広告 歴史

広告

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 08:49 UTC 版)

歴史

エジプト人はパピルスを使用してポスターと宣伝文句を作成していた[9]。紀元前11 - 7世紀頃の中国では、竹の笛で菓子を買う子供たちを呼んでいる様子が詩経に書かれている。

日本においては、店舗毎に商品名を看板に明記する規定があったことが養老律令(718年)の解説である令集解に記載されており、これが日本最初の商業広告であったという説がある[10]

広告取引の仕組み

広告を出したい。と考えている者が広告主として、放送事業者新聞社出版社パブリッシャーなど、最終的に接触する多数の人を持つ「媒体社」からスペースや時間枠、あるいはより一般的には広告チャンスを購入し、メディア特性に合わせて制作した「広告メッセージ」を出稿・配信し、「公衆(特定不特定は関係ない)」あるいは受け手(オーディエンス)に伝達する。その行為の対価として広告主は、「媒体社」等の組織、企業に広告費を支払う。

広告主となる企業が数多く、「媒体社」も種類が多く、適切な広告活動は難しいことがあるため、広告主とメディア双方から手続きの権限を委ねられ、仲立ちをすることから発生したのが広告代理業である。

ただし21世紀に一般化したグーグルの「検索連動型広告」も「内容連動型広告」も、ソーシャルネットワークサービスLINEなどに挿入されるアプリの中の「記事体広告」も、従来からの説明では充分に記述で来ていない。しかしこれらは「広告収益を基本とするビジネスモデル」の世界的な「巨大企業」を成立させ、20世紀までの「広告取引の仕組み」とは異なる論理で広告展開がなされているといえる。 また、アフィリエイトと呼ばれるネット広告の仕組みでは、ブログの書き手である一般の個人が広告収入を得る。これは従来の受け手が媒体を保有し、事業にしていることになり、従来の説明をあてはめにくい。

ネット広告においては、2010年ごろからこれらの取引や発信をネットワーク化、自動化、リアルタイム化することが始まり、広告主自らがデータマネジメントシステムをもとに広告を配信できる一方で、従来からの説明にない中間業者も多数生まれ、戦略コンサル、ITコンサル等の他業界からの参入も増え、業界、取引の構造が激変し未だ新たな秩序形成に向かう過渡期と認識する向きが多い。

このような変化の状況下、いまだ「現在の広告業界を俯瞰的に説明する枠組み」はできていない。

世界の広告

世界最大の広告大国はアメリカであり(総広告費は日本の4〜5倍)、次いで日本である。イギリス、フランス、ドイツが続くが、総広告費は日本の半分である。文化大革命で抑えられていた中国は今急激に追い上げている。アメリカではGDPに対する総広告費の割合が2パーセントであり、国土の広さと使用言語の多さが日本の倍にしている。 多くの大学で広告が研究され、広告学部や広告学科なども存在する。 広告それ自体は、世界でそう変わるものではないが、広告関連企業は日本と世界で大きく異なり、いわゆるメガ・エージェンシーと呼ばれるもの(特に上位4つ)が非常に大きい位置を占めている。機能別に細かく分かれる大小さまざまな代理業が一つのグループを組んでいる。結果、巨大な企業グループが世界には存在することとなる。無数の代理業が集合して巨大グループとなる背景には、合併や統合が相次いでいたこと、「一業種一社制」という業界慣習(日本では機能していない)があることが背景と考えられる。つまり、ある代理業がある自動車会社をクライアントとしたなら、ライバル企業の広告には関われない。よって、規模の利益を追求すればグループ化、ということになるのである。

世界の主なメガ・エージェンシー(4大メガ・エージェンシー)

  • WPPグループ (WPP Group)
  • オムニコム・グループ (Omnicom Group)
  • インターパブリック・グループ (Interpublic Group of Companies)
  • ピュブリシス・グループ (Publicis)

2010年代、主要先進国ではインターネット広告が伝統的なマス広告の代表であるテレビ広告を、金額的に凌駕するレベルにまで成長・拡大した。この業界変化の中で、コンサルティング業界からのネット広告への参入が果たされた。伝統的にコンサルティング業界には「一業種一社制」という概念はないために、たとえば、アクセンチュアは同業の自動車、通信、金融などのグローバル広告主を複数扱っている。 つまり、現在の広告業界はネット広告の伸長によって異なる業界からの異なる論理を持っての参入が生じ、取引の構造やルールが激変し、この点でも未だ大きな変化の過渡期と認識する向きが多い。


