行司 呼び上げ

行司

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 03:05 UTC 版)

呼び上げ

取り組み

呼出の呼び上げに続いて、奇数日は東から、偶数日は西から、「××に○○」というように、四股名の間に「に」をつけて、通常の取組は一声で呼び上げる。三役以上の取り組み、十両最後の一番では四股名の前に「かたや」「こなた」をつけて二声で呼び上げる。すなわち、「かたや××、××、こなた○○、○○」となる。三役以上の取り組みでは、一方が平幕でも二声で呼び上げる(優勝決定戦を除く)。中入り前(十両最後)の一番(中跳ね)では、二声の後に「この相撲一番にて、中入り」と呼び上げる。なお1988年3月場所千秋楽、横綱北勝海-同大乃国の優勝決定戦で裁いた25代式守伊之助(28代木村庄之助)は二声で呼び上げている[1]

結びの一番

「番数も取り進みましたるところ、かたや○○、○○、こなた××、××、この相撲一番にて、本日の打ち止め」と呼び上げる。この時、「本日の~」の後で、呼出の拍子木が入る。千秋楽の場合には、最後のところが「この相撲一番にて、千秋楽(にござりまする~[注釈 13])」となる。この場合の呼出の拍子木は「この相撲一番にて~」後に入る。天覧相撲の場合には、「この相撲一番にて、結び(にござりまする~)[注釈 14]」となる。

出世披露

新弟子が前相撲を取り、そこで成績優秀な場合に翌場所から序ノ口に番付が掲載され、そのお披露目が行われる。この儀式は新序出世披露と呼ばれ、中日(なかび)の三段目取り組みの途中に行われ、幕下格以下の行司が口上を呼び上げる。

「これに控えおります力士儀にござります。ただ今までは番付外に取らせおきましたるところ、当場所、日々成績優秀[注釈 15]につき、本日より番付面に差し加えおきまするあいだ、以後相変わらず、ご贔屓、お引き立てのほど、ひとえに願い上げ奉ります」と呼び上げる。

顔触れ言上

幕内以上の翌日の取り組みを一番ずつ一枚の和紙に相撲文字で書き、明日の取り組みを土俵上で披露する。この儀式は顔触れ言上(かおぶれごんじょう)と呼ばれ、横綱土俵入りの後、中入り取り組みの前に行われ、立行司が扇子の上に半紙に割が書かれた口上を呼び上げる。

「はばかりながら、明日(みょうにち)の取り組みをご披露つかまつります。琴××に○○山、朝△△に□□里、…(中略)…、右、相つとめまするあいだ、明日(みょうにち)もにぎにぎしく、ご来場をお待ち申し上げます」と呼び上げる。


注釈

  1. ^ 三役格行司が横綱土俵入りの先導をする場合のみ、通常立行司のみ着用する「短刀」を着用して所作を行う。
  2. ^ 例えば、衆議院文教委員会における川崎秀二委員の発言。「各部屋に行司がついている。こういうことは一体審判制度の厳正化ということからしてどうか。重大な問題だと思う。ほかのスポーツならこんなばかなことはないですよ。」と審判制度の問題点を指摘している[* 1]
  3. ^ 漆塗り以外の白木等の物を使用する者もいる。
  4. ^ 土俵入りの時は花道で脱いで行く。
  5. ^ a b 青は実際は緑色である。
  6. ^ 実際にはほとんどの行司が青(緑色)を用いており、黒は現役では式守一輝が持っている程度である。
  7. ^ 読売新聞』2018年1月14日付朝刊スポーツ面によれば、「実際は年齢と経験が重視されるケースが多い。」とされる。近年は年功序列とほぼ変わらない状態で昇格しているが、昭和50年代頃には、行司としての技量が著しく劣る行司が後輩行司に抜かれることがしばしばあった。
  8. ^ ただし、それ以前でも27代式守伊之助36代木村庄之助は最終場所の途中で停年日を迎えたが、普通に千秋楽までは務めて引退していて、最終場所の千秋楽を持って停年退職となっている(27代伊之助の場合は最終場所の千秋楽が65歳の誕生日だったが、協会の規定では65歳の誕生日前日で停年なので、14日目が本来の停年日だった)。2015年に停年を迎えた37代木村庄之助も最終場所途中で停年日を迎えていたが、千秋楽まで務めて引退している。
  9. ^ 例外となるケースして、幕内の場合には、十両格行司が幕内の取組を裁くことはできないので、休場している行司が多い場合は、3番以上を裁く行司が出ることもある。また土俵上や土俵下控の行司に事故がある際には交代することがあるため裁く番数の増減がある。後者については本来1番しか裁かない木村庄之助が2番裁いた例も存在する。また、中入り後最初の一番を裁く行司は中入り後の番数と裁く行司の割り振りの都合で本来は2番だが、1番のみ裁いて終わりというパターンが時折ある。
  10. ^ 大体、幕下上位の取組から十両格が裁き、十両の取り組みの後半から中入り前までを幕内格行司が裁いている。
  11. ^ a b c d e f g h 取組数によって裁く番数が増減することがある。
  12. ^ 相撲記者の佐々木一郎が伝えたところによると、短刀を調達した際には銃刀法違反にならないように行政官庁へ届出を行う必要があるとのことである[要出典]
  13. ^ 括弧内は言う行司と言わない行司に分かれるが、近年の行司は言う傾向が強く、28代木村庄之助以降は40代式守伊之助が言ったり言わなかったりであったのを除き全員言う派である。
  14. ^ 括弧内は言わない行司がほとんどであったが、41代式守伊之助はつけるようにしているという[要出典]
  15. ^ 現在では、実際には1番でも前相撲を取れば出世できる。
  16. ^ 41代(前名11代式守勘太夫)が38代木村庄之助を襲名して以降。
  17. ^ 番付に載らず廃業・退職
  18. ^ 40代式守伊之助の謹慎休場(そのまま退職)に加え、木村庄之助が不在であったため、2018年1月場所から実質的な首席として結の一番を裁くようになった。
  19. ^ 40代伊之助と38代庄之助が同学年生まれであり、同年に退職引退となるが、生まれ月が40代伊之助より、38代庄之助の方が早いため

