フォールアウト
英語:fallout、nuclear fallout
上空に舞い上げられた後、降り落ちてくる、放射性物質の塵。「死の灰」と呼ばれることもある。
フォールアウトは、核爆発によって気化した放射性セシウム(セシウム137)や放射性ヨウ素(ヨウ素131)といった放射性物質である。大気中に舞い上げられた放射性物質は、風に乗って遠隔地まで運ばれ、そこで地に降る。
従来、「フォールアウト」はもっぱら核実験により飛散した放射性下降物を指したが、今日では核実験だけでなく原発事故によって外部に放出された放射性下降物も「フォールアウト」と呼ばれることが多い。一般的に「最悪の原子力事故」と呼ばれることが多いチェルノブイリ原子力発電所事故では、多量のフォールアウトが広範囲に飛散し、隣国を含む広範囲を核で汚染したとされている。
2011年3月18日現在、東京電力福島第一原子力発電所で発生した原発事故において、一部では再臨界への到達による核爆発と、それに伴う多量のフォールアウトの発生への危惧が囁かれている。
ほうしゃせい‐こうかぶつ〔ハウシヤセイカウカブツ〕【放射性降下物】
放射性降下物
英語表記:radioactive fallout
大気中で降ってくる放射性核種のこと( フォオールアウトとも言う)。とくに過去の原水爆実験等によって発生した核分裂生成物が雨水、ちりなどに伴って降下(粒子状のもの)したものをいう。
降下物(放射性降下物)
放射性降下物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/07 05:05 UTC 版)
放射性降下物(ほうしゃせいこうかぶつ、英: nuclear fallout)またはフォールアウト(英: fallout)[注釈 1]とは、核兵器や原子力事故などで生じた放射性物質を含んだ塵を言う[1]。広域な放射能汚染を引き起こす原因はこの放射性降下物である。
注釈
- ^ 爆発で生じた物質がいったん上空に舞い上がった後、地上に「降下する」ことからフォールアウトと名づけられた。爆発地点から遠く離れた所に落下するものを放射性降下物といい、爆発地点に落ちてきたものを戻り降下物という。
- ^ カール・セーガンらは、全面核戦争の際には、大量に発生した放射性降下物が大気中に拡散し、太陽光線を遮る影響で「核の冬」が起きると主張している。
- ^ 1945年7月16日にアメリカで人類最初の核実験であるトリニティ実験が実施された。その後、日本への実戦使用を経て、第二次世界大戦後はマーシャル諸島のビキニ環礁やエニウェトク環礁と合わせて67回の核実験を行い、米国のネバダ州では928回行われたと言われる。
- ^ 核分裂生成物の中でも半減期の長い137Cs(30年)、90Sr(28.8年)そしてプルトニウムの放射性同位元素(239Pu、240Pu)などは、1990年代においても各地で有意に検出されていた[2]。
- ^ 船員は多量の放射性降下物を被曝したと日本人医師団は主張したが、米国側は「放射能よりもむしろサンゴの塵の化学的影響」として放射線障害を否定した。
- ^ 日本においては、原子力防災の際の体制については『原子力発電所等周辺の防災対策について』で決められている。
- ^ 核分裂生成物は、中程度の質量数を持つ核種からなり、重いウラン235やプルトニウム239の原子核が核分裂反応で分裂したときに生じる。核分裂では300を越える種類の核分裂生成物が生じる。これらの多くは、それぞれ大きく異なる半減期を持った放射性同位体である。半減期が非常に短い(1秒以下)核種もあるが、数ヶ月から数年間におよぶ半減期を持つ核種もある。これら核種の崩壊モードは主にベータ崩壊とガンマ崩壊である。
核爆発では核出力1キロトンにつきおよそ60gの核分裂生成物が生じる。爆発から1分後のこれら核分裂生成物の推定放射能は、1.1×1021Bqであり、子孫核種と平衡状態にあるラジウム3万トン分の放射能と等しい。半減期の短い核種ほど、無害な核種に落ち着くまでの時間は短いが、短時間に多量の放射線を放つため単位量あたりの危険度は高い。 - ^ 核兵器は核分裂性物質をすべて分裂させるわけではない。連鎖反応によって爆発的に生じるエネルギーは、反応中心の周辺にある核分裂性物質に連鎖反応が伝播する以前にこれらを吹き飛ばしてしまうからである。このため多くのウランやプルトニウムは核分裂せずに爆発で分散される。このような核分裂に寄与しなかった核物質は、主にアルファ粒子を放射して崩壊する。アルファ粒子は空気中では数センチメートルから数メートル程度の飛程しかなく、物質を通り抜ける力が小さいため、その発生源が環境中にある場合の危険度は低い。しかしこれらが生命体の中に取り込まれると、アルファ粒子が体内組織を直撃するために重篤な症状を招くことになる。これを内部被曝という。なお、ウラン・プルトニウムは、放射毒性はあるものの、砒素や青酸化合物といった代表的な毒物と比較して生化学的毒性はそれほど強くないといわれている。これらは空気中の酸素と速やかに反応し、粉末状になって周囲を汚染する。この粉末がひとたび気流に乗れば、何千キロメートル先までも拡散しつつ汚染範囲を広げる。核分裂生成物と異なり、これらの半減期は非常に長く、また最終的に放射線を放たない鉛に落ち着くまでには数千億年を超える期間を要する。その期間の長さは地球の歴史(約46億年)や太陽の寿命(約50億年)をも凌駕しており、太陽系が滅亡しても無害化せず、人類の感覚でいうと「永遠」である。
