秀和 秀和の概要

秀和

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/22 01:44 UTC 版)

秀和株式会社
種類 株式会社
本社所在地 東京都千代田区麹町5丁目7番[1]
設立 1957年(昭和32年)
業種 不動産業
代表者 小林茂(代表取締役社長)
資本金 220百万円
主要子会社 秀和インベストメント・コーポレーション
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概要

ARCOプラザ[3]

1957年(昭和32年)に小林茂が従業員5人で旗揚げした不動産会社で[4]、東京都心を中心に多くの賃貸ビルを建設したほか[5]、「秀和レジデンス」のブランド名でマンション開発も行った[5]。78年にはロスアンゼルスに秀和インベストメント・コーポレーションを設立して米国に進出[6]。85年のプラザ合意後には、米国での不動産事業を一気に加速させ[6]、86年8月、ロスアンゼルス最大のオフィスビル「アーコプラザ」(52階建てのビル2棟)を買収した[7]。買収価格は約6億2000万ドル。円換算で約960億円という巨額な買い物だった[7]

バブル期、小林は鉄道連隊時代の戦友である清水信次(ライフストア(現:ライフコーポレーション)社長)の持論である「中堅スーパー大同団結論」に乗り、首都圏を営業基盤とする忠実屋いなげやなどの流通株を買い占めだし[8]、小林=清水連合軍と経営権を保持しようとする2社とのあいだでは攻防も展開された。だが、1990年(平成2年)3月に不動産融資の総量規制公定歩合の引き上げが実施されると、当時の借入額が1兆円超であった秀和の資金繰りも急速に悪化した。この窮地に際して、秀和と流通株の協定を結んでいたダイエーが秀和の買い占めた流通株を担保に1100億円の融資を行い[9]、辛くも危機から脱するが、流通再編に失敗した秀和は不動産価格の下落に伴う負債に苦しむこととなった。

2005年(平成17年)2月末、中央三井信託銀行(のちの三井住友信託銀行)が私的整理ガイドラインに基づく再建計画を取りまとめ、秀和向け287億円の債権放棄を発表[10][11]。3月には各金融機関から秀和向け債権を買い集め、最大の債権者となっていたモルガン・スタンレーが保有するビルを約1,400億円で取得することが分かり[10][10]、結局、秀和は社名を「山城」に変更した後、保有するビルを全て売却したうえで解散した[2]

バブル期に不動産業界では、麻布建物「A」、イ・アイ・イ・インターナショナル「I」、第一不動産「D」、秀和「S」の頭文字を組み合わせて「AIDS」という言葉が流行ったが、この4社はいずれもバブル崩壊後、経営破綻している[12][13]

秀和レジデンス

秀和外苑レジデンス
(1967年2月竣工)

秀和レジデンスは、秀和による分譲マンションシリーズで、主に1960年代から80年代[14]1964年昭和39年)3月に渋谷・並木橋交差点近くに誕生した秀和青山レジデンス(設計芦原義信)を皮切りに[15]、全国に130棟以上建てられた[14]

オリンピック景気に伴う、第1次マンションブーム(63年~64年)の折に、秀和青山レジデンスも竣工しているが、"億ション"に代表される富裕層主体の第1次マンションブームは、そう長く続かなかった[16]。そこで小林は、一転してマンションの大衆化を図り、日本初の住宅ローン制度の導入を目指した[16]。 62年の区分所有法の制定で、マンションの一室も資産と認められると、小林は銀行と話し合いを重ね、サラリーマン月賦でマンションを購入できる制度を確立[16]。また小林は管理組合の導入も提唱し、小林が生み出した「住宅ローン制度」と「管理組合」の浸透によって[16]、全国に秀和レジデンスが広がっていった。

青い瓦屋根、白い塗り壁アイアン柵のバルコニーという、現在よく見られる秀和レジデンスのスタイルが誕生したのは、秀和外苑レジデンスからであり[14][17]、68年~72年は秀和レジデンス竣工の全盛期で、この5年間に54棟を竣工させた[18]

第1号物件である秀和青山レジデンスは、老朽化のため野村不動産旭化成不動産レジデンスが建て替えの実務を担い、地下2階・地上26階のタワーマンションに一新され、2025年(令和7年)2月の竣工を予定している[19][20]


  1. ^ 秀和株式会社に対する債権放棄について 三井トラスト・ホールディングス株式会社 平成17年2月28日
  2. ^ a b c 「山一証券廃業10年、倒産通り映る会社の実力 大家の秀和 ひっそり解散」『日経産業新聞』22頁 2007年11月22日
  3. ^ Shuwa Investments Corp. v. County of Los Angeles (1991)
  4. ^ a b c d 有森隆、グループK 2006, p. 242.
  5. ^ a b c 小林茂(2) 『日本人名大辞典』 講談社
  6. ^ a b 有森隆、グループK 2006, p. 237.
  7. ^ a b 有森隆、グループK 2006, p. 238.
  8. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 249 - 250.
  9. ^ a b c d e 有森隆、グループK 2006, p. 256.
  10. ^ a b c 米モルガン・スタンレー、日本の不動産に2700億円投資-秀和など買収 ブルームバーグ(日本語)2005年3月30日掲載、平成23年12月18日閲覧
  11. ^ 「三井トラスト、秀和向け債権287億円を放棄 」『日本経済新聞』平成17年3月1日
  12. ^ “真説 賃貸業界史 第31回~どうなる?コロナ後の不動産業界~”. 住生活新聞デジタル. (2020年9月7日). http://www.juseikatsu-digital.com/column/?id=1601852274-727764 2022年6月5日閲覧。 
  13. ^ 永野健二『バブル 日本迷走の原点』p.216、新潮文庫、2019年。
  14. ^ a b c 谷島香奈子、haco 2022, p. 8.
  15. ^ 谷島香奈子、haco 2022, p. 22 - 23.
  16. ^ a b c d e 谷島香奈子、haco 2022, p. 131.
  17. ^ 谷島香奈子、haco 2022, p. 78.
  18. ^ a b 谷島香奈子、haco 2022, p. 13.
  19. ^ “昭和の「秀和」マンション、初代建て替え 東京・渋谷”. 日本経済新聞. (2020年9月17日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63967890X10C20A9L83000/ 2022年6月5日閲覧。 
  20. ^ 谷島香奈子、haco 2022, p. 27.
  21. ^ a b c d e 有森隆、グループK 2006, p. 241.
  22. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 240.
  23. ^ a b c d 有森隆、グループK 2006, p. 243.
  24. ^ a b c 有森隆、グループK 2006, p. 244.
  25. ^ a b c d e f 有森隆、グループK 2006, p. 245.
  26. ^ a b c 有森隆、グループK 2006, p. 246.
  27. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 246 - 247.
  28. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 247.
  29. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 248 - 250.
  30. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 250.
  31. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 249.
  32. ^ a b 有森隆、グループK 2006, p. 251.
  33. ^ a b 有森隆、グループK 2006, p. 252.
  34. ^ a b c 有森隆、グループK 2006, p. 253.
  35. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 255.
  36. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 256 - 257.
  37. ^ 有森隆、グループK 2006, p. 257 - 258.
  38. ^ イオン、「いなげや」を子会社化 24年に傘下企業に統合へ”. 共同通信 (2023年4月25日). 2023年4月26日閲覧。
  39. ^ 「中京圏は考えていない。海外出店もない。M&Aもないだろう」とライフコーポレーション岩崎社長は言った _小売・流通業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】


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