LPG自動車
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オートガス
LPG自動車用の燃料として販売されるLPGは、オートガス(英: Autogas)と呼ばれる。規格上はブタンとプロパンをブタン8:プロパン2の割合で混合したものであるが、プロパンの割合は地域や季節に応じて30 %から99 %の範囲で混合される[2]。常温では1 MPa以下の比較的低い圧力で液化し[8]、体積が250分の1となることからガス燃料としては可搬性に優れる[9]。オクタン価はハイオクガソリン(プレミアムガソリン)並み以上の105程度である。
LPG自動車へのガス充填は、オートガススタンド(または「オートガスステーション」「LPガススタンド」など)と呼ばれる、LPG用の充填施設で行われる。2019年時点で世界の81000か所以上に設置されている[10][11]。欧州では国によりばらつきはあるがガソリンスタンドと併設される例も多い[12]。日本国内においては法規の関係上原則としてセルフ式のオートガススタンドは存在しないが、それらが存在する国・地域もある。充填口および充填ノズルの形状は国・地域によって異なる。
日本の場合、ガソリンスタンドと同様に、主にLPG事業者が元売の看板[注 2]を掲げて運営していることが殆どで、タクシーの密集地域を中心に単独で設置している例、ガソリンスタンドに併設されている例もあるが、大半が中間充填所の内部設備の一部としての設置であり、この場合は建物用とタンクを共有している。また、LPG車を使う事業者自身が自家専用のオートガス充填設備を設置することもある。
日本のオートガススタンドは約1330か所[7]。かつては全国で1900か所あったが[13]、LPGハイブリッド車の普及による燃費向上や、LPG自動車自体の減少といった要因によるLPG販売減から、スタンド数の減少が続いており、特に地方部ではタクシーの燃料供給に難をきたす事態も起きている[14]。
販売は1 L単位で行われる。価格は国や地域により異なるが、ほとんどの国でガソリン・軽油より安価であり、世界で見た平均では軽油価格の55.1%、ガソリン価格の52.1%となっている(2019年[15])。
日本の場合、1 L = 117.2円(2022年9月10日現在、店頭現金価格全国平均[16]) と他国同様ガソリン・軽油に比べて安価である。価格には国税である石油ガス税の9.8円/L(17円50銭/kg)を含むが、ガソリン税の53.8円/Lより低く、また消費税以外の地方税を課している地域はなく、ガソリンよりも割高になるケースはない。
過去の比較では、一例として、2007年11月時点でレギュラーガソリンは145円、軽油は121円であるのに対し、LPGは84.1円である[17]。2010年3月時点ではレギュラーガソリンは131.3円、軽油は110.5円に対し、LPGは85.0円(店頭現金価格)である[17]。天然ガスと比較すると、道路財源(道路特定財源制度)としての燃料課税は無税で、2007年4月の時点における東京地区の天然ガス価格は71.03-84.68円/Nm3となっている[18]。
タクシーに乗った際の臭いは、ガス漏れ検知用の臭い成分が燃焼により化学変化を起こしているためだが、最近は自動車排出ガス規制強化で無臭になりつつある。排出ガス規制の強化前の車両であっても燃焼方式の近いガソリン車より排気の臭いは弱い。これは、ガソリン車は燃焼時にエンジンオイルの成分も取り込んで燃焼されるのに対し、LPガス車はこれが混ざらずに燃焼されるためである。
脚注
- ^ 本来の意味での燃費(1 Lあたりの距離)は、元々液体であるガソリンと気体を圧縮して液化させたLPガスという違いがあるため単純な比較はできないものの、少なくとも計算上は概ねガソリンに劣る。
- ^ なお、ガソリンや軽油の掛け売りカードはカードの種類にもよるが同じ元売の看板であれば契約店以外でも給油できるものもあるのに対し、オートガスの充填カードは使用者と契約のある店舗でしか充填できないが、契約先が複数の場合は同じカードで複数箇所で充填できる、という違いがある。
- ^ バイフューエル車を指してハイブリッド車、LPGハイブリッド車と呼ぶケースもある。
- ^ a b ガソリンや軽油の場合、バルブがそれらに晒されることで潤滑に寄与する。
出典
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- ^ [1][リンク切れ]通常はLPGキット汎用品で使われる切替スイッチがSI-DRIVEセレクターの上に専用で設けられる。
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- ^ ロンドンでのLPG車優遇措置[リンク切れ]
- ^ [2][リンク切れ]
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