藤井システム 藤井システム対策

藤井システム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 18:15 UTC 版)

藤井システム対策

△ 持ち駒 なし
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△ 持ち駒 歩
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藤井システムは、居飛車側が穴熊囲いでも急戦を仕掛けてきても、どちらにも対応できる戦法として猛威をふるった。対抗策としてミレニアム囲いなどの新戦法が採用されることも増えたが、四間飛車側も互角以上の対応を見せ大流行することはなかった。また居飛車党の棋士が有効な対策を見いだせずに藤井に対して相振り飛車を採用する機会が増える[6]など、藤井システムへの対策は2000年前後において居飛車党にとっての大きな課題であった。

そこで居飛車側は、穴熊にするか急戦(特に4六銀右戦法)を目指すかの態度をぎりぎりまで決めず、四間飛車(藤井システム)側の動きによってどちらの駒組みにするかを決めるようになった。

これに対し、四間飛車側も▲6七銀と▲1五歩を保留し(▲7八銀と▲1六歩で止める)、その2手を▲4八玉から▲3九玉と囲いにかけるようになる。

この他、瀬川晶司らがアマ時代によくやっていた戦法が後手の時に図のように△3三銀とし、▲4八玉△2四銀▲3九玉に△1五銀と端歩をもぎ取り、以下▲1五同香△1四歩▲同香△同香▲1七歩△1一香▲2八銀△7四歩が一例で、すぐに決まるわけではないが、1筋の関係は後手が得となり、△1八歩から攻める手もできる。またいきなり△1七香成もあって、かなりのプレッシャーになり、先手玉が4八でも嫌な局面である。▲1五歩が早い時に端棒銀は有力となっていった。このとき早めに▲2六歩~▲2七銀と備えられても、△3一角から今度は右銀を棒銀に出す指し方もあり、臨機応変に対応できるのが特徴である[7]

このため駒組みの上では藤井システムの特徴であった「端歩の突き越し」「居玉」がなくなり「藤井システムは消えた」と言われるようにもなった。

藤井システムに対する研究と改良が加わった結果、後手番での藤井システムは不利、先手番ではほぼ互角に戦えるであろう、とする結論に至っていた[8]

一例として図の対藤井システム急戦例のように、先手▲5六銀には後手が穴熊にせず直ちに△8六歩▲同歩△4五歩と仕掛ける激しい手段などがあり、先手の応手は手としては▲4五同桂と▲8八飛、▲3三角成△同桂▲7七角の三通りであるが、『イメージと読みの将棋観』(2008、日本将棋連盟)では羽生善治はこの局面を先手が誘導してやるなら何かしらの対策が必要であるとしている。佐藤康光は▲4五同桂では以下△7七角成▲同桂で△4四銀なら▲8五歩、△8六飛ならば▲5三桂成△同金は先手がかなりリスクを冒しているとしており、森内俊之も▲4五同桂は強気にいくならで以下△7七角成▲同桂△8六飛▲5三桂成△同金▲8八歩△4三金寄から△5五歩となると、あまり先手が良くないとしている。一方で▲8八飛であれば△4六歩▲8五歩△7七角成▲同桂△5五歩▲6七銀△8三歩▲6八玉△2八角▲1八香△1九角成▲8四歩△同歩▲8三歩△同飛▲7二角△8二飛▲6三角成で後手自信がないとしている。谷川浩司も▲8八飛に△7七角成▲同桂△4六歩▲8五歩と、後手は手を作るのが難しいとしているが、渡辺明は▲8八飛に△4六歩▲8五歩△7七角成▲同桂△5五歩▲6七銀となると、先手も自信がないとしている。

▲2五桂の跳ねる前に動くこの局面は2003年以降に現れ、▲4八玉型に比べて居玉の分先手が勝ちにくいとされている。2008年までの公式戦で10局指されて先手が3勝7敗、後手が8筋を突き捨てない将棋も11局指され、こちらは先手6勝5敗となっているという。

△ 持ち駒 なし
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藤井自身も模索を続けており、2008年には矢倉も実戦で試すようになった(ただし通常の矢倉の定跡手順ではなく、相振り飛車も視野に入れたものである)ため、当時の『週刊将棋』紙に「矢倉党に転向」と紹介されたこともあった[9]。藤井自身、藤井システムを「ファーム落ち」と表現しているが、藤井システムを捨てたわけではなく「いつ一軍で投げさせるか、わかりませんよ」としている[10]。事実、藤井は2012年に先手後手の双方で複数回藤井システムを指し、第53期王位戦では、挑戦者決定リーグで高橋道雄牧野光則を、挑戦者決定戦では渡辺明を破って羽生王位への挑戦権を得た。2014年5月12日の王位戦で居飛車穴熊の木村を終盤もたつきはあったものの撃破。A級から陥落したものの、研究は怠っていないところを見せた。 その後、2015年頃から後手番藤井システムが復権傾向にあり、2016年には第24期銀河戦で藤井が優勝する原動力となり[注 6]、第64期王座戦五番勝負第2局[注 7]など、他の対局でも現れるようになっている。

