塾生の1日
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 03:49 UTC 版)
「日本女子体育専門学校 (旧制)」の記事における「塾生の1日」の解説
二階堂体操塾はトクヨ塾長を中心として塾生とともに創り上げていく共同体であり、塾舎はトクヨの厳格さと慈愛に満ちていた。 二階堂体操塾は全寮制であり、塾の1日は朝の起床から始まる。塾生は顔を洗った後、自室と分担場所の掃除を行い、徒手体操をする。生徒の化粧は禁止されていた。7時に朝食を自室で摂り、休憩をはさんで1時限目の授業が始まる。食事の準備などの家事一切はトクヨの母・二階堂キンと住み込みのお手伝いさん2人が担当し、配膳は当番制で塾生が行った。トイレに行く時間まで決められており、朝は起床後と朝食後に行くように求められた。これは教師になった後、授業中に尿意を催さないようにするための訓練を兼ねたものだった。 「実質本位」を掲げ、女子高等師範学校が3年かけて教える内容を1年で叩き込むこととしていたため、チャイムを鳴らさず、出席簿も付けないという状態ながら、塾生は緊張感をもって授業に臨んだ。1時限目の授業は、トクヨ塾長自らが指導する講義がほとんどであった。外部講師は、決められた時間にきっちりとやってきて講義や実技を指導した。午前の授業は11時までで、その間10時頃におやつが出されるが、おやつを食べるための休み時間はなく、塾生は実技をしながら食べていた。雨天で屋外での実技ができなかった場合や、土曜日の夜は、「つぎあて」の時間に充当された。 午前の授業が終わると洗面、休憩をはさんで昼食となり、食後は13時まで昼休みであった。昼休みは文字通り休むことが求められ、手紙を書く以外の行動は認められなかった。 午後の授業は13時から17時までみっちり詰まっており、午前中と同じく業間におやつが出された。午後の実技もたいていはトクヨ塾長が自らダンスや棍棒などを指導した。授業中にはトクヨが「○○にはこういう癖がある」と一人ひとりに講評を行い、面と向かって指摘されるため泣き出す塾生もいたという。17時に授業が終わると夕食となるが、これで1日は終わらず、食後に英語などの授業が行われた。英語の講師は東大の学生が務め、原書で物語などを読むというものであった。授業以外にも、生徒を集めてトクヨがお話会を開くことも多かった。お話会の内容は西洋の物語や人生論、イギリスでの生活などであった。特に西洋の物語では、「ハムレット」、「リア王」、「オセロ」、「人魚姫」などを語り聞かせ、生徒は登場人物になりきって聞き入り、トクヨは語りながら感情移入して涙をこぼすこともあった。トクヨの話は2 - 3時間に及ぶものだったと人見絹枝は回想している。第1期生の証言によると、すべて終わるのは21時であったという。 授業が終わると寄宿舎へ帰った。寄宿舎では「足が曲がる」という理由で座ることが禁止されていた。
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