素イデアル 素イデアルの概要

素イデアル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 15:35 UTC 版)

可換環に対して

定義

可換環 R のイデアル PR が素イデアルであるとは、

  • a, bR, abP のとき、aP または bP

を満たすことを言う[2]

R の素イデアルのなす集合は Spec(R) と表される。

例と性質

  • 有理整数環 Z において、素数 p の倍数全体が成すイデアル pZ は素イデアルである。
一般に、可換環 R において、その素元 p が生成するイデアル pR0 でない素イデアルになる。これは逆も正しい。すなわち、pR に対し単項イデアル pR ≠ 0 が素イデアルならば、p は素元である。
  • 一般に、R, S を可換環、f: RS環の準同型としたとき、f による S の任意の素イデアルの引き戻し f−1(S) は、R の素イデアルになる。
  • 可換環 R のイデアル I が素イデアルであることと、剰余環 R/I整域であることは同値である[2]。とくに、0 が素イデアルであることと R が整域であることは同値である。
  • デデキント整域のすべての 0 でない真のイデアルは、素イデアルの積に一意的に分解する[2]

局所化

を環、 をその素イデアルとすると、集合 積閉集合となる。 による 局所化 と書く。これは 極大イデアルとする局所環となる。その剰余体 などと書くこともある[3]

素因子

素イデアル P ∈ Spec(R)R 加群 M のある元 xM零化イデアル ann(x) と一致するとき、PM素因子 (: prime divisor) または伴う素イデアル: associated prime ideal)という[4][5]M の随伴素因子がなす集合を AssR(M) あるいは Ass(M) と表す。AssR(M) の(包含関係について)極小な素イデアルを孤立素因子といい、これら以外の素因子を非孤立あるいは埋め込まれた素因子という。Rネーター環のとき、随伴素因子は非正則元加群の台とも関連があり、準素分解で重要な概念である。

可換とは限らない環に対して

定義

単位的環 Rイデアル P素イデアルであるとは、

PR かつ、任意のイデアル A, BR に対して、ABP ならば AP または BP

を満たすことを言う。

性質

イデアル PR に対して以下の条件は同値である[6][7]

  • P は素イデアル
  • a, bR に対し、(a)(b) ⊆ P ならば aP または bP (ここで、(a) = RaR
  • a, bR に対し、aRbP ならば aP または bP
  • 左イデアル A, B に対し、ABP ならば AP または BP
  • 右イデアル A, B に対し、ABP ならば AP または BP
  • R/P素環

特に単純環素環なので極大イデアルは素イデアルである。


  1. ^ デュドネ 2013.
  2. ^ a b c 堀田 2006.
  3. ^ Matsumura 1986, p. 23.
  4. ^ 松村 2000, p. 47.
  5. ^ Matsumura 1986, p. 38.
  6. ^ Lam 2001, Proposition 10.2.
  7. ^ 岩永 & 佐藤 2002, 命題7-3-1.


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