天然ガスの価格規制とは? わかりやすく解説

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天然ガスの価格規制

読み方てんねんがすのかかくきせい
【英】: price controls on natural gas

国ないし州政府などが公益政策物価政策などのために行う国産ガス価格規制をいう。
代表的な事例としては米国、カナダインドネシアなどが挙げられる共産圏除いて天然ガス開発利用進んでいる西欧諸国ではほとんどが、天然ガス輸送配給国営会社独占によって行われているので、法令に基づく価格規制はない。
(1) 米国における規制米国では天然ガスの利用が最も早くから始まり、最も広範で、また価格規制半世紀近い歴史有するが、その実施は円滑であったとはいい難く、常に問題をはらみ、長年論争続いた挙げ句1985 年初頭からは大部分ガス価格規制撤廃された。その歴史概要次のとおりである。
(i) FPC による規制始まり天然ガス都市ガス源として公益性があることから、州とか市のレベルでの監視規制早くら行われていたが、技術の進歩に伴い長距離パイプラインで産ガス州からガス消費地輸送販売されるようになって、その地域独占的な傾向のある販売ルートからして連邦レベル安定供給監視が必要であるとし、1938 年天然ガス法が制定され従来から電力事業監督当たっていた連邦動力委員会FPC現在の FERC )に州際パイプライン敷設認可卸価格規制権限がゆだねられた。
(ii) 原価主義による規制長距離パイプライン会社は大資本であり、ガス生産部門まで持つ総合会社場合FPCパイプライン会社仕入原価としての井戸元価格まで査定せざるを得なかった。これに対して規制独立系産油・産ガス会社Phillips1948 年井戸元価格値上げしたとき、これによりウィスコンシン州公益委員会が、州際パイプライン販売している同社ガス価格FPC による規制井戸元価格にまで及ぶものであるとして、裁判訴えた係争最高裁持ち込まれ1954 年ウィスコンシン州勝訴終わり、このとき以来 FPC井戸元価格まで規制させられることになったFPC規制はあくまで公益事業過剰利益を得させないという立場から、適正価格原価プラス適正利潤という考え方に立ち、1954 年から 1960 年まではガス田ごとの井戸元価格査定する方式をとったが、探鉱費をどう見るかなど、天然ガス生産原価査定は簡単ではなく過大な作業消化しきれず、1961 年からは地域別価格公定するという方式切り換えた。しかしここでも原価主義に立ち、生産コストに関する過去統計基づいた平均コスト採用したので、将来向かって投資コスト無視されているとか、平均上のコストがかかるガス田赤字になるとかで、投資意欲はそがれた一方需要者にとってガス価格石油よりもはるかに安くガス消費増大続け双方相まって 1968 年ごろからガス埋蔵量減少向かい1970 年からは冬場ガス不足が社会的に問題となり、FPC による抑制的なガス価格規制批判がわき起こった
(iii) 全国一律価格規制ここにおいて FPC もようやく供給力増強のため、探鉱開発促進するような価格の必要を認め新たに発見されガス田に対して高値をつけることを認めたが、なお不十分で効果発揮しないうちに石油危機遭遇し、もはや天然ガス価格コスト主義による規制でなく、エネルギー政策一環とせざるを得なくなり1974 年 6 月からは新ガス全国一律価格設定し、これを年々引上げたが、インフレ石油価格急騰目まぐるしくFPCガス価格はこれを後追いして改訂するだけで、州際ガス価格規制外の州内価格よりも常に低価格で、州際市場に向かうガスは減る一方であった。
(iv) 天然ガス政策法NGPA):冬季になるとガス不足するという状態を前に天然ガス価格規制撤廃論を含め政策論争の的になり、議会18 カ月討議の末に 1978 年天然ガス政策法」を制定した。この法律では新ガス・旧ガスをさらに詳細に分類し、またいくつも特例設けガス29 種に分類されそれぞれ年々エスカレートさせ、1985 年 1 月 1 日以降は旧ガス一部残して価格規制撤廃されこととされた。1981 年以降国産原油価格自由化したレーガン政権の下で再び天然ガス価格どうするかの議論が行われたが、結論出ないまま、1985 年 1 月 1 日から予定どおりガスおよび高コスト・ガスの価格規制撤廃された。
(2) カナダにおける規制カナダ天然ガス価格問題となるようになったのは、価格上昇し始めた 1973 年以降であり、同年 10 月アルバータ州は「アルバータ石油販売委員会」を設立し州内および州境渡し石油・ガス価格決め権限与えた。これに対して長距離パイプライン認可および輸出認可を「国家エネルギー委員会NEB)」に与えている連邦政府は、「天然ガス価格合意1975 」を制定した以来連邦政府アルバータ州その他のガス州の政府とが協議してトロントにおける天然ガス価格輸入原油価格(これも価格規制受けていた)の 65 %と決め、これに基づきアルバータ州政府州境渡し価格決め、また連邦政府対米輸出価格それ以下としてはならないとした。しかし 1984 年以来米国ガス市場価格軟化して、これを守ることが難しくなり、1985 年 3 月末には、連邦政府アルバータサスカチワンBC 諸州との間の取決めWestern Accord)により、石油価格については、当面 1985 年 4 月 1 日から同年 11 月 1 日まではアルバータ国境渡し価格 3C$ / 百万 Btu 、トロントガス卸価格を 4.15C$ / 百万 Btu凍結しその後規制撤廃目標検討委員会の設置決めた
(3) インドネシアにおける規制ガス輸出国あり、か発展途上国であるインドネシアでは、国内におけるガス利用奨励産業振興目的として天然ガス価格用途別規制している。特に製鉄所燃料肥料工場原料特別に安く 0.60 ~ 1.00ドル百万 Btu に、発電用2.00 ドル百万 Btu に、その他工業用は 3.00ドル百万 Btu にしている。



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