メンデルの法則
別表記:メンデリズム
「メンデルの法則」とは、19世紀半ばにメンデル(G. Mendel)が発見した遺伝に関する基本法則のことである。「優性の法則」「分離の法則」「独立の法則」の3法則からなる。遺伝学という分野が生まれるきっかけとなった成果として知られる。
「メンデルの法則」の基本的な意味
メンデルの法則は、オーストリアで司祭および生物学者をしていたグレゴール・ヨハン・メンデルによって1865年に発表された。エンドウ豆の交配実験によって発見された遺伝の3法則(優性の法則・分離の法則・独立の法則)が報告されている。メンデルの法則は、発表後しばらくの間は大した反響を呼ばなかった。1900年に他の学者がメンデルの法則を再発見し、それを機にメンデルの法則が本格的に評価されるようになった。オランダのユーゴー・ド・フリースはオオマツヨイグサを用いて、ドイツのカール・エーリヒ・コレンスとオーストリアのエーリッヒ・チェルマックはエンドウ豆を用いて実験を行った。その結果がメンデルの法則を裏付けることになったわけである。
メンデルの法則は今日でも多くの生物に当てはまる基礎的な法則と位置づけられる。もっとも、メンデルの法則が遺伝学の原理を完全に支配しているというわけではない。不完全優性、複対立遺伝子、致死遺伝子といった例外的事象も発見されている。
「メンデルの法則」の語源・由来
「メンデルの法則」は、発見者グレゴール・ヨハン・メンデルの名にちなんだ呼び名である。「優性の法則」とは
優性の法則とは、ある形質において、親が純系の優性遺伝子(AA)と純系の劣性遺伝子(aa)で交配を行った場合、その子にあたる雑種第一代は優性の形質を持った子だけが発現することをいう。例えば、人間のまぶたなどにも優性の法則は当てはまり、二重(AA)、一重(aa)を掛け合わせた場合、子はAaとなり、優性の二重まぶただけが出現することになる。また、孫はAA対Aa対aa=1対2対1となり、二重まぶた対一重まぶた=3対1の割合で現れる。さらにひ孫の代では、二重まぶた対一重まぶた=5対3の割合である。「ABO式血液型」はメンデルの法則を土台とする血液型の分類法である。対立遺伝子のA・B・Oの組み合わせによって血液型が決まり、表現型はA・B・O・ABとなる。AとBはOに対して優性のため、遺伝子型がAOの場合は表現型がA、遺伝子型がBOの場合は表現型はBとなる。また、AとBの間に優劣は存在しない。
「分離の法則」とは
分離の法則とは、雑種第一代に存在する対立遺伝子が、分離して配偶子に入ることである。したがって、雑種第二代には雑種第一代には現れなかった劣性遺伝子の形質が現れることになる。メンデルが行ったエンドウ豆の交配実験では、雑種第一代である表面が滑らかで丸い豆(Aa)同士を交配すると、表面が滑らかで丸い豆(AA・Aa)とシワになりやすく角ばった豆(aa)の二種類が現れた。出現割合はAA対Aa対aa=1対2対1となり、表面が滑らかで丸い豆対シワになりやすく角ばった豆=3対1で出現する。メンデル‐の‐ほうそく〔‐ハフソク〕【メンデルの法則】
メンデルの法則
メンデルの法則
(1)優性の法則
劣性遺伝子が優性遺伝子の影響で発現しないこと。このため、親の形質のうち、優性の形質のみが子に現れるという法則。
(2)分離の法則
(1)に従って生まれた第1世代同士を交配させることによって、第1世代では表れなかった劣性の形質が第2世代に現れること。
(3)独立の法則
(1)、(2)に従う遺伝子の他にも、形質に関わる遺伝子が存在する場合、遺伝子はそれぞれ独立し、子に受け継がれること。
この法則は、1865年に発表されたものの、1900年まで注目されなかった。しかし、遺伝学の発展とともに、この法則を科学的に証明するなど、現在も、この法則に関する研究が報告されている。
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メンデルの法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 09:12 UTC 版)
メンデルの法則(メンデルのほうそく)は、遺伝学を誕生させるきっかけとなった法則であり、グレゴール・ヨハン・メンデルによって1865年に報告された。分離の法則、独立の法則、優性の法則の3つからなる。
- ^ 「優性の法則」を法則と呼ぶことの問題点は他にもある。1組の対立遺伝子がある形質に完全優性を示しても、別の形質に対してはそうとは限らない。例えば豆の丸とシワを決める対立遺伝子は、その遺伝子が生産する酵素の量に注目すれば完全優性にはなっていない。
- ^ 「メンデル遺伝(Mendelian inheritance)」は単一遺伝子に限定されるが、「メンデル遺伝学(Mendelian genetics)」は通常、メンデル以後の展開も含み、単一遺伝子による遺伝に限定されない。日本語では違いが曖昧だがinheritanceは親から子への継承パターンを指し、gene(genetics)は遺伝物質とそれがもつ情報を指す。メンデル遺伝学という言葉は、メンデルとは異なる遺伝理論である混合説、生物測定学、ルイセンコ説との対比で用いられる。
- ^ a b 中村運 「生命科学の基礎」2003年 p41
- ^ 例えば、以下の教科書には全て「分離の法則」「独立の法則」と記されているが、優性に関しては「法則」とは書かれていない。「キャンベル生物学」2007年、J.F. クロー「遺伝学概説」1991年、「ハートウェル遺伝学」2010年、「アメリカ版 大学生物学の教科書 分子遺伝学」2010年 (原著「LIFE」)、澤村京一「遺伝学」2005年
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メンデルの法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 14:32 UTC 版)
詳細は「メンデルの法則」を参照 遺伝子型と表現型の区別は、例えば血友病のように、特定の遺伝性疾患または異常の家族パターンを研究するときに一般的に行われる。ヒトとほとんどの動物は二倍体であり、したがって、任意の遺伝子には2つの対立遺伝子がある。これらの対立遺伝子は、個体に応じて、同じ(ホモ接合型)または異なる(ヘテロ接合型)にすることができる(接合性を参照)。黒髪などの優性対立遺伝子では、子孫は第二対立遺伝子に関係なく当の形質を示すことが保証されている。 劣性対立遺伝子(aa)を持つアルビノの場合、表現型は他の対立遺伝子(Aa、aA、aa、AA)に依存する。ヘテロ接合個体(AaまたはaA、またはキャリア(英語版))との交配の影響を受けた人は、子孫がアルビノの表現型になる可能性が50:50である。ヘテロ接合体が別のヘテロ接合体と交配した場合、遺伝子を受け継ぐ確率は75%で、遺伝子が表現される確率は25%である。ホモ接合型優性(AA)個体は正常な表現型を持ち、異常な子孫のリスクはない。ホモ接合型劣性個体は、異常な表現型を持っており、異常な遺伝子を子孫に受け継ぐことが保証されている。
※この「メンデルの法則」の解説は、「遺伝子型」の解説の一部です。
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