脚本 概要

脚本

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/03 19:20 UTC 版)

概要

小説とは形式が異なる。

脚本では文学的表現や美文は要求されず、小説などでは活用される主観描写(登場人物の心情など)は極力排除される。ラジオやテレビ、映画などのメディアによって、そのメディアの特質や慣習に従った一定のフォーマットが推奨、または必須とされる場合がある。

書き方は、よく絵画や彫刻を作る方法に例えられる。絵画では画用紙やキャンバスに絵具を付けた筆で、いきなり人物の顔を描く人はいない。また彫刻でも丸太に彫刻刀を突き立て、眼から丁寧に彫る人もいない。絵画ではまず全体を荒く素描(デッサン)し、次に完成を予測しながら下書きをし、その次にバランスを見ながら細部を徐々に仕上げていく。脚本も同様に、どこからストーリーを始めてどこに向かって進んでいくのか。そして広がったストーリーの最後はどう収束するのか。それらのバランスに配慮しつつ、まず(絵画のデッサンに相当する)プロットを書き、それから書いてゆく。

脚本は、監督プロデューサーなどと打ち合わせをしつつ作り上げていくことが多い。(特に映画では)スポンサーとの打ち合わせが行われることもある。また出演俳優が大物俳優だったりすると、俳優からの細部の修正の要望が入ってしまう事態になることもある。

映画の場合では、打ち合わせと執筆は平行して行われることが多く、このたびに印刷・製本されることが多い。このため、準備稿、改定稿、決定稿と版を重ねることになる。改定はほぼ全て取り替える場合から些細な部分を修正するに留める場合もあり、準備稿と決定稿、さらに作られた映画とはストーリーが大幅に異なっていることもある。さらに日程・予算の都合で、実際の撮影に入っても改定が行われる場合があり、脚本家あるいは監督が現場で執筆する場合もある。これは「号外」とも呼ばれる。

執筆に関わる脚本家の数、および(脚本家とともに)監督が脚本に関わる場合では単に作品的な価値ばかりでなく、印税や二次使用料、著作権などの配分にも影響が出ることが多く、昨今では監督が脚本を執筆することも多い。一方、戯曲に関しては単独で執筆することが多い。

脚本は、小説とは異なり、複数の人によって書かれることがそれなりにある。テレビドラマシリーズでは、執筆作業の負荷の大きさや放送スケジュールを考慮して、数名交代で担当することもある。テレビドラマシリーズで視聴率が低迷すれば、途中で脚本家が交代することもある。また一話の中でも複数名が関与する場合もある。

なお戯曲を除き、脚本は単独で発表されることは基本的にない。建物や船などの設計図と同じであり、あくまで映像化・漫画化することによってようやく一つの作品とみなされることが多い。このため、どうしても脚本の存在感が弱くなり、監督やプロデューサーによる無断改変が行われてトラブルにつながる場合が時折見られる。戯曲の場合は脚本のみで発表されることも多々ある。

なお日本で脚本に用いられていた原稿用紙は基本的に200字詰め(20字×10行)で、この原稿用紙状態の脚本は「ペラ」とも呼ばれる。近年ではワープロを用いることも多い。役者に渡す前に印刷・製本するので、製本した状態にすると「台本」(ほん)と呼ぶ。


  1. ^ a b c d e 『日本大百科全書』「脚本」
  2. ^ a b 『日本大百科全書』「シナリオ」
  3. ^ シナリオ”. 国語 英和 和英 カタカナ 漢字 - Infoseek マルチ辞書. 三省堂. 2008年11月5日閲覧。
  4. ^ 田中純一郎『日本映画史発掘』 冬樹社、1980年、160-161頁
  5. ^ 中川裕幸、他「特集《平成19年度著作権・コンテンツ委員会》: アニメの著作権」『パテント』第61巻第8号、日本弁理士会、2008年、11-47頁、NDLJP:8226018 
  6. ^ a b 加藤君人『コンテンツビジネスにおける各種契約』経済産業省/ユニジャパン、2018年https://www.unijapan.org/producer/pdf/producer_341.pdf 
  7. ^ a b 酒井麻千子「著作者の同一性保持権と「慣行」に関する一考察」『東京大学大学院情報学環紀要 情報学研究』第77号、東京大学大学院情報学環、2009年8月、167-181頁。 
  8. ^ 田中宏和「著作者人格権に関する課題と検討: 著作者人格権の不行使特約と放棄の問題を参考に」『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』第29巻、岡山大学大学院社会文化科学研究科、2010年、111-130頁、doi:10.18926/20324 






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