施行細則

  1. ^ a b 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第2条。
  2. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第3条。
  3. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第4条。
  4. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第16条。
  5. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第22条。
  6. ^ a b 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第5条。
  7. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第7条。
  8. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第8条。
  9. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第11条。
  10. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第12条。
  11. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第13条。
  12. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第15条。
  13. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第18条。
  14. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第17条。
  15. ^ a b 日本相撲協会寄附行為施行細則審判規則行司第19条。
  16. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則番附編成要領第4条。
  17. ^ a b 日本相撲協会寄附行為施行細則第64条。
  18. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則番附編成要領第14–16条。
  19. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則第63条。
  20. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則番附編成要領第17条。
  21. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則行司賞罰規定第7条。但し、式守伊之助の名跡を襲名したものは、襲名時より2年間は他の行司と同一に扱うものとする。また同第8条により「立行司にして自己の責任と自覚がないと認められたときは、理事会の決議により引退を勧告し、または除名するものとする。」とされている。
  22. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則番附編成要領第13条。
  23. ^ 日本相撲協会寄附行為施行細則停年退職規定第6条。

書籍出典

  1. ^ 田中亮 2019, pp. 74–79.
  2. ^ 根間弘海 2011, p. 48.
  3. ^ 根間弘海 2011, p. 50.
  4. ^ a b 『大相撲ジャーナル』2019年3月号, pp. 50–52.
  5. ^ 根間弘海 2011, pp. 50–51.
  6. ^ 根間弘海 2011, pp. 51–52.
  7. ^ 根間弘海 2011, pp. 55–56.
  8. ^ 根間弘海 2011, pp. 56–57.
  9. ^ 根間弘海 2011, pp. 9–10.
  10. ^ 根間弘海 2011, pp. 10–11.
  11. ^ 根間弘海 2011, p. 11.
  12. ^ 根間弘海 2011, pp. 13–14.
  13. ^ 根間弘海 2011, pp. 16–17.
  14. ^ 根間弘海 2011, pp. 12–13.
  15. ^ 根間弘海 2011, pp. 22–23.
  16. ^ 根間弘海 2011, pp. 27–30.
  17. ^ 朝日新聞1971年12月27日付朝刊スポーツ面
  18. ^ 1994年の立行司不在時と異なり担当は固定。翌年1月場所より伊之助に昇格。
  19. ^ 『大相撲ジャーナル』2019年3月号, p. 48.
  20. ^ 根間弘海 2011, pp. 35–36.
  21. ^ フジテレビトリビア普及委員会 2003, p. [要ページ番号].
  22. ^ 木村庄之助 2008, p. 209.
  23. ^ 「発気用意」の意共、永六輔『役者 その世界』p190、岩波現代文庫、2006年
  24. ^ https://www.nikkansports.com/battle/column/sumo/news/1480440.html 「透かし彫り」軍配で見通す勝負 日刊スポーツ 2015年5月23日
  25. ^ 三役格行司の木村玉治郎が相撲協会に退職届を提出 師匠の立浪親方「本人の意志が固かった」日刊スポーツ9/30(土)5:55
  26. ^ 三役格行司・木村玉治郎の退職届騒動のウラ側にあるのは「約9年ぶりの『木村庄之助』誕生と年功序列人事の弊害」か YAHOO!ニュース 2023年10月1日
  27. ^ 三役格行司・木村玉治郎の退職届騒動のウラ側にあるのは「約9年ぶりの『木村庄之助』誕生と年功序列人事の弊害」か YAHOO!ニュース 2023年10月1日
  28. ^ 【ポケモン】大相撲一月場所にて伝統的な和柄がデザインされた化粧まわしや行司装束がお披露目。ハリテヤマやシリーズ歴代パッケージなどをデザイン

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