単純サイクル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/10 06:26 UTC 版)
単純なブレイトンサイクルの P–v 線図および T–s 線図を図 1 、2 に示す。図の番号は次の機器(状態変化)に対応している。 1 → 2 : 圧縮機 (断熱圧縮) 2 → 3 : 燃焼器 (等圧加熱) 3 → 4 : タービン (断熱膨張) 4 → 1 : 大気中への排気と給気 (等圧冷却) 比熱一定の理想気体の可逆変化を仮定することにより、各点の状態量は下表のように求まる。ただし、 κ = c p / c v {\displaystyle \kappa =c_{p}/c_{v}} は定圧比熱と定積比熱の比であり、空気等の 2 原子分子気体では ほぼ 1.4 である。また、パラメータ ϕ {\displaystyle \phi } は圧力比と呼ばれる。 サイクル各点の状態量圧力比体積絶対温度1 p 1 {\displaystyle p_{1}} v 1 {\displaystyle v_{1}} T 1 {\displaystyle T_{1}} 2 p 1 ϕ {\displaystyle p_{1}\phi } v 1 / ϕ 1 / κ {\displaystyle v_{1}/\phi ^{1/\kappa }} T 1 ϕ ( κ − 1 ) / κ {\displaystyle T_{1}\phi ^{(\kappa -1)/\kappa }} 3 p 1 ϕ {\displaystyle p_{1}\phi } v 1 σ / ϕ 1 / κ {\displaystyle v_{1}\sigma /\phi ^{1/\kappa }} T 1 σ ϕ ( κ − 1 ) / κ {\displaystyle T_{1}\sigma \phi ^{(\kappa -1)/\kappa }} 4 p 1 {\displaystyle p_{1}} v 1 σ {\displaystyle v_{1}\sigma } T 1 σ {\displaystyle T_{1}\sigma } ϕ = p 2 / p 1 {\displaystyle \phi =p_{2}/p_{1}} 、 σ = T 3 / T 2 {\displaystyle \sigma =T_{3}/T_{2}} このサイクルの単位質量あたりの加熱量 q h {\displaystyle q_{\mathrm {h} }} 、放熱量 q l {\displaystyle q_{\mathrm {l} }} 、得られる正味の仕事 w {\displaystyle w} および熱効率 η {\displaystyle \eta } は下記のとおりとなる。 q h = c p ( T 3 − T 2 ) = T 1 ( σ − 1 ) ϕ ( κ − 1 ) / κ {\displaystyle q_{\mathrm {h} }=c_{p}(T_{3}-T_{2})=T_{1}(\sigma -1)\phi ^{(\kappa -1)/\kappa }\,} q l = c p ( T 4 − T 1 ) = T 1 ( σ − 1 ) {\displaystyle q_{\mathrm {l} }=c_{p}(T_{4}-T_{1})=T_{1}(\sigma -1)\,} w = q h − q l = T 1 ( σ − 1 ) { ϕ ( κ − 1 ) / κ − 1 } {\displaystyle w=q_{\mathrm {h} }-q_{\mathrm {l} }=T_{1}(\sigma -1)\{\phi ^{(\kappa -1)/\kappa }-1\}\,} η = w q h = 1 − 1 ϕ ( κ − 1 ) / κ {\displaystyle \eta ={\frac {w}{q_{\mathrm {h} }}}=1-{\frac {1}{\phi ^{(\kappa -1)/\kappa }}}\,} 熱効率は、上式のように圧力比 ϕ {\displaystyle \phi } に大きく依存し、圧力比の上昇と共に向上するので、圧力比を上げることが第一の課題となるが、それには以下のような問題が生じる。 実際のガスタービン機関では、燃焼ガスにさらされるタービン翼の高温強度上の制約により、タービン入口のガス温度 T 3 {\displaystyle T_{3}} が制限される。タービン入口温度を一定に保って圧力比を上昇させたときの、p-v 線図を図 3 に示す。圧力比が上昇すると 1234 のサイクルが 12'3'4' となり、圧縮後 2' の空気温度が高くなるので、燃焼器バーナーでの燃料噴射量を減らして単位空気量あたりの加熱量を減らさざるを得なくなる。このため、圧力比がある程度高くなると、圧力比の上昇と共に単位空気量あたりの仕事量(p-v線図の面積)が減少する。これは所要出力に対する設備費の増大をきたすことになり、経済的メリットが低下する。 また、高い圧力比では圧縮機高圧段の翼列の直径が小さくなり、翼端とケーシング間のギャップからの空気漏洩による損失が大きくなる。このため圧縮機の効率が低下し、結果的に全体の熱効率が低下する。一般的なガスタービン機関では、圧力比は概ね 11~16 の範囲の値となっている。
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