広告 概要

広告

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 08:49 UTC 版)

概要

一般に広告とされるものは、テレビコマーシャルチラシの拡散といった、メディアを介した宣伝活動に代表される。しかし、大衆社会では効果的な商品陳列から式典で鳩を放つといった象徴的行為まで、特定の事象を強調する存在は、媒介手段に因らず一定の文脈下では結果的に全て広告たり得る[4]。そのため、広告とそうでないものを分類する基準は物質的なものではなく、宣伝する意図性の有無が基準となる[4]。この意図性は広告の送り手が実際に意図を持つことを分析者が考察の中に入れる、という意味や、広告の受け手が「送り手の意図を推察」しながら広告を受け取る、という社会的なコミュニケーションのダイナミクスが広告にはある。

広告であるためには以下の3条件が整っていなければならないというのが米国流に見た広告の定義である。アメリカマーケティング協会やアメリカの多くの研究者の定義を踏まえて定義づけたものがある。

  1. 管理可能な広告媒体(広告主が宣伝しようとする場合、新聞記事やテレビ番組に取り上げてもらう管理不可能なパブリシティと区別するためである)
  2. 非人的メッセージ
  3. 明示された広告主 (advertiser) が行う

広告物(advertisement)は、紙や画像、映像、Webページ上の造形表現物のことであり、活動であるかどうか、社会に実際流されたものかどうか、といった点で、広告(advertising)とは、異なる概念である。一見、日本語の広告は英語の advertising と対応すると考えられがちであるが、ゆるキャラ、企業のパブリシティが記事や番組になったもの、冠イベント、ロゴマークをバックにした記者会見、自社サイトなど、英語の advertising や、その直訳のマーケティングの定義する広告には当てはまらないものが、日常使われる日本語の「広告」という言葉によって指し示されることが多い。日本語の広告が英語の advertising よりも意味が広く指し示すことが幅広いことに留意が必要である[5][6][7]

非人的メッセージという点においても、インスタグラマー等のインフルエンサーをどう捉えるか、現代の状況との間で議論の余地がある。

明示されていない広告主をもってプロパガンダとしたり、政治宣伝はプロパガンダ、アドバタイジングは商業広告と区別して扱う考え方もあるが、その区別は実は容易ではない。

広告はマーケティングの手段、一部分と捉える向きもあるが、マーケティングが企業活動として体系化して考えられてから100年ほどであるのに対して、広告の実践・歴史の方が明らかに長い。経済学の祖、アダムスミスの時代よりもウエッジウッドの新聞広告は古い。言いかえれば、近年において「広告は経済活動」と見なされることが多くなり、さらに20世紀に「マーケティング認識」がなされる。一方で「美学」「デザイン学」「コミュニケーション研究」等の広告認識もある。

大手広告代理業で最古のものは1864年創業のジェイ・ウォルター・トンプソン(JWT)と言われている[8]


  1. ^ Hong Liu, Chinese Business: Landscapes and Strategies (2013), p. 15.
  2. ^ 第2版,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,マーケティング用語集,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,ブランド用語集,世界大百科事典. “広告とは”. コトバンク. 2022年6月3日閲覧。
  3. ^ a b 小林太三郎著「現代広告入門」第2版、ダイヤモンド社、昭和58年、10-12ページ
  4. ^ a b 後藤将之『マス・メディア論』<有斐閣コンパクト> 有斐閣 1999年 ISBN 4641076219 pp.196-199.
  5. ^ 水野, 由多加「[研究ノート 近現代文芸の中の広告(1) : 明治期以降の文学作品中の言説渉猟]」『関西大学社会学部紀要』第46巻第1号、2014年10月31日、27–55頁。 
  6. ^ 水野, 由多加「[研究ノート 近現代文芸の中の広告(2) : 明治期以降の文学作品中の言説渉猟]」『関西大学社会学部紀要』第47巻第1号、2015年10月31日、53–83頁。 
  7. ^ 水野, 由多加「[研究ノート 近現代文芸の中の広告(3) : 明治期以降の文学作品中の言説渉猟]」『関西大学社会学部紀要』第48巻第1号、2016年11月15日、113–138頁。 
  8. ^ 清水公一 (2018). 『広告の理論と戦略』第18版、第2刷. 創成社、39ページ 
  9. ^ Behal, Vikas; Sareen, Sania (2014). "GUERILLA MARKETING: A LOW COST MARKETING STRATEGY". International Journal of Management Research and Business Strategy. 3 – via Google Scholar.
  10. ^ 『インフラ広報の世界 INFRA.PR BRAND BOOK』株式会社Kプロビジョン、2023年04月14日、20頁。
  11. ^ 『大藏省令第149号廣告税法施行規則ニ依リ結社指定』、官報。1942年。
  12. ^ 東洋経済オンライン 広告市場は09年度も大幅減少に! メディアは火だるま(1)
  13. ^ “推し活”が駅周辺広告の「空き枠」を埋める 市場規模どんどん拡大、業界の救世主に”. 日刊ゲンダイDIGITAL (2024年5月22日). 2024年5月22日閲覧。
  14. ^ 村松魁成 (2024年5月22日). “ファンが駅にアイドルの「応援広告」、新たな「推し活」のカタチ…「推し電車」を走らせることも”. 読売新聞. 2024年5月22日閲覧。
  15. ^ 国際連合. “ディビッド・ケイ「表現の自由」国連特別報告者 訪日報告書』(A/HRC/35/22/Add.1)”. 外務省. 2018年7月27日閲覧。 “日本の5大民放組織が,それぞれ主流全国日刊紙と繋がっている。これは,情報市場への参加者数を制限している。”
  16. ^ 清水公一、木村有宏、新川三郎(2014)「屋外広告指標推定システムの構築」『日経広告研究所報』276号、日経広告研究所、38-45ページ。
  17. ^ a b 清水公一(2018)『広告の理論と戦略』第18版、第2刷、創成社、187-190ページ。
  18. ^ a b 電通広告事典プロジェクトチーム「電通広告事典」2008 電通
  19. ^ https://ci.nii.ac.jp/naid/120006368708/ 水野由多加(2017)「ネーミングライツ(命名権)についての断章」『関西大学社会学部紀要』49(1), 205-217. https://ci.nii.ac.jp/naid/120006624697 同(2018)「ネーミングライツ(命名権)についての断章(続)」『関西大学社会学部紀要』50(1), 61-74.
  20. ^ 水野由多加「ネーミングは広告である : ネーミングライツの意義と公共性」『都市問題』第114巻第1号、2023年1月1日、54–63頁、doi:10.32286/00027809 
  21. ^ [1]
  22. ^ 水野由多加「〈論文〉商業現象に見出される「広告とは言及されない広告」―現象理解のタテ糸あるいは補助線としての広告研究―」『商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies』第64巻第2号、2017年12月31日、45–85頁。 
  23. ^ 産経新聞の例産経新聞媒体資料インターネット版より






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