人工放射線
じんこう‐ほうしゃせん〔‐ハウシヤセン〕【人工放射線】
人工放射線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/20 06:31 UTC 版)
核分裂や加速器などにより作り出された放射性物質からの放射線である。核実験や原子力事故の際に放出される放射性降下物によるもので自然放射線よりさらに局地性がある。世界平均は0.11mSv、日本では0.012mSvと推計されている。 米国、ソ連、イギリス、フランス、中国などが1945年から50年間に約2000回の核実験が行われた。1940年代から60年代にかけて行った500回以上の大気圏内での核爆発実験や原爆投下による放射性物質の飛散により、1963年には年間0.15mSv(全環境放射線の7%に相当する量)の増加があり、その後の核実験自粛により2000年には残存放射は0.005mSvまで減少したと考えられている。<注>英語版のen:Background radiation#Human-caused background radiationの節より。 原子力発電所では平常運転時に微量の放射性物質を排出しているが、原子力事故の際には大量の放射性物質が拡散している。その他の放射性物質を扱う施設(研究施設や病院など)からも平時に微量に放出されつづけている。放射性同位体の放射能、などが挙げられる。原子力発電所の事故(原子力事故)などがあると数値が大きくなる。環境放射能に大きな影響を与えた原子力発電所の事故には1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故、2011年以降の福島第一原子力発電所事故がある。その他の船舶用原子炉なども平時運転時および事故の際は原子力発電所と同様に拡散源となる。 1993年の国連科学委員会の報告によると1945年から60年代に行われた大気圏核爆発により拡散した放射性物質による被ばく線量は2230万人Svと推定されている。対してチェルノブイリ事故による線量は60万人Svと推定されており核爆発の15回分に相当している。 また火力発電で燃やす石炭から出るフライアッシュも放射性物質を拡散させている。ただしこれは地殻に存在していた放射性物質を生活圏内に放出しているもので、新しく作り出されたものではない。フライアッシュによる影響は原子炉の運転による影響より大きいという報告もある。 局所的ではあるがX線(レントゲン)撮影(約0.02mSv、口内X線は0.0033mSv)やCTスキャン(7-20mSv)装置などからの放射線がある。医療で使われていると健康に良いというようなイメージを持ってしまう人もいるが、たとえ医療目的で用いられても、放射線は有害であることに変わりはない。アメリカや西ヨーロッパ等の医療先進国では一人一年あたり0.5mSvの医療被ばくがあると報告されている。CTスキャンなどが普及した国では医療被ばくが自然被ばくの値を超えてきており、リスクが危惧され始めている。電気事業連合会では、医療被曝は世界0.61mSv、日本2.25mSvと推定している。
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