UボートXXVII型 UボートXXVII型の概要

UボートXXVII型

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 13:47 UTC 版)

UボートXXVII型
(上)XXVIIAヘヒト (下)XXVIIB5 ゼーフント
基本情報
建造所 ゲルマニア造船所, キール
運用者  ナチス・ドイツ海軍
 フランス海軍
建造期間 1944年 - 1945年
就役期間 1944年1945年
計画数 1,000隻
建造数 285隻
要目
排水量 潜航時:17ロングトン (17 t)
長さ 39 ft (12 m)
5 ft (1.5 m)
推進器 1 x 60 hp ビュッシング ディーゼル機関
25 hp AEG 電動機
速力 浮上時7ノット、潜航時3ノット
航続距離 浮上時: 7ノットで270海里
潜航時: 4ノットで63海里
乗員 2人
兵装 G7e魚雷 2本
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ゼーフント特殊潜航艇、艇下に魚雷を装備している。フランスブレストに所在する国立海軍博物館の収蔵品。

歴史

ゼーフントの始まりは、2隻のイギリスのX級潜水艦である「HMS X6」および「HMS X7」のサルベージから始まった。これらの艇はドイツ軍戦艦ティルピッツの撃沈を目指したソース作戦中に沈没していた。この後、ドイツ軍の機関「軍艦建造局」(:Hauptamt Kriegsschiffbau)はイギリスの潜航艇を調査した結果に基づいて二人乗りの潜航艇の設計を開始し、これはXXVIIA型の型式が与えられ、カワカマスの意であるヘヒトと名づけられた。ヘヒトはモルヒの設計を受け継いで作られたものの、運用実績が思わしくなく53隻の建造で終了しているのに対し、ゼーフントは285隻が建造された。

両者はともに魚雷発射管を持たず2つの魚雷を潜航艇の下部に懸垂する方式であった。また、機関についてはヘヒトが魚雷の推進機関を流用したのに対し、ゼーフントはトラックのものを流用したディーゼルエンジンを搭載していた。

XXVIIA (ヘヒト)

X級潜水艦のように、XXVIIA型は爆発物を携行し、敵艦艇の下部に設置するよう設計された。しかしこの艇は著しく小型に作られ、X級潜水艦とは相当な差異があった。この艇はディーゼルと電動を複合した推進方式を採用せず、かわりとして全面的に12馬力のAEG社製魚雷用モーターによる電力駆動に頼った。これは潜航して用いられるという前提から、ディーゼルエンジンの必要が無いとされたことによる。しかし、こうしたことは4ノットで69海里という非常に短い航続距離を生む結果となった。

この艇には対潜網または類似の障害を浸透可能とする必要性があることから水中翼または舵なしで設計され、この艇のトリムは耐圧殻内の重量物を調整することで規正された。実際には、重量物を十分に速く移動させられないことからこの装備は全く役に立たず、水中翼と舵が後に装備された。ヘヒトの潜航中の操舵能力は、バラストタンクを装備しないことから貧弱なままであった。

ヘヒトは爆発物を携行するよう設計されていたものの、カール・デーニッツは魚雷を装備できるよう主張した。これは沿岸海域の船に攻撃ができるようにするものだった。

外見上、ヘヒトはイギリスのウェルマン潜水艇に似ていた。分離可能な爆発物が潜水艇の先端に取り付けられ、前部区画にはバッテリーとジャイロコンパスが取り付けられた。これはドイツの特殊潜航艇の装備としては初めてで、艇が潜航して操縦されるならば航法のために不可欠と考えられていた。この後方は操縦区画であり、2名用の座席が設けられた。座席配置は中央線上の前列に機関士の席を置き、彼の後に指揮官席が置かれた。指揮官の航法用途として潜望鏡と透明なアクリル製ドームが設けられた。

1944年1月18日、デーニッツは新規の設計案をアドルフ・ヒトラーと協議し、彼は賛成を表した。3月9日、試作艇の製造のためにキールに所在するゲルマニアヴェルフトと契約が成された。3月28日には52隻の潜航艇用のものとして更なる契約が続けられた。

53隻のヘヒトが1944年5月から8月の間に製造された。最終的にはこのうち1隻も一線での作戦に投入されず、代わりにゼーフントの搭乗員を訓練することに用いられた。

XXVIIB(ゼーフント)

ゼーフント No. 075

発注が出されたことからヘヒトの派生型が製造されていた。XXVIIB型はディーゼルと電動の推進方法を持ち、より航続距離が伸び、2本のG7e魚雷を携行した。設計完了は1944年6月でありヘヒトに類似していたが、洋上航走する際に凌波性を良好にするため、艦体の外形がよりボート形状に成型された。またタンクが据え付けられた。バッテリーがキール部分に移されたことで、耐圧殻内部に船室が増設された。外部へ射出される2本の魚雷は艇体下部に装備された。22馬力のディーゼルエンジン1基が水上航走のために設置され、水上での速力は5.5ノットを発揮した。また25馬力の電動モーターは潜航時に6.9ノットを発揮した。

XXVII型の最後の派生型はXXVIIB5型である。これはゼーフントもしくは127型としてより知られている。ゼーフントは小型で隆起したプラットフォームを艇体中央部に備えた。この場所には空気吸入マスト、磁気コンパス、潜望鏡と45mの深さに耐える透明なドームが取り付けられた。

光学機器として3m高の固定式潜望鏡を備え、これには指揮官用に、浮上前に航空機を警戒して上空を偵察するために用いられた。

生産

ゼーフントを生産する最初の発注が1944年7月30日に契約された。設計の完了前に大部分の発注が行われ、船体番号が割り当てられたように、潜航艇に対する期待は非常に高かった。総計1,000隻がゲルマニアヴェルフトとシヒャウ・ヴェルケに発注され、それぞれ1ヶ月に25隻および45隻を建造するものとされた。ゼーフント生産に関わった他の施設はアドリア海に面するCRD-モンファルコーネと、ウルムにあったクレークナ-・フンボルト・ドイツである。

しかしながらデーニッツは、他のUボートの生産を停滞させることになるゼーフントの製造に同意できなかった。また資源や労働力の不足、輸送の問題、資源配分の優先権争いなどが重なり、ゼーフントの生産数を低下させた。最終的にゼーフントの生産はゲルマニアヴェルフトが担当し、すでにXXI型UボートおよびXXIII型Uボートを製造する必要のなくなったキールの施設が使用された。総計で285隻のゼーフントが建造され、「U-5501」から「U-6442」の範囲でナンバーが割り振られた。


  1. ^ Rohwer, Ju"rgen; Gerhard Hummelchen (1992). Chronology of the War at Sea 1939-1945. Naval Institute Press. p. 344. ISBN 1-55750-105-X 
  2. ^ German SEEHUND (KU-5075)


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