リー微分
リー微分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/16 14:37 UTC 版)
「一般相対性理論の数学」の記事における「リー微分」の解説
詳細は「リー微分」および「時空の対称性(英語版)(Spacetime symmetries) 」を参照 もうひとつの重要なテンソル微分は、リー微分である。一般相対性理論では、アフィン接続を通して計量に依存しているように見える表現が使われるが、共変微分とは異なり、リー微分は計量独立な微分である。共変微分は異なる点でのベクトルどうしの比較が可能であることをアフィン接続に要求するが、リー微分は同じ目的を達成するためベクトル場から来る合同性を使う。合同に沿って函数を引き継ぐ (Lie dragging) というアイデアはリー微分を、引き継がれた函数と与えられた点での元の函数の値とを比較することで定義する。リー微分はタイプ (r, s) のテンソル場に対して定義することができ、この観点からはタイプ (r, s) からタイプ (r, s) のテンソルへの写像とみなすことができる。 リー微分は通常、 L X {\displaystyle \scriptstyle {\mathcal {L}}_{X}} と記される。ここに X {\displaystyle \scriptstyle X} はリー微分の取る合同(英語版)(congruence) に沿ったベクトル場である。 ベクトル場にそったテンソルのリー微分は、テンソル場とベクトル場の共変微分を通して表現することができる。スカラーのリー微分は、単に方向微分である。 L X ϕ = X a ∇ a ϕ = X a ∂ ϕ ∂ x a {\displaystyle {\mathcal {L}}_{X}\phi =X^{a}\nabla _{a}\phi =X^{a}{\frac {\partial \phi }{\partial x^{a}}}} リー微分には、高次ランクの項がさらに加えられる。例えば、タイプ (0, 2) のテンソルは、 L X T a b = X c ∇ c T a b + ( ∇ a X c ) T c b + ( ∇ b X c ) T a c = X c T a b , c + X , a c T c b + X , b c T a c {\displaystyle {\begin{aligned}{\mathcal {L}}_{X}T_{ab}&=X^{c}\nabla _{c}T_{ab}+(\nabla _{a}X^{c})T_{cb}+(\nabla _{b}X^{c})T_{ac}\\&=X^{c}T_{ab,c}+X_{,a}^{c}T_{cb}+X_{,b}^{c}T_{ac}\end{aligned}}} である。 さらに一般的には、 L X T a 1 … a r b 1 … b s = X c ( ∇ c T a 1 … a r b 1 … b s ) − ( ∇ c X a 1 ) T c … a r b 1 … b s − ⋯ − ( ∇ c X a r ) T a 1 … a r − 1 c b 1 … b s + ( ∇ b 1 X c ) T a 1 … a r c … b s + ⋯ + ( ∇ b s X c ) T a 1 … a r b 1 … b s − 1 c {\displaystyle {\begin{aligned}{\mathcal {L}}_{X}T^{a_{1}\ldots a_{r}}{}_{b_{1}\ldots b_{s}}=&X^{c}(\nabla _{c}T^{a_{1}\ldots a_{r}}{}_{b_{1}\ldots b_{s}})\\&-(\nabla _{c}X^{a_{1}})T^{c\ldots a_{r}}{}_{b_{1}\ldots b_{s}}-\cdots -(\nabla _{c}X^{a_{r}})T^{a_{1}\ldots a_{r-1}c}{}_{b_{1}\ldots b_{s}}\\&+(\nabla _{b_{1}}X^{c})T^{a_{1}\ldots a_{r}}{}_{c\ldots b_{s}}+\cdots +(\nabla _{b_{s}}X^{c})T^{a_{1}\ldots a_{r}}{}_{b_{1}\ldots b_{s-1}c}\end{aligned}}} である。実際、上記の表現では、共変微分 ∇ a {\displaystyle \scriptstyle \nabla _{a}} を「任意」の捩れのない接続 ∇ ~ a {\displaystyle \scriptstyle {\tilde {\nabla }}_{a}} 、あるいは、局所的には座標独立な微分 ∂ a {\displaystyle \scriptstyle \partial _{a}} と置き換えることができる。このことは、リー微分は計量独立であることを示している。しかし共変微分のほうは添字の上げ下げと可換である点で便利である。 一般相対性理論においてリー微分の主要な使い方のひとつは、時空の対称性を研究する場合である。時空の対称性があると、テンソルや他の幾何学的な対象が保存され る。特に、キリングの対称性(リー微分による函数の引き継ぎの下での計量の対称性)は、時空の研究に非常に頻繁に現れてくる。上の公式を使い、キリング対称性を生成するベクトル場が満たす条件を書き下すことができる。 L X g a b = 0 ⇔ ∇ a X b + ∇ b X a = 0 ⇔ X c g a b , c + X , a c g b c + X , b c g a c = 0 {\displaystyle {\begin{aligned}{\mathcal {L}}_{X}g_{ab}&=0\\\Leftrightarrow \nabla _{a}X_{b}+\nabla _{b}X_{a}&=0\\\Leftrightarrow X^{c}g_{ab,c}+X_{,a}^{c}g_{bc}+X_{,b}^{c}g_{ac}&=0\end{aligned}}}
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リー微分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 03:09 UTC 版)
ソフス・リー (Sophus Lie) に因んだリー微分は多様体 M 上のテンソル場の多元環上の微分(英語版)である。M 上のすべてのリー微分からなるベクトル空間は [ A , B ] := L A B = − L B A {\displaystyle [A,B]:={\mathcal {L}}_{A}B=-{\mathcal {L}}_{B}A} で定義されるリーブラケット(英語版)に関して無限次元リー環をなす。 リー微分は M 上のフロー(active(英語版)微分同相写像)の無限小生成子としてベクトル場によって表現される。逆にみると、M の微分同相の群はリー群論の直接の類似の方法でリー微分の付随するリー環の構造を持つ。
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