- ^ 原子核が中性子束に曝露され、中性子を捕獲して中性子過剰核となった場合、放射能を持つ核種に転換される。これを放射化といい、出来た放射能を誘導放射能という。それは安定同位体になるまで様々な放射性崩壊を繰り返する。初期の核反応の放射線の一部として放射された中性子は、核兵器を構成する物質の残余を放射化する。その組成と中性子線バーストからの距離にもよるが、核爆発周辺の環境中に存在する物質の原子(例えば土壌、大気、水)が放射化される。例えば、爆心地周辺の狭い地域は、地中の鉱物が初期の中性子線に曝露することにより放射化する。これは、地中のナトリウム、マンガン、アルミニウム、珪素が中性子を捕獲することに起因する。影響される範囲が狭いが、核爆発直後に爆心地に外部から入った者は、核分裂生成物だけではない、これらの放射化された物質、誘導放射能からも被曝する[1]。
出典
- ^ a b 服部(2001)
- ^ 草間(1995) p.68
- ^ a b “ネプツニウム-237(237Np)”. 原子力資料情報室. 2018年3月2日閲覧。
- ^ “Neptunium-237 production from atmospheric nuclear testing”. IAEA. 2018年3月2日閲覧。
放射性降下物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 02:45 UTC 版)
プラムボブ作戦では、58.3メガキュリー(2.16エクサベクレル)のヨウ素131が大気中に放出された。これは、全ての一般市民の甲状腺組織が、合わせて120メガラドの放射線に晒されたことを意味する(この量は、米国内で実施された全ての核実験の32%に相当する)。統計的に言えば、この放射線量は38,000人に甲状腺ガンを発生させ、そのうちの1,900人を死に至らしめるものである。しかしながら、本実験による一般市民への影響を長期間調べたデータは存在しない。 一般市民への影響に関して付け加えると、兵士達が爆発の近くで作戦行動を行った”スモーキー”実験では、3,000人以上の軍人が比較的高レベルの放射線に晒された。この時の軍人に対する1980年の調査では、彼らの白血病の発生率が明らかに高いことが判明した。
※この「放射性降下物」の解説は、「プラムボブ作戦」の解説の一部です。
「放射性降下物」を含む「プラムボブ作戦」の記事については、「プラムボブ作戦」の概要を参照ください。
放射性降下物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 17:31 UTC 版)
セダン核実験は、結果として2つの放射能を含んだ雲の固まりを作り出した(1つは3,000メートル、もう1つは4,900メートルの高さまで吹き上がった)。この2つの雲の固まりは、最初は北東から次第に東の方向に流れ大西洋に向かった。この雲が流れる途中で、米国のいくつかの州の狭い範囲に大量の放射性降下物が降った。特にアイオワ州内の8つの郡、ネブラスカ州とサウスダコタ州、およびイリノイ州の各々1つの郡においても強い放射能が検出された。アイオワ州のハワード、ミッチェル、ワースの各郡、サウスダコタ州のワッシュバーグ郡(現在はジャクソン郡に統合されている)は特にひどい放射能に汚染された。これら4つの郡では、最高で1 平方メートルあたり6,000マイクロキューリーの放射能が検出された。 米国内で実施された核実験の中でも、セダンは高い放射能を引き起こしたものにランクされる。この実験では、880,000キューリーの放射性のヨウ素131(甲状腺障害を引き起こす)が空気中に拡散した。またこの実験は、金198、金199、ベリリウム7、モリブデン99、ネオジム147、鉛203、タングステン181、タングステン185、タングステン188のそれぞれの拡散量において1位であり、コバルト57、コバルト60、マンガン54の量で2位、ナトリウム24の量で3位である 。 セダンで発生した放射性降下物は、ネバダ核実験場で行われたすべての核実験において全米国民に降下した放射能の7%以上に達し、1,300万人以上が被曝した[要出典]。この被曝者数は、米国内で実施された核実験の中でも最多である。セダンの影響は、1952年6月1日に実施されたタンブラー・スナッパー作戦のジョージ核実験に似ており、こちらも全放射性降下物の7%に達したが、当時は1962年より人口が少なかったために被曝者数は1,100万人であった[要出典]。この2つの核実験で被曝した人口は正確には公表されず、アメリカ保健社会福祉省、アメリカ疾病予防管理センター、アメリカ国立癌研究所はジョージ核実験が最多でありセダン核実験が2番目と公表していた。
※この「放射性降下物」の解説は、「セダン核実験」の解説の一部です。
「放射性降下物」を含む「セダン核実験」の記事については、「セダン核実験」の概要を参照ください。
「放射性降下物」の例文・使い方・用例・文例
- 放射性降下物のページへのリンク