熱力学第二法則 法則の表現

熱力学第二法則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/30 07:31 UTC 版)

法則の表現

この法則には様々な表現がある。これらの表現は全て同値である。

クラウジウスの法則(クラウジウスの原理)
低温の熱源から高温の熱源に正の熱を移す際に、他に何の変化もおこさないようにすることはできない[1]
トムソンの法則あるいはケルビンの法則
一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変える以外に、他に何の変化もおこさないようにする熱力学サイクルは存在しない[2]
オストヴァルトの原理
ただ一つの熱源から正の熱を受け取って働き続ける熱機関(第二種永久機関)は実現不可能である。
クラウジウスの不等式
n 個の熱源を考え、温度 Ti の熱源 i (1 ≤ in) から Qi の熱を受け取り、その総和分の仕事をするサイクルを作ると、である。(i → ∞ の極限を考えると、熱源の温度を Te 、受け取る熱を Q とすれば
エントロピー増大則
孤立系、及び断熱系において不可逆変化が生じた場合、その系のエントロピーは増大する。
カラテオドリの原理
熱的に一様な系の任意の熱平衡状態の任意の近傍にその状態から断熱変化によって到達できない他の状態が必ず存在する[3]

オストヴァルトの原理はトムソンの法則と全く同じ主張をしている。クラウジウスの法則とトムソンの法則は、それぞれの反例となるサイクルを認めると、カルノーサイクルとの合成サイクルを作ることにより互いの反例が生じてしまう。つまり対偶を示すことにより同値であることが示せる。

クラウジウスの不等式はカルノーサイクルを連結し合成サイクルを作ることによって、トムソンの法則と、それより導かれるカルノーの定理を用いて示せ、またクラウジウスの不等式において n = 1 としたものはトムソンの法則そのものである。

熱力学では伝統的にはクラウジウスの不等式を用いてエントロピーを定義し、それが増大することが証明されるが、エントロピーを他の方法を用いて定義し、かつエントロピー増大則を原理として認めれば、他の諸原理を示すことができる。


  1. ^ 原, 康夫『物理学通論 I』学術図書出版社、1988年、279頁。ISBN 4873610230 
  2. ^ 原 1988, pp. 278–279.
  3. ^ 久保亮五 編『大学演習 熱学・統計力学』(修訂)裳華房、1998年、43頁。ISBN 4-7853-8032-2 
  4. ^ 早稲田大学第9代材料技術研究所所長加藤榮一工学博士の主張


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