次数付き環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/22 20:34 UTC 版)
次数(付き)加群(graded module)は同様に定義される(正確な定義は下を見よ)。これは次数付きベクトル空間の一般化である。次数付き環でもあるような次数付き加群は次数付き代数(graded algebra)と呼ばれる。次数付き環は次数付き Z-代数と見なすこともできる。
結合性は次数付き環の定義において重要でない(実は全く使われない)。したがってこの概念は非結合的多元環に対しても適用できる。例えば、次数付きリー環を考えることができる。
基本的な性質
を次数付き環とする。
- は A の部分環である[1]。(とくに、加法の単位元 0 と乗法の単位元 1 は次数 0 の斉次元である。)
- 各 は -加群である[1]。
- 可換 -次数付き環 がネーター環であるのは、 がネーター的かつ A が 上の多元環として有限生成であるとき、かつそのときに限る[2]。そのような環に対して、生成元を斉次にとることができる。
分解の任意の因子 の元は次数 i の斉次元(homogeneous elements)と呼ばれる。 イデアルや他の部分集合 ⊂ A が斉次(せいじ、homogeneous)であるとは次を満たすことである。任意の元 a ∈ に対して、すべての ai を斉次元として a=a1+a2+...+an であるときに、すべての ai が の元である。与えられた a に対し、これらの斉次元は一意的に定義され、a の斉次部分(homogeneous parts)と呼ばれる。 I が A の斉次イデアルであれば、 も次数付き環であり、次の分解をもつ。
任意の(次数付きでない)環 A は A0 = A および i > 0 に対して Ai = 0 とすることによって次数付きにできる。これは A の自明な次数化(trivial gradation)と呼ばれる。
次数付き加群
加群論において対応する概念は次数付き加群 (graded module) である。すなわち次数付き環 A 上の左加群 M であって
であり
でもあるようなものである。
次数付き加群の間の準同型 は、次数付き準同型(graded morphism)と呼ばれるが、加群の準同型であって、次数付けを反映したもの、すなわち、 が成り立つようなものである。次数付き部分加群(graded submodule)は、それ自身次数付き加群であって集合論的包含が次数付き加群の射であるような部分加群である。明示的に書くと、次数付き加群 N が M の次数付き部分加群であることと、M の部分加群で を満たすことは同値である。次数付き加群の射の核と像は次数付き部分加群である。
例:次数付き環はそれ自身の上の次数付き加群である。次数付き環のイデアルが斉次であることと次数付き部分加群であることは同値である。定義によって部分環が次数付き部分環であることと次数付き部分加群であることは同値である。次数付き加群の零化イデアルは斉次イデアルである。
例:次数付き環から次数付き環への像が中心に含まれるような次数付き射を与えることは、後者の環に次数付き代数の構造を与えることと同じである。
次数付き加群 M が与えられたとき、the l-twist of は によって定義される次数付き加群である。(cf. 代数幾何のセールのねじり層)
M と N を次数付き加群とする。 が加群の射であれば、 のときに f の次数は d であるという。微分幾何学における微分形式の外微分は負の次数をもつそのような射の例である。
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