あっせんりとく‐ざい【×斡旋利得罪】
あっせん利得罪(あっせんりとくざい)
公務員が、特定の者の依頼を職務権限のある別の公務員にあっせんし、不当な利益を得る行為を処罰するために制定が求められている。現段階では、いわゆる賄賂(わいろ)罪の抜け道となっており、法案が準備されているところである。
国や地方自治体の公務員が不正な賄賂を受け取ることは、職務の公正さを保つためにも、特に刑法で犯罪として規定されている。しかしながら、公務員が金品を受け取ったとしても、その職務とはまったく関係なければ、収賄罪は適用できない。したがって、多くの汚職事件では職務権限の有無が裁判で争われているほどである。
例えば、議員Aが地元の建設業者Bから公共事業について口利きを依頼されたとする。有力な議員Aは、同じ政党に所属していることもあり顔なじみの建設大臣Cに対し、競争入札など建設大臣としての職務として便宜を図るようあっせんする。このとき、建設業者Bが政治資金規正法に基づく合法な寄付を行った場合を想定している。
あっせん利得罪の制定は、橋本内閣のとき、自民・社民・さきがけの与党3党の間で協議されたが、自民党の反対で実現しなかった。また、1999年の通常国会では、民主・公明・社民など野党が共同提出していたが、結局廃案となった。
(2000.07.08更新)
あっせん利得罪(アッセンりとくざい)
政治家が官庁への口利きの見返りに財産上の利益を得る行為は、あっせん利得罪として処罰される。2000年に成立した処罰法によって、「口利き政治」からの脱却を目指す。
あっせん行為の範囲は、行政処分の許認可、競争入札、売買などの契約にわたる。政治家が支持者などの依頼に応じて、これら行政処分にかかわる働きかけをし、政治献金などの形で報酬を受けることを禁止するものだ。
処罰の対象となるのは、国会議員をはじめ、その公設秘書、地方自治体の首長や議員。政治家の行政上の職務権限の有無を問わないところが特徴だ。違反した場合、最高で3年の懲役刑が定められている。
例えば、議員Aが地元の建設業者Bから公共事業について口利きを依頼されたとする。政界で有力な議員Aは、同じ政党に所属していることもあり顔なじみの国土交通大臣Cに対し、競争入札など国土交通大臣としての職務として便宜を図るようあっせんした。このとき、建設業者Bが政治資金規正法に基づく合法な寄付を議員Aに対して行った場合を想定している。
2000年、中尾元建設大臣が受託収賄罪で逮捕されたことから、「政治とカネ」をめぐる国民世論を背景に、あっせん利得処罰法が成立した。それまでの収賄罪だけでは、わいろを受け取る側の職務権限など犯罪の構成要件が厳しく、立件が困難だった。
今後は、私設秘書などの第三者があっせんの対価を受け取った場合まで処罰の範囲を広げるかどうかが議論の焦点となる。
(2002.01.24更新)
公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律
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公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | あっせん利得処罰法 |
法令番号 | 平成12年法律第130号 |
種類 | 刑法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 2000年11月22日 |
公布 | 2000年11月29日 |
施行 | 2001年2月28日 |
主な内容 | 国会、地方議会の議員(およびその秘書)や地方自治体の首長の職権を利用したあっせん利得行為やそれに対する利益供与行為等を処罰する法律 |
関連法令 | 刑法(賄賂罪) |
条文リンク | 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律 - e-Gov法令検索 |
ウィキソース原文 |
公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(こうしょくしゃにあるものとうのあっせんこういによるりとくとうのしょばつにかんするほうりつ、平成12年11月29日法律第130号)は、あっせん利得行為等を規制する日本の法律の一つ。
概要
旧来の刑法上のあっせん収賄罪は、贈賄側から請託を受けて他の公務員に職務上不正行為を斡旋したことを立証しなければならないなど犯罪の構成要件が厳しく、立件が困難だった。しかし、この法律によって、請託を受けて斡旋先の公務員の職務上適正な行為をさせても、財産上の利益を収受していれば適用される。
なお、処罰対象は公職にある者と国会議員秘書に限定されており、民間人閣僚とその秘書官や地方公職の秘書(地方自治体の特別秘書等)は対象外である。2004年の法改正までは国会議員秘書は国会議員公設秘書に限定されていた。公職者のあっせん利得罪は法定刑は3年以下の懲役、国会議員秘書のあっせん利得罪は法定刑は2年以下の懲役である。ただし、国会議員私設秘書は請託を受けて斡旋先の公務員の職務上不正な行為をした場合は、公務員に適用されるあっせん収賄罪(法定刑は5年以下の懲役)は適用されず、あっせん利得罪のみの適用となる。
1996年に発生した石橋産業事件の一環である若築建設事件を教訓に制定された。
2002年5月、和歌山県橋本市における指名業者選定をめぐる汚職事件が、この法律での逮捕状が出た初めての例となった[1]。現職の市議と会社経営者によるこの事件は、第154回国会における衆議院特別委員会で取り上げられた[2]。
内容
- 「公職にある者」(第1条)
- 衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長(首長)のこと。
- 「秘書」(第2条)
- 国会法第132条に規定する秘書(公設秘書)その他衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するもののこと。
- その他
- 犯人が収受した利益は没収、追徴される(第3条)。また、国外犯も処罰される(第5条)。その他、「適用上の注意」として、「この法律の適用に当たっては、公職にある者の政治活動を不当に妨げることのないように留意しなければならない。」と規定がある(第6条)
脚注
- ^ “あっせん利得法初適用、和歌山・橋本市議ら2人逮捕”. 読売新聞. (2002年5月9日)
- ^ “第154回国会 衆議院 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 第5号 平成14年5月31日”. National Diet Library. 2020年5月6日閲覧。
あっせん利得罪と同じ種類の言葉
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