空力ブレーキ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 14:10 UTC 版)
鉄道
鉄道車両では、200km/h以下では効果が少ないことや車両限界の関係もあり、営業車両での採用はなく、高速鉄道の高速試験車両で見られるのみである。屋根上に抵抗板を出すかたちである。
新幹線でも古くから検討されたことはあったが、実際の採用例としてはJR東日本の高速試験車両E954形・E955形(FASTECH 360シリーズ)に通称「ネコミミ」と呼ばれる扇形の抵抗板が装備された。同装備の使用時は騒音を発生させることが懸念され、緊急時のみの使用が想定されていた。最終的な試験結果では、空力ブレーキがなくとも制動距離を在来車並にできるという結論が出されたため、開発される量産車(現在のE5系・E6系電車)は空力ブレーキが省略されることとなった。新幹線ではその後、2018年に落成したE956形「ALFA-X」にも四角形の抵抗板が搭載されている。
超電導リニアでは高速走行中の停電時などの非接触のブレーキとして研究されており、MLU001[4]・002N[5]にて装備する改造がなされ、試験された。MLX01試験車両[6]では設計として装備されている。
自動車
自動車のレースでも、メルセデス・ベンツ・300SLRのエアブレーキといった例がある。しかし現状、空力パーツを多用しているF1をはじめとするフォーミュラーカーをはじめ、ほとんどの競技車輛はそのルール中に「空力パーツは車体に固定しなければならない[注 1]。と同時に、可変であってはならない」という原則があり、整流用のウィングと違い可動とする必要があるブレーキへの空力の活用は、ほとんど見られない。
劇用車では、テレビドラマ『西部警察』に登場した「マシンRS-2」(ベースはR30形スカイライン)はトランクが逆向きに開閉するように改造されており、エアブレーキであるという設定がある[注 2]。このギミックは劇中内では未使用となったが、当時発売されていたプラモデルやミニカーでは逆向きトランクが再現されている。
一般に軽量かつ超高速で走るレーシングカーは、少しでも車体が浮き上がると大きな揚力が発生し、車体が舞い上がってしまう。これは、NASCARのようなオーバルコースを超高速で走るようなレースでは、クラッシュ後の大きな危険の要因となる。そこでNASCARでは、ルーフに可動式のルーフフラップという大型空力パーツの設置が義務付けられており、これにより揚力を抑えて舞い上がるのを防ぐ(この働きは、抗力を増すブレーキというより、揚力を減らす航空機のスポイラーに近い)。「ビッグワン」と呼ばれる多重クラッシュなどのアクシデントの動画などを見ると、このフラップが開いているのがよくわかる。
ドラッグレースなどでは、ゴールライン通過後にドラッグシュートによる空力ブレーキを、制動距離の短縮を図ることと通常のブレーキの補助として使用している。
脚注
注釈
出典
- ^ 「惑星探査に用いるエアロアシスト技術の開発」JAXA研究開発本部広報誌『空と宙』No.49, pp.4-5, 2012 Sep./Oct.
- ^ “Venus Express science mission ends; aerobraking experiment beginning”. Planetary Society. (2014年5月16日) 2014年6月1日閲覧。
- ^ “=MAAC 柔軟構造大気突入システムの開発”. 2013年9月19日閲覧。
- ^ MLU001(鉄道総研)
- ^ MLU002N(鉄道総研)
- ^ MLX01(鉄道総研)
- ^ トミカリミテッドヴィンテージ西部警察 マシンRS-2 インタビューより。
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