失踪宣告
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/02 14:48 UTC 版)
失踪宣告の効果
失踪宣告を受けた者は以下の時期に死亡したものとみなされる(いずれも失踪宣告がなされた時ではないので注意を要する)。
- 普通失踪 - 失踪期間7年が満了した時(31条前段)
- 例えば失踪から10年経過した者の場合、失踪期間(7年間)を満たすので失踪宣告の要件を満たし、この者に失踪宣告があったときは失踪宣告時ではなく失踪から7年を経過した時点で死亡したものと擬制される。
- 特別失踪 - 危難が去った時(31条後段)
- 例えば船舶の沈没の場合、沈没(法文上の「危難」が去って)から1年間が経過すれば失踪宣告の要件を満たし、この者に失踪宣告があったときは失踪宣告時ではなく沈没時に死亡したものと擬制される。
失踪宣告の重要な効果は死亡の擬制による婚姻の解消と相続の開始である。生命保険の死亡保険金も支払われる。31条は失踪宣告によって失踪者の死亡を推定ではなく擬制するものとしている。したがって、失踪宣告の効果は失踪宣告を受けた者の生存や異時死亡(死亡したものとみなされた時期と異なる時期に死亡していた場合)を立証しても当然には覆すことはできず、これらの場合には32条の規定に従って失踪宣告の取消しを申し立てるほかはない[4]。
失踪宣告は失踪者の音信が途絶えた最後の地での法律関係を清算する制度であり、失踪宣告によっても失踪宣告を受けた者の権利能力は消滅しないので、失踪宣告を受けた者が実際には生存しており他所で契約等の法律関係を形成する場合には失踪宣告の効果は及ばない[5][6]。ただし、印鑑証明が必要となる不動産取引や新たな婚姻など事実上不可能となるものもある[5]。
なお、失踪宣告により失踪者は一定の時点に死亡したものとみなされるが、その結果、失踪者は死亡したとみなされる時期までは生存していたものと推定を受ける(通説)[5]。
- ^ a b c d e f 水本浩ほか『注解法律学全集 民法1 総則1 第1条〜第89条』青林書院、1995年、136頁。ISBN 978-4417009399。
- ^ a b 水本浩ほか『注解法律学全集 民法1 総則1 第1条〜第89条』青林書院、1995年、137頁。ISBN 978-4417009399。
- ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』106頁、岩波書店、1965年
- ^ 水本浩ほか『注解法律学全集 民法1 総則1 第1条〜第89条』青林書院、1995年、138頁。ISBN 978-4417009399。
- ^ a b c 水本浩ほか『注解法律学全集 民法1 総則1 第1条〜第89条』青林書院、1995年、139頁。ISBN 978-4417009399。
- ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』109頁、岩波書店、1965年
- ^ a b 水本浩ほか『注解法律学全集 民法1 総則1 第1条〜第89条』青林書院、1995年、141頁。ISBN 978-4417009399。
- ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』111頁、岩波書店、1965年
- ^ 大判昭和13年2月7日民集17巻59頁
- ^ 水本浩ほか『注解法律学全集 民法1 総則1 第1条〜第89条』青林書院、1995年、143頁。ISBN 978-4417009399。
- ^ a b c 水本浩ほか『注解法律学全集 民法1 総則1 第1条〜第89条』青林書院、1995年、142頁。ISBN 978-4417009399。
- ^ 水本浩著『民法(全)体系的基礎知識 新版』19頁、有斐閣、2000年
- ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』112頁、岩波書店、1965年
- ^ 熊本地判大正15年2月15日
- 1 失踪宣告とは
- 2 失踪宣告の概要
- 3 失踪宣告の効果
- 4 失踪宣告の取消し
- 5 脚注
失踪宣告と同じ種類の言葉
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