居飛車(対ノーマル四間飛車)の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 07:33 UTC 版)
「大住囲い」の記事における「居飛車(対ノーマル四間飛車)の場合」の解説
コンピュータ将棋ソフトのPonanzaは、ノーマル四間飛車を相手にした時、序盤早々に玉を大住囲いに囲い、そこから様々な陣形に組み換えるという戦法を見せていた。次の図は、世界コンピュータ将棋選手権の決勝リーグでPonanzaが四間飛車に対して大住囲い亜急戦を採用した場面である。 第27回世界コンピュータ将棋選手権決勝△NineDayFever ▲Ponanza ChainerPonanza流対四間飛車大住囲い Ponanza流大住囲い亜急戦には多くの狙いがある。とくに注目されていたのは、次のように段階的な狙いを持った展開である。 第一段階大住囲いから右金を▲5八(△5二)に上げて急戦を見せる。▲6八銀▲6九金型で急戦を仕掛けた場合よりも大住囲いの方が角交換に強い点、右金が▲5七の地点をカバーしている点、右金が剥がされても大住囲いが残るため強度が高い点、金銀の連結が比較的良い点などの利点があるため、四間飛車側は対策を講じる必要がある。 第二段階四間飛車側が角引きや高美濃囲いなどへの伸展といった対策を講じてきた場合には、第二段階に移行し、右金を▲6七(△4三)に上げて囲いを高大住に発展させる。 第三段階高大住が完成すると、四間飛車側が居飛車の陣形を攻略することは難しく、先手も後手も囲いを更に固めることを選んだ場合、持久戦になる。四間飛車側が銀冠へ組み換えたとしても、居飛車側は松尾流穴熊や端歩突き穴熊などそれ以上に頑丈な陣形に組み替えることが可能であり、四間飛車側からこの状況を打開することは難しい。 2010年代後半から、Ponanza流の大住囲い亜急戦を参考にして、プロ棋士の間でも四間飛車や三間飛車や中飛車を相手に二枚金型(7九銀、6八金、5八金型)の亜急戦が流行し始めた。2020年頃には女流棋戦でもたびたび登場するようになった。ただしプロ棋士の場合には、第一段階ではPonanza流とは異なり、先に右金を5八に上げ、一般的な舟囲いの形を作ってから、左金を上げることが多い。Ponanza流の手順よりも従来から指されていた急戦定跡と似ているため、この手順の方がプロ棋士にとっては分かりやすいのである。このような組み方を角田三男が得意としていたことが後に勝又清和によって再発見された。第二段階で二枚金型の大住囲いから高大住へと組み替える点、第三段階で穴熊などの頑丈な陣形を築き上げることを目指す点は、Ponanza流の大住囲い亜急戦と共通している。 2020/02/04順位戦△本田奎持ち駒:飛、歩 持ち駒:角、歩四△谷合廣紀図 高大住での中盤戦 上図は第二段階で中盤の仕掛け合いが展開された例。後手陣の高大住は中央と上部に厚い。△3三桂は角筋を受けているだけでなく、中央や上部での駒の連結や働きを高めている。後手の飛車や右銀も展開に応じて様々な動きを見せた。 2020/08/06順位戦△渡辺和史 持ち駒:なし ▲中村亮介 持ち駒:なし図a 高大住(長大住) 2020/08/06順位戦△渡辺和史 持ち駒:桂 ▲中村亮介 持ち駒:桂、歩二図b 大住囲いから金銀4枚の囲いへの組み換え 第三段階では、穴熊以外の囲いにも発展させることができる。図a、図bはそれぞれ第二段階、第三段階の局面図。2020年の順位戦▲中村亮介-△渡辺和史から採録した。後手は図aから図bにかけて大住囲いを発展させ、金銀4枚の強固な陣形を築いた。先手の中村は▲4七金として千日手に応じた。
※この「居飛車(対ノーマル四間飛車)の場合」の解説は、「大住囲い」の解説の一部です。
「居飛車(対ノーマル四間飛車)の場合」を含む「大住囲い」の記事については、「大住囲い」の概要を参照ください。
- 居飛車の場合のページへのリンク