  1. ^ Hong Liu, Chinese Business: Landscapes and Strategies (2013), p. 15.
  2. ^ 第2版,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,マーケティング用語集,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,ブランド用語集,世界大百科事典. “広告とは”. コトバンク. 2022年6月3日閲覧。
  3. ^ a b 小林太三郎著「現代広告入門」第2版、ダイヤモンド社、昭和58年、10-12ページ
  4. ^ a b 後藤将之『マス・メディア論』<有斐閣コンパクト> 有斐閣 1999年 ISBN 4641076219 pp.196-199.
  5. ^ 水野, 由多加「[研究ノート 近現代文芸の中の広告(1) : 明治期以降の文学作品中の言説渉猟]」『関西大学社会学部紀要』第46巻第1号、2014年10月31日、27–55頁。 
  6. ^ 水野, 由多加「[研究ノート 近現代文芸の中の広告(2) : 明治期以降の文学作品中の言説渉猟]」『関西大学社会学部紀要』第47巻第1号、2015年10月31日、53–83頁。 
  7. ^ 水野, 由多加「[研究ノート 近現代文芸の中の広告(3) : 明治期以降の文学作品中の言説渉猟]」『関西大学社会学部紀要』第48巻第1号、2016年11月15日、113–138頁。 
  8. ^ 清水公一 (2018). 『広告の理論と戦略』第18版、第2刷. 創成社、39ページ 
  9. ^ Behal, Vikas; Sareen, Sania (2014). "GUERILLA MARKETING: A LOW COST MARKETING STRATEGY". International Journal of Management Research and Business Strategy. 3 – via Google Scholar.
  10. ^ 『インフラ広報の世界 INFRA.PR BRAND BOOK』株式会社Kプロビジョン、2023年04月14日、20頁。
  11. ^ 『大藏省令第149号廣告税法施行規則ニ依リ結社指定』、官報。1942年。
  12. ^ 東洋経済オンライン 広告市場は09年度も大幅減少に! メディアは火だるま(1)
  13. ^ “推し活”が駅周辺広告の「空き枠」を埋める 市場規模どんどん拡大、業界の救世主に”. 日刊ゲンダイDIGITAL (2024年5月22日). 2024年5月22日閲覧。
  14. ^ 村松魁成 (2024年5月22日). “ファンが駅にアイドルの「応援広告」、新たな「推し活」のカタチ…「推し電車」を走らせることも”. 読売新聞. 2024年5月22日閲覧。
  15. ^ 国際連合. “ディビッド・ケイ「表現の自由」国連特別報告者 訪日報告書』(A/HRC/35/22/Add.1)”. 外務省. 2018年7月27日閲覧。 “日本の5大民放組織が,それぞれ主流全国日刊紙と繋がっている。これは,情報市場への参加者数を制限している。”
  16. ^ 清水公一、木村有宏、新川三郎(2014)「屋外広告指標推定システムの構築」『日経広告研究所報』276号、日経広告研究所、38-45ページ。
  17. ^ a b 清水公一(2018)『広告の理論と戦略』第18版、第2刷、創成社、187-190ページ。
  18. ^ a b 電通広告事典プロジェクトチーム「電通広告事典」2008 電通
  19. ^ https://ci.nii.ac.jp/naid/120006368708/ 水野由多加(2017)「ネーミングライツ(命名権)についての断章」『関西大学社会学部紀要』49(1), 205-217. https://ci.nii.ac.jp/naid/120006624697 同(2018)「ネーミングライツ(命名権)についての断章(続)」『関西大学社会学部紀要』50(1), 61-74.
  20. ^ 水野由多加「ネーミングは広告である : ネーミングライツの意義と公共性」『都市問題』第114巻第1号、2023年1月1日、54–63頁、doi:10.32286/00027809 
  21. ^ [1]
  22. ^ 水野由多加「〈論文〉商業現象に見出される「広告とは言及されない広告」―現象理解のタテ糸あるいは補助線としての広告研究―」『商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies』第64巻第2号、2017年12月31日、45–85頁。 
  23. ^ 産経新聞の例産経新聞媒体資料インターネット版より






固有名詞の分類


品詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「広告」の関連用語

広告のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



広告のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの広告 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS