振付家として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 08:45 UTC 版)
30代に入った頃から、伊藤は現役ダンサーとして踊り続けながら振付を手がけるようになった。もともと谷バレエ団では、アトリエ公演などで若手ダンサーにも積極的に振付発表の場を与えていて、それが伊藤にもよい刺激となっていた。直接の契機となったのは、オペラ関係での仕事を始めたことであった。 その理由は、オペラ作品を再演するために新国立劇場が振付助手を探していて、バレエ以外にもコンテンポラリーなどの分野に携わっている伊藤が適任と認められたことであった。彼女は2002年に新国立劇場でルーカ・ロンコーニ(en:Luca Ronconi)演出『椿姫』の初演で振付助手を務め、そのときに振付を担当したティツィアーナ・コロンボ(元ミラノ・スカラ座バレエ団プリンシパル)の知遇を得た。その後もオペラの仕事に幅広く関わり続け、新国立劇場以外でも二期会や藤原歌劇団などで『カルメン』、『仮面舞踏会』、『アイーダ』、『セルセ』などの振付を手がけた。 伊藤の創作で基礎となっているのは、谷バレエ団でコールド・バレエから始めてプリマ・バレリーナとしてさまざまな役を踊り演じてきた経験である。本人も「やっぱりドラマ中心の動きをつくりたい。(中略)そういう谷桃子バレエ団での経験が、私の土台になっています。これから年を重ねるに伴い経験することもあると思うので、そこから学び、吸収して作品に生かしていきたいと思っています」とインタビューで述べている。 2013年、伊藤はルッジェーロ・レオンカヴァッロのヴェリズモ・オペラ『道化師」をもとにした創作バレエ『道化師-パリアッチ-』を谷バレエ団に振り付けた。この作品は、振付家の望月則彦(元谷バレエ団芸術監督)の勧めで造られたものであった。2014年には世田谷クラシックバレエ連盟と日本バレエ協会の公演で『ホフマン物語』のバレエ化作品『ホフマンの恋』を発表するなど意欲的な創作活動を続けている。 『道化師-パリアッチ-』は同年のオンステージ新聞「年間ステージベスト5」、『ホフマンの恋』は2014年と2016年に「年間ステージベスト5」に選出された。2018年の谷バレエ団創作公演15『HOKUSAI』と『道化師-パリアッチ-』の演出・振付で文化庁芸術祭優秀賞を受賞した。この年には『年間ステージベスト5』、ダンスマガジン『年間最も印象に残ったコレオグラファー』に舞踊評論家から選ばれるなどの高い評価を受けている。2016年にはチャコットのバレエ鑑賞普及啓発公演『バレエ・プリンセス』の演出と振付を担当して好評で迎えられ、2017年夏には東京と金沢の2都市での再演が実現した。
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