緑地
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/24 02:13 UTC 版)
公園と緑地
日本では公園緑地事務所、公園緑地協会、公園緑地設計業務委託、公園緑地系統など、公園と緑地をセットにした「公園緑地」という言葉が使用され、一方で緑地公園という名称の公園も全国に数多くある。公園#専門用語としての公園にあるとおり、都市計画学や造園学などの分野で専門用語として使われる「公園」自体英語パブリックパーク (Public park) の訳語で、緑地の一形態であり、都市公園法で都市公園の中には緩衝緑地、都市緑地、緑道が定められている。このように公園と緑地とのちがいはどうなのか、ということは、今日でさえ明確な解答が出ていない。同じようであるようにも考えられ、そこに多少ニュアンスのちがいがあるようにもとられている。
ただ簡単に説明すれば、公園のうち都市公園については都市民の保健休養に端的直接に役立てるものであるから施設本位となるのに対し、緑地は、面積もかなり大きくなる場合公園の機能をももつ上に更に都市防衛、都市の過大化防止策等をかねた土地という広い意味をももつ。従って密度の高い施設等は必要とせず、農耕地、疎林、水面、草地など、自然のままの形態を残しつつ利用に供される営造物、ということになる。
都市計画法での緑地は、東京緑地計画のいう緑地よりも狭い観念であり、自然の地形・風致を生かし、あまり施設整備をしない大公園という趣旨である。
緑地の意味の変遷
用語の起源
専門用語としての起源は、ドイツの都市計画図で「確保された空地」が緑色で塗りわけられることから発生した「緑地」(Grünfläche)に対応する日本語として造語されたらしい。東京市が郊外公園構想を樹立しこれを実現させた頃には「緑地」という言葉はないが、1885年の東京市区改正審査会で公園について「人口稠密ノ都府ニ園林及空地ヲ要スルハ其因由一ナラズト雖モ云云」と審議されていて、さらに「園林空地ヲ市府ノ内外ニ設置シテ常ニ無価ノ清風ヲ居民ニ供給スルノ他求ムベキノ道ナシ」「欧州四大府ニ現存スル空地及ビ公園ノ比例ヲ掲ゲテ其参照ニ供」とし、公園とは区別される空き地というものを別に考えていて、これが日本における緑地概念の最も早い発想として位置づけることが出来る。ここでこの用語は、すべての公園を含むと同時に、他の緑の土地を含むように考えられる、としていた。
1930年にドイツ語に堪能な内務技師北村徳太郎が都市計画の用語として命名し、昭和7年10月に設置された東京緑地計画協議会で公式に使用したとする文献が残っている一方で、当時飯沼一省は英語のオープンスペースの訳語として「自由空地」を同様の意味で用いていた。前島康彦によると、佐藤昌が「自由空地」と「緑地」という言葉について池田宏、大屋霊城、上原敬二、関一等各人が使用している旨を克明に調べ上げた上で、「緑地」を概念的に明確化したのは、飯沼、北村の両人であろうと博士論文や著書『日本公園緑地発達史』で指摘していること、そして「緑地」という言葉の初見は、大正13年7月『都市公論』誌七巻七号にのせられた内務省都市計画局私案として発表された「公園計画基本案」において都市公園の説明の中に出たものであるとしている。
他に都市計画図上の色の塗り分けにちなむ語には赤地、青地、白地があるが、法律用語等になったものはなく、正式の文書等で使われることはない。
英語でも都市計画用語としてGreenfield landという表現がある。これも直訳によって緑地となりうるが、空地とほぼ同義であり、北村の緑地とは意味が違う。英語では更に、過去に建物があった空地をBrownfield landとして区別している。またフランスではespacelibreという概念が早くから定着している。
事実、用語の混乱を避けるため昭和8年の東京緑地計画協議会によって、
- 「緑地トハ其ノ本来ノ目的ガ空地ニシテ宅地商工業用地及頻繁ナル交通用地ノ如ク建蔽セラレザル永続的ノモノヲ謂フ」
とGrünflächeやオープンスペースに近い意味で再定義され、統一がはかられた[1][2]。この「空地」とは、土地たると水面たるとを問わず、総て永続的に空地であることを要し、分譲予定地、商工業地予想地などは、たとえ未建築地であっても緑地ではないのであるが、この言葉自体当時としては専門家以外はほとんど周知していなかったので、こうした定義を附したのである。緑地の基準や計画案の作製といった東京緑地計画協議会の一連の作業、決定した内容は、要すれば新しい地域計画を導入した「緑地」を含めて既成市街地の公園をも包含していることがいえ、これが日本ではじめて試みられた市域内外の公園緑地設置の指針を示したものといえる。
