最高裁判所長官 地位

最高裁判所長官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 21:58 UTC 版)

地位

最高裁判所長官は最高裁判所の長たる裁判官であり(裁判所法第5条第1項)、内閣総理大臣衆議院議長参議院議長とともに、三権の長と呼ばれる。

最高裁判所は、最高裁判所長官(「長たる裁判官」)1人と、最高裁判所判事(「その他の裁判官」)14人の計15人の最高裁判所裁判官(「最高裁判所の裁判官」)からなる。最高裁判所長官以外のその他の裁判官を「最高裁判所判事」という(裁判所法第5条第1項)。最高裁判所長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命する(日本国憲法第6条第2項)のに対し、最高裁判所判事は内閣が任命し天皇が認証する(日本国憲法第79条第1項、裁判所法第39条第3項)。

なお、最高裁判所長官は、皇室会議の議員となる(皇室典範28条)。

最高裁判所を代表する地位

最高裁判所長官は、対外的には、最高裁判所を代表する地位を有する。三権の長が揃い踏みする外部の公式行事に出席する。

呼称

最高裁判所の長について、日本国憲法においては「最高裁判所の長たる裁判官」(6条2項)、「長たる裁判官」(79条1項)と定め、日本国憲法に「最高裁判所長官」の表記は存在せず、裁判所法において「最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官と…する。」(5条1項)と定める。

最高裁判所長官
最高裁判所長官は、日本においては最高裁判所の長たる裁判官の官名である。宮中の親任式で授与される官記には「最高裁判所長官に任命する」と記載される。
最高裁判所の長たる裁判官
上述の最高裁判所長官は、司法権行使の点で他の最高裁判所の裁判官に優越するものではない。日本国憲法の原案でも、最高裁判所に所属する裁判官を「長たる裁判官」と「その他の裁判官」(最高裁判所判事)とに区別はしていなかった。ところが原案審議の過程で、内閣総理大臣の任命権は天皇に帰属するのに対し、最高裁判所の裁判官の任命権は全て内閣に帰属することになっていたことが問題となった。その結果、最高裁判所長官については、同じく三権の長である内閣総理大臣との均衡上、天皇に任命権を帰属させるべきであるとして原案に修正が加えられ、憲法の規定上その他の裁判官と区別されるようになった。つまり、憲法にある「最高裁判所の長たる裁判官」という語は、あくまでも任命権の帰属について他の裁判官と区別するための用語であり、名称(官名や職名)ではない。

指名と任命及び任期

最高裁判所長官は、内閣の指名に基づき、国事行為として天皇が任命する(憲法6条2項、79条1項、裁判所法39条1項、なお、任命資格については裁判所法41条を参照)。最高裁判所長官の任命資格は、最高裁判所判事の任命資格と同じである。

最高裁判所長官は裁判官枠出身の者が任命されていることが多い。1979年より前は裁判官枠以外(法学者枠や弁護士枠や検察官枠)の出身の長官が4人存在していたが、1979年(昭和54年)以降から現在まで11代続けて裁判官枠出身から長官が任命されている。新藤宗幸はキャリア裁判官における最高裁判所長官の基準について「事務総局での司法官僚としての経験と行政能力を評価するとともに、地裁部総括、高裁部総括、地裁所長、高裁長官といった裁判所実務における訴訟指揮能力や人事・組織管理能力としてのバランス」と類推している[2]

最高裁判所長官の任期は最高裁判所裁判官と同じ定年の70歳までである(裁判所法50条)[注釈 1]。但し歴代長官では草場良八竹﨑博允の2名が定年前に依願退官している。一方で、長官が在任期間中に死去したというケースはまだない。

慣例的に、最高裁判所長官は定年の70歳に近づくと、内閣総理大臣に対し、次期最高裁判所長官として誰が適任であるか意見を述べる[3]。内閣総理大臣がその意見を了承すると、閣議により内閣が次期最高裁判所長官を指名する。そのため、実質的に最高裁判所長官の指名権があるのは、前任の最高裁判所長官といえる。なお、現最高裁判所長官が内閣総理大臣に意見を述べる前に元長官や一部の判事や法曹有力者に意見を求めた上で適任者を決めることもある。この慣例は2代目長官の田中耕太郎が3代目長官に横田喜三郎を適任と人選した時からである[注釈 2][4]


注釈

  1. ^ 定年まで勤めた場合、任期は満70歳の誕生日の前日までとなる。
  2. ^ 初代長官の三淵忠彦は裁判官任命諮問委員会で最高裁判所裁判官候補として30人が答申された際に片山哲内閣総理大臣から選ばれ、第2代長官の田中耕太郎は吉田茂内閣総理大臣が選出したように、長官人事は時の内閣の意向が強く反映されたものとなっていた。
  3. ^ 最高裁判所判事を除く。なお、初代・2代・3代・17代長官を除いて、すべて最高裁判所判事を経て、最高裁判所長官に就任している。
  4. ^ 最高裁判所長官の在任中、または長官就任前の直近に行われた最高裁判所裁判官国民審査において、総投票のうち、その者を「罷免を可とする裁判官」として×の記号を記載した投票の数の割合。
  5. ^ すでに最高裁判所判事として最高裁判所裁判官国民審査(国民審査)に付されている最高裁判所長官は、再審査は前審査から10年以上経過している場合であるため、最高裁判所長官に就任したことを理由に再審査に付されることはない。
  6. ^ 初代長官の三淵は就任当時、昭和2年勅令第1号乃至第3号及び同年閣令内務省令第1号の規定による中央公職適否審査委員会の資格審査中であった。7月22日に裁判官任命諮問委員会の選考する最高裁判所裁判官候補者となり、8月4日に片山内閣が最高裁長官人事を行い、8月7日に中央公職適否審査委員会から公職就職禁止に非該当という結果が公表された。昭和22年8月7日官報(号外第2号)、昭和22年 8月22日官報(号外第1号)、他。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n 最高裁判所長官就任前の最高裁判所判事としての国民審査。

出典

  1. ^ 裁判官の報酬等に関する法律 e-Gov法令検索 2021年10月25日閲覧。
  2. ^ 新藤宗幸 2009, p. 76.
  3. ^ 新藤宗幸 2009, p. 71.
  4. ^ 毎日新聞社会部 1991, p. 266-271.
  5. ^ 野村二郎 2004, p. 3.
  6. ^ a b c 長嶺超輝 2007, p. 38.
  7. ^ 長嶺超輝 2007, p. 37.






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