このような変遷を経た現在での四間飛車対策では、穴熊や急戦に加え上述のミレニアム囲いや増田康宏が多用し注目された銀冠穴熊などで藤井システムを警戒することで開発された戦法が増えている。特に高く構える左美濃では2五歩から4五歩で攻めの取っ掛かりを与えることになるので、陣形の不備を補う手段として飯島流引き角戦法をはじめ陣形を低く構える角道不突左美濃型が開発されていった。この他相振り飛車も定跡が整備され角道を止める振り飛車への有力な対策とみなされるようになるなど、藤井システム以前の穴熊一辺倒だった時代から比べるとかなりの多様化を見せている。


注釈

  1. ^ 藤井は1998年度のNHK将棋講座で本戦法の解説を行い、その直後に谷川浩司から竜王位を無敗で奪取。
  2. ^ 「画期的。この戦法がすごいのは、藤井さんがひとりでシステムを構築したこと」(佐藤康光)「右の銀桂香を攻めに使うという画期的な構想。将棋界の流れを大きく変えた戦法」(谷川浩司)「凄い発想。創世期には藤井さんとよく当たり、負かされました(笑)。優秀さを身をもって体感」(深浦康市)「振り飛車側が居玉で戦うという発想は思いつかなかった居飛車側の急戦策や、その他の持久戦に対応するアイデアをひとりで作り上げたのは驚異的だ」(室岡克彦)「連常の新戦法は誰かのアイデアに対し、追走者が現れることで構築されていきます。藤井システムの特異な点は、第1期竜王戦に見られるように、すでに完成されたひとつの分野として提示されたことです。藤井さん独自の研究量·新手の多さでも際立っており、今後このような新研究は現れないのではないでしょうか」(飯塚祐紀)などで、若手棋士に振り飛車党が多いのは、間違いなくこの戦法の影響である、という指摘も数多く寄せられた。「奨励会有段者時代に大流行していた戦法。おかげさまで卒業することができました」(島本亮)「振り飛車の大革命。この戦法のおかげでプロになった棋士も多いはずです」 (長岡裕也) 「世代が大きな影響を受けた戦法。みんな、狂いそうなほど研究しました。将棋の才能という面では、藤井九段が現役で一番ではないかと思います」(大平武洋)
  3. ^ 井上は「おかげで第一号局の犠牲者と、この将棋が有名になった」といっていたが、この年度の順位戦の敗戦はこの局のみで、他は全勝して昇級する一方、藤井は後手番でのシステムで苦戦し、昇級までにあと五期を要している。
  4. ^ 田中寅彦(居飛車穴熊を得意としていた)は、「何か変だな」と何度もうなった。羽生の△3二玉を見て、司会・聞き手の藤森奈津子は思わず「あ!戻った!」と声を上げた。
  5. ^ 藤井猛『最強藤井システム』(1999年)によれば、▲1五歩と端に2手かける手は急戦相手だと緩手になると考えられがちであるが、終盤で自玉が広い(端に逃げ道が広く空いている)ため、十分戦えるとされている。
  6. ^ 決勝トーナメントでは先手番、後手番共にすべて藤井システムを用いた。
  7. ^ 後手番の羽生善治王座が挑戦者の糸谷哲郎八段に対し採用。糸谷が巧みに対応し一時は優位に立ったが、終盤で羽生が逆転勝ちをおさめた。
  8. ^ 初号局における佐藤天彦の対策でもある。その後佐藤康光が2016年度NHK杯戦決勝において類似形を佐藤和俊に対して採用した際、佐藤和俊は△2二飛と受けずに戦い不利となったが、後に▲2四歩の仕掛けを失念していたと語った。

出典

  1. ^ 将棋大賞受賞者一覧|棋士データベース|日本将棋連盟”. 日本将棋連盟. 2018年9月16日閲覧。
  2. ^ 『将棋年鑑2018 棋士名鑑アンケート』の「登場したときに最もびっくりした戦法はなんですか?」でも多数の棋士が「藤井システム」を挙げている。棋士をも驚愕させた新戦法とは!?”. マイナビ将棋情報局. 2023年2月4日閲覧。
  3. ^ 勝又清和『最新戦法の話』(浅川書房、2007年、ISBN 978-4-86137-016-8)、108ページ。2006年春までのデータである。
  4. ^ 将棋世界』2007年9月号、「新手魂」23ページ。青野照市勝又清和上野裕和による対談より。
  5. ^ 河口俊彦『新対局日誌 第八集 七冠狂騒曲(下)』(河出書房、2002年、ISBN 4-309-61438-8)、12 - 15ページ。
  6. ^ 1998年度竜王戦第2局の谷川など。
  7. ^ 対談:瀬川晶司六段×今泉健司四段「B級戦法は こんなに楽し」(『将棋世界Special 将棋戦法事典100+』(将棋世界編集部編、マイナビ出版)所収)
  8. ^ 後手番については勝又『最新戦法の話』90 - 94ページ、先手番については同書118ページ。
  9. ^ 週刊将棋』2008年8月6日、7ページ。
  10. ^ 勝又『最新戦法の話』116ページ。
  11. ^ a b 元竜王・藤井猛九段、藤井聡太新竜王を語る「藤井さんに新戦法は要らない」”. スポーツ報知 (2021年11月14日). 2023年10月29日閲覧。





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