衝突被害軽減ブレーキ 義務化、標準装備化、補助制度

衝突被害軽減ブレーキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/17 05:42 UTC 版)

義務化、標準装備化、補助制度

世界的に、全ての自動車に、衝突被害軽減ブレーキの搭載を義務化するスケジュールが進められている。

乗用車

2019年2月12日、国連欧州経済委員会(ECE)で、日本や欧州連合(EU)など40カ国・地域が衝突被害軽減ブレーキの導入を義務づける規則の原案に合意した。合意国の乗用車や軽商用車に衝突被害軽減ブレーキの標準搭載を課す。この義務化は新車への適用のみで使用過程車は対象外となる[26]

日本では上記のECEでの合意に基づき、2021年11月以降に新規に発売される車種やモデルに義務化し、既存の車種やモデルには2025年12月から義務化される事が2019年12月に決定した[27]。輸入車についても2024年以降、順次適用するとしている。

アメリカでは上記のECEでの合意とは別に、2022年9月までに米国市場で販売される99%超の新車に衝突被害軽減ブレーキを標準装備とすることを目標にしている。2016年にアメリカ合衆国運輸省と自動車メーカー20社の間で全車標準搭載とする合意がなされた[28]。米国運輸省は衝突被害軽減ブレーキの全車標準装備が必要な根拠として、衝突被害軽減ブレーキで死傷事故が35%減るとの調査結果を出している[29]

商用車

大型車の追突事故の被害は乗用車よりも大きく、衝突被害軽減ブレーキの効果が大きいため、乗用車より先に義務化が始まった。EUでは2013年11月から全ての新型商用車、2015年11月から全ての商用車の新車に自動緊急ブレーキの装備が義務化された。下記では日本の商用車への義務化、減税制度について解説する。

トラック

大型トラックによる追突事故の死亡率は乗用車の約12倍と高く、衝突被害軽減ブレーキにより、追突事故の死亡事故件数の約80%が削減可能と非常に高い安全効果が見込まれており、日本も事故の削減、国際競争力を維持するためにトラックの衝突被害軽減ブレーキの普及を目指している[30]

減税
2012年度より衝突被害軽減ブレーキを導入した大型トラックの購入に対して、自動車取得税を取得価額から350万円控除するとともに、自動車重量税の50%軽減が行われている[31]
義務化
日本では、車両総重量3.5t超の新車のトラック(2t標準平ボディ車両総重量約4.4t)は衝突被害軽減ブレーキを搭載する事が義務化される。
新型生産車では、車両総重量22t以上のトラックと13t以上のトラクタは2014年11月1日から、20t超22t以下のトラックは2016年11月1日から義務化された。
継続生産車では、車両総重量22t以上のトラックは2017年9月1日から義務化された他、13t以上のトラクタは2018年9月1日から、20t超22t以下のトラックは2018年11月1日から義務化された。
また、2014年2月には性能要件を強化した衝突被害軽減ブレーキが、より広いトラックに義務化される事が決定した[32]
新型生産車では、車両総重量22t超のトラックは2017年11月1日から、8t超22t以下は2018年11月1日から、3.5t超8t以下は2019年11月1日から性能要件を強化した衝突被害軽減ブレーキが義務化された。
継続生産車では、車両総重量22t超のトラックは2019年11月1日から、20t超22t以下は2020年11月1日から、3.5t超20t以下は2021年11月1日から性能要件を強化した衝突被害軽減ブレーキが義務化される。
いずれの義務化も新たに製作される車両が対象で使用過程車は対象外[33][34][35]

バス

2012年に発生した関越自動車道高速バス居眠り運転事故を受けて、大型トラックに続いて義務化が進められている。

減税
2013年度より衝突被害軽減ブレーキを導入した5トンを超えるバスは、自動車取得税を取得価額から350万円控除するとともに、初回分の自動車重量税を50%軽減が行われている[36]
義務化
日本では乗車定員10人以上の新車のバスは衝突被害軽減ブレーキを搭載することが義務化される。ただし、立ち乗り客が転倒する恐れから立席を有するバスを除く。つまり一般路線バスを除く、高速バス観光バスマイクロバスなどが対象となる。
新型生産車では、車両総重量12t超のバスは2014年11月1日から義務化された。
継続生産車では、車両総重量12t超のバスは2017年9月1日から義務化された。
また、2014年2月には性能要件を強化した衝突被害軽減ブレーキがより広いバスに義務化される事が決定した。
新型生産車では、車両総重量12t超のバスは2017年11月1日から、12t以下は2019年11月1日から性能要件を強化した衝突被害軽減ブレーキが義務化された。
継続生産車では、車両総重量12t超のバスは2019年11月1日から、12t以下は2021年11月1日から性能要件を強化した衝突被害軽減ブレーキが義務化される。
いずれの義務化も新たに製作される車両が対象で使用過程車は対象外[37][38]

また、乗用定員10人未満の乗用目的の車両にも衝突被害軽減ブレーキが義務化される 国産の新型車では、2021年11月、輸入の新型車では、2024年7月。

国産の継続生産車では、2025年12月、輸入の継続生産車では、2026年7月。 近い将来義務化されることが決定している [39]


注釈

  1. ^ トヨタは2012年(平成24年)に自動停止可能な衝突被害軽減ブレーキを発売しているが、レクサス・LS以外の自動停止能力は低く、自動停止に消極的だった。

出典

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  18. ^ 第3965067号、第5042496号、第5127182号
  19. ^ 「●トヨタの考えるぶつからないクルマとは「慎重な判断が必要だと考えています。ただ、ドライバーがブレーキを踏むべきであるという大前提がありますから、そのブレーキを踏んでもらうための報知、いわゆる警報が非常に大切です」(稲垣氏)」、「「"ぶつからない"という表現が大勢であることは事実ですが、だからといってその風潮に流されず、トヨタの安全思想でしっかりとPCSを普及させたい」(稲垣氏)」、「NASVAのアセスメントに対してひと言。漏れ聞くところによると、「時速何キロから完全停止できる、できない」といった、表面上の、しかもAEBSの一部性能だけを切り取って数値化する、といったことが取り沙汰されているが、この数値だけを表示することは、結果として歪曲した情報伝達になりかねない。」(講談社刊「ベストカー2013年10月26日号」168p〜169pより引用)
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