長丹生真人、多治真人、為名真人、春日真人、高額真人、当麻真人文室真人、豊野真人、酒人真人、為奈真人。

朝臣中原朝臣良岑朝臣長岡朝臣、広根朝臣、春原朝臣、三原朝臣、永原朝臣、橘朝臣、淡海朝臣、阿部朝臣、布勢朝臣、完人朝臣、高橋朝臣、許曽倍朝臣、阿閉臣、竹田臣、名張臣、佐々貴山公、膳大伴部、阿倍志斐連、石川朝臣田口朝臣桜井朝臣紀朝臣、角朝臣、坂本朝臣、林朝臣、道守朝臣、雀部朝臣、生江、布師首、箭口朝臣、多朝臣小子部宿祢吉備朝臣下道朝臣、御使朝臣、犬上朝臣、坂田宿祢、間人宿祢、新田部宿祢、大春日朝臣、小野朝臣、和安部朝臣、和尓部宿祢、櫟井臣、和安部臣、葉栗臣。

吉田、丸部、丈部下毛野朝臣上毛野朝臣池田朝臣、住吉朝臣、池原朝臣、上毛野坂本朝臣、車持公、大網公、桑原公、川合公、垂水史、商長首、吉弥侯部、甲能、葛城朝臣、稲城壬生公、小槻臣、牟義公、守公、治田連、軽我孫、鴨県主、八多朝臣、巨勢朝臣、巨勢斐太臣、平群朝臣、平群文室朝臣、都保朝臣、高向朝臣田中朝臣、小治田朝臣、川辺朝臣、岸田朝臣、久米朝臣、御炊朝臣、玉手朝臣、掃守田首、佐味朝臣、大野朝臣、垂水公、田辺史、ほか 。

神別

大神朝臣藤原朝臣大中臣朝臣、中臣酒人宿祢、伊香連、中臣宮処連、中臣方岳連、中臣志斐連、殖栗連、中臣大家連、中村連石上朝臣穂積朝臣阿刀宿祢、若湯坐宿祢、舂米宿祢、小治田宿祢、弓削宿祢、氷宿祢、穂積臣、宗形朝臣、矢田部連、矢集連、物部肩野連、柏原連、依羅連、柴垣連、柴垣連、柴垣連、登美連、水取連、大貞連、曽祢連、越智直、衣縫造、軽部造、物部、真神田曽祢連、大宅首、猪名部造大伴宿祢佐伯宿祢大伴連榎本連、神松造、日奉連県犬養宿祢、大椋置始連、雄儀連、竹田連、掃守連、小山連、畝尾連、久米直、浮穴直、宮部造、間人宿祢、爪工連、多米連、出雲宿祢、入間宿祢、佐伯連伊勢朝臣、若倭部、尾張宿祢伊福部宿祢、湯母竹田連、竹田川辺連、石作連、檜前舎人連、榎室連、丹比須布、但馬海直、大炊刑部造、坂合部宿祢、額田部湯坐連、三枝部連、奄智造、額田部、石辺公采女朝臣 ほか。

諸蕃

太秦公宿祢、忌寸、文宿祢武生宿祢、桜野首、伊吉連常世連、山代忌寸、大崗忌寸、楊侯忌寸、木津忌寸、木津史、浄村宿祢、清宗宿祢、清海宿祢、嵩山忌寸、栄山忌寸、長国忌寸、清川忌寸、新長忌寸、当宗忌寸、丹波史、大原史、桑原村主、下村主、上村主、筑紫史、吉水連、牟佐村主、和薬使主、大石、和朝臣百済朝臣、百済公、調連、林連、香山連、高槻連、広田連、石野連、神前連、沙田史、大丘造、小高使主、飛鳥部、高麗朝臣、豊原連、福当連、御笠連、出水連、新城連高史日置造、福当造、河内民首 ほか。

統計

三宅利喜男(大阪市)は、論文『「新撰姓氏録」の証言』(1998)[4]で、歴代天皇別の氏族数の統計を行った。それによると、新撰姓氏録に記される前1182氏族中、皇別氏族の最多は第8代孝元天皇118氏族であり、続いて第5代孝昭天皇44氏族、第10代崇神天皇33氏族、第9代開化天皇22氏、初代神武天皇と第12代景行天皇が21氏族、とされる。

脚注

  1. ^ 佐伯有清『新撰姓氏録の研究』吉川弘文館〈研究篇〉、1984年11月。ISBN 4642021108 
  2. ^ 『古代国家と天皇』創元社、1957年, p. 211.
  3. ^ 序文を除く新撰姓氏録全文 Archived 2006-02-24 at the Wayback Machine.(日本語)
  4. ^ 古田史学会報 二十九号(1998年12月1日 No.29)

参考文献

関連項目

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