藤井システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 18:15 UTC 版)
三間飛車への応用
△久保利明 持ち駒 なし
|
また近年では、本来の四間飛車だけではなく、三間飛車においても居玉のまま戦う藤井システム調の戦法が採用されることがある。
2009年8月30日に放映されたNHK杯戦において、後手番を引いた久保利明が採用したのが初号局(右図)である。その後佐藤和俊が2016年度NHK杯戦においてこの戦法を採用し屋敷伸之・羽生善治・橋本崇載といった強豪棋士を相次いで倒し準優勝したことで大きく注目された。佐藤はその後将棋フォーカスに講師として出演しこの戦法を解説した。
この戦法の特長としては、四間飛車藤井システムに比べて角頭を狙う急戦に強い点、および△5二金左を保留することにより展開によっては袖飛車・右四間飛車・中飛車などへ振り直し居飛車調の戦いへ転換することが容易である点が挙げられる。一方で△4五歩の威力が減じていることや、ミレニアム模様で▲6八角と▲2四歩の仕掛けを狙われた場合に△2二飛と受けることを強要される[注 8]などのデメリットがある。
5筋の歩を突かない居飛車穴熊に対して、角筋で相手玉を睨みつつ自玉側の桂馬と香車で一気に端攻めを狙う三間飛車は「トマホーク」として知られる。2016年に奨励会の三段リーグで山本博志が藤井聡太に対して採用し快勝した例などがある。
- 「トマホーク (将棋)」も参照
注釈
- ^ 藤井は1998年度のNHK将棋講座で本戦法の解説を行い、その直後に谷川浩司から竜王位を無敗で奪取。
- ^ 「画期的。この戦法がすごいのは、藤井さんがひとりでシステムを構築したこと」(佐藤康光)「右の銀桂香を攻めに使うという画期的な構想。将棋界の流れを大きく変えた戦法」(谷川浩司)「凄い発想。創世期には藤井さんとよく当たり、負かされました(笑)。優秀さを身をもって体感」(深浦康市)「振り飛車側が居玉で戦うという発想は思いつかなかった居飛車側の急戦策や、その他の持久戦に対応するアイデアをひとりで作り上げたのは驚異的だ」(室岡克彦)「連常の新戦法は誰かのアイデアに対し、追走者が現れることで構築されていきます。藤井システムの特異な点は、第1期竜王戦に見られるように、すでに完成されたひとつの分野として提示されたことです。藤井さん独自の研究量·新手の多さでも際立っており、今後このような新研究は現れないのではないでしょうか」(飯塚祐紀)などで、若手棋士に振り飛車党が多いのは、間違いなくこの戦法の影響である、という指摘も数多く寄せられた。「奨励会有段者時代に大流行していた戦法。おかげさまで卒業することができました」(島本亮)「振り飛車の大革命。この戦法のおかげでプロになった棋士も多いはずです」 (長岡裕也) 「世代が大きな影響を受けた戦法。みんな、狂いそうなほど研究しました。将棋の才能という面では、藤井九段が現役で一番ではないかと思います」(大平武洋)
- ^ 井上は「おかげで第一号局の犠牲者と、この将棋が有名になった」といっていたが、この年度の順位戦の敗戦はこの局のみで、他は全勝して昇級する一方、藤井は後手番でのシステムで苦戦し、昇級までにあと五期を要している。
- ^ 田中寅彦(居飛車穴熊を得意としていた)は、「何か変だな」と何度もうなった。羽生の△3二玉を見て、司会・聞き手の藤森奈津子は思わず「あ!戻った!」と声を上げた。
- ^ 藤井猛『最強藤井システム』(1999年)によれば、▲1五歩と端に2手かける手は急戦相手だと緩手になると考えられがちであるが、終盤で自玉が広い(端に逃げ道が広く空いている)ため、十分戦えるとされている。
- ^ 決勝トーナメントでは先手番、後手番共にすべて藤井システムを用いた。
- ^ 後手番の羽生善治王座が挑戦者の糸谷哲郎八段に対し採用。糸谷が巧みに対応し一時は優位に立ったが、終盤で羽生が逆転勝ちをおさめた。
- ^ 初号局における佐藤天彦の対策でもある。その後佐藤康光が2016年度NHK杯戦決勝において類似形を佐藤和俊に対して採用した際、佐藤和俊は△2二飛と受けずに戦い不利となったが、後に▲2四歩の仕掛けを失念していたと語った。
出典
- ^ “将棋大賞受賞者一覧|棋士データベース|日本将棋連盟”. 日本将棋連盟. 2018年9月16日閲覧。
- ^ 『将棋年鑑2018 棋士名鑑アンケート』の「登場したときに最もびっくりした戦法はなんですか?」でも多数の棋士が「藤井システム」を挙げている。“棋士をも驚愕させた新戦法とは!?”. マイナビ将棋情報局. 2023年2月4日閲覧。
- ^ 勝又清和『最新戦法の話』(浅川書房、2007年、ISBN 978-4-86137-016-8)、108ページ。2006年春までのデータである。
- ^ 『将棋世界』2007年9月号、「新手魂」23ページ。青野照市・勝又清和・上野裕和による対談より。
- ^ 河口俊彦『新対局日誌 第八集 七冠狂騒曲(下)』(河出書房、2002年、ISBN 4-309-61438-8)、12 - 15ページ。
- ^ 1998年度竜王戦第2局の谷川など。
- ^ 対談:瀬川晶司六段×今泉健司四段「B級戦法は こんなに楽し」(『将棋世界Special 将棋戦法事典100+』(将棋世界編集部編、マイナビ出版)所収)
- ^ 後手番については勝又『最新戦法の話』90 - 94ページ、先手番については同書118ページ。
- ^ 『週刊将棋』2008年8月6日、7ページ。
- ^ 勝又『最新戦法の話』116ページ。
- ^ a b “元竜王・藤井猛九段、藤井聡太新竜王を語る「藤井さんに新戦法は要らない」”. スポーツ報知 (2021年11月14日). 2023年10月29日閲覧。
- 藤井システムのページへのリンク