宇宙旅行での利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 06:41 UTC 版)
フィクションにおいては、しばしば液体呼吸が高加速度環境における対策として用いられることがある。例えばジェリー・アンダーソン製作の『謎の円盤UFO』中ではエイリアンの宇宙服に利用され、宇宙飛行士が高い加速度に耐えられるようにしていた。 流体に加えられる力(地球の重力など)は全方向に分散される。例えば海中では力が分散するため、クジラのように、生物が地上では維持できないほどの巨体にまで成長できる。液体は圧縮してもほとんど体積が変わらないため、航空機の操縦や宇宙旅行などの際に高い加速度を受けても密度が変わらない(非圧縮性流体)。つまり人間を液体の中に浸しておけば、座席やハーネスについている時よりも体に働く慣性力を分散させられる。 同様の記述はコンスタンチン・ツィオルコフスキーの著作にもある。また、ツィオルコフスキーが関わった1935年のソ連映画『宇宙飛行(ロシア語版)』でも、宇宙船の乗組員が潜水服のようなものを着用してチャンバーに入るとそこへ水が満たされ、ロケット発射時の加速度や月面着陸時の衝撃に耐えるという描写がなされており、これらは液体呼吸ではないが、液体を用いて加速度に抗うというアイデアの源流といえる。 この現象については浮力の観点からも考察できる。地球上では、空気中よりも水中にいるときの方が体が軽くなるように感じるが、これは水圧によって重力の影響を相殺する浮力が働くためである。この場合には重力と加速度は同様のものであり、もし2人の人間が加速する船の上にいて、1人は水中に、1人は空気中にいたとすると、水中にいる人は体重が少なくなったかのように感じる。加速に伴って水圧は増すが、これは上記の圧力と同じものであることに注意する必要がある。 潜水への応用の場合は、高圧の気体を呼吸することによる生理学的影響を避けるため液体呼吸が用いられるわけだが、こちらでは高加速度の影響を減じるために用いられるわけで、目的が異なる。 しかしながら、物理的・解剖学的にはこのような応用は不可能であるとされている[要出典]。主な問題は、加速度が加わることによって心臓はより高い圧力をもって血液を送らねばならないという点である。これは液体呼吸を行うことによっては変わらない。さらに、肺を液体で満たすと、特にパーフルオロカーボンのように密度の高いものの場合、重量が増加する。パイロットや宇宙飛行士が経験するような特に強い加速度を受けると、液体で満たされた肺は気体呼吸時よりも遥かに大きな加速度が生じて破壊されてしまうだろうと考えられている。
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