緑地の分類例
法による緑地の分類
- 関連法令
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- 緑地保全地域(都市緑地法)
- 特別緑地保全地区(都市緑地法)
- 緑化地域(都市緑地法)
- 風致地区(都市計画法)
- 生産緑地地区(生産緑地法)
- 近郊緑地保全区域(首都圏近郊緑地保全法他)
- 近郊緑地特別保全区域(首都圏近郊緑地保全法他)
- 歴史的風土保全区域(古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法)
- 歴史的風土特別保全区域(古都保存法)
- 自然公園(自然公園法)
- 自然環境保全区域(自然環境保全法)
- 農業振興地域・農用地地域(農業振興地域整備法)
- 河川区域・樹林帯他(河川法)
- 保安林区域(森林法)
- 地域森林計画対象民有林(森林法)
- 保存樹・保存樹林(樹木保存法)
- 史蹟名勝天然記念物などの文化財などで緑地として扱えるもの(文化財保護法)など
- 協定
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- 緑地協定(都市緑地法)
- 条例などによるもの
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- 条例・要綱・契約
- 協定などによる緑地の保全地区や緑化の協定地区
- 樹林地の保存契約
- 協定による工業植栽地など
施設緑地の事例
- 都市公園
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- 都市公園法で規定するもの
- 都市公園以外
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- 公共施設緑地
- 民間施設緑地
- 市民緑地、公開空地、市民農園(上記以外)、一時開放広場、公開している教育施設(私立)、市町村と協定などを結び開放している企業グランド、寺社境内地、民間の屋上緑化空間、民間の動植物園など
東京緑地計画
1939年(昭和14年)につくられた大東京における緑地帯、景園地などを含む総合的な緑地計画。日本の都市計画および公園史上初めての大規模かつ具体的なマスタープランである。内容および同計画における緑地の分類は、東京緑地計画を参照。
なお、東京緑地計画を端緒とした、日本各地の大緑地についても東京緑地計画を参照。
辞書などでの“緑地”
その一方、一般向けの辞書の類においては字の印象からか古典籍によったかは不明であるが、「植物に被われた土地」を第一義に上げる。緑地を造園学・都市計画学の大家でもある北村、飯沼両名は新造語として掲げていることから、1930年代当時、一般の用法としてこの意味で使われていたとは考えにくい。
新旧いずれの都市計画法においても緑地の定義は書かれていないが、首都圏近郊緑地保全法、都市緑地保全法では、「緑地」を「樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が、単独で、若しくは一体となつて、又はこれらに隣接している土地が、これらと一体となつて、良好な自然的環境を形成しているものをいう」として英語のGreenfield landに近い意味で定義している。 このため、法律内限定で都市計画法等と違う意味で「緑地」を使用することの宣言を行っているという見方と、法律中の定義が正式の語義であるという見方が混在することとなった。
後の都市緑地法では、都市緑地を都市の自然環境の保全や景観の向上を目的として都市計画で定められる緑地の意味で用いているが、今日では都市計画の専門辞典においても、一般辞書の語義を用いている例もある。
緑地資源
緑地資源とは地域に残っている樹林地、竹林、草地、農地、水辺などを、環境維持、改善のための貴重な資源とみる考え方で、具体的には資源の種類、所在地、規模、内容、貴重度などを調査、評価して、地域景観計画、環境基本計画などの立案の参考資料としている。
緑地と同じ種類の言葉
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