夢金 夢金の概要

夢金

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/10 04:20 UTC 版)

概要

原話は、1773年安永2年)に出版された笑話本『出頬題』の一編「七ふく神」(あらすじ:七福神に「富をさずける」と言われた男が、もらった包みを「ありがたい」と握り締めたところ、謎の痛みに襲われて夢から覚める)。

主な演者

物故者

現役

あらすじ

大雪の降る夜。山谷堀浅草とも)の船宿・吉田屋の二階では、船頭の熊蔵(熊五郎とも。以下、熊)が「金くれえ」という寝言を大声で言いながら寝ている。主人は「静かにしろ」と注意するが眠っている熊には効き目がない。

そこへ、人相の悪い浪人風の男が高価な服を着た若い女を連れてやってくると、主人に「妹と一緒に芝居を見てきた帰りだが、この雪で身動きが取れなくなって困っている。大橋(=千住大橋。船宿の設定が浅草の場合、新大橋。あるいは深川とも)まで屋根舟を一艘仕立ててもらいたい」と言う。主人が「船頭はすべて出払っておりまして」と断ろうとするが、二階から熊の寝言が聞こえるため、男は「あれは船頭ではないのか」とたずねる。主人は「あれは大変な守銭奴でございまして、酒手(さかて=チップ)の無心などするとお気の毒ですから」と言い訳をするが、男はかまわないから舟を出してくれと言う。主人に起こされた熊は寒い夜に出て行くことをいやがるが、「酒手はたんと出すぞ」と男に言われると喜んで身支度を整え、舟を出す。

舟の上で女が居眠りを始めると、男が熊に近づいてきて相談を持ちかける。同行の女は実は妹ではなく、吉原土手(船宿の設定が浅草の場合、花川戸)で犬に取り巻かれて(あるいは、を起こして)困っていたところを助けたのだが、話を聞くとこの女は石町(こくちょう、あるいは本町とも)の扇屋という大店(おおだな)の娘で、店の若い者と駆け落ちをするために二百両を持ち出し、家を飛び出したものの、若い者とは別れ別れになってしまったという。男はひと気のないところへ女を連れ出して殺し、金を奪おうと考えて熊にその手助けを求めたのだった。熊が断ると男は「大事を明かした上はおまえを生かしておけない」と脅す。熊が分け前はいくらくれるのかと問うと男は「二両でどうだ」と答えるが、態度を一変させた熊が「半分の百両をよこさないと舟をひっくり返すぞ」とすごむと男も山分けすることに同意する。熊は、「舟の上で殺すと血の跡が残る、これから舟を中州につけるのでそこで殺してくれ」と提案する。

しかし、男が中州へ降りると熊は男を残して舟を出してしまい、女を扇屋へ送り届ける。扇屋の主人夫妻は大喜びし、熊に褒美として大金を包んだ風呂敷を渡す。熊はその場で風呂敷を開き、小判の紙包みを両手で強く握りしめる。そこで熊が目覚めるとそれまでのことはすべて夢であり、熊は蒲団の中で自分の睾丸を握りしめていた。

バリエーション

  • 大金の額は演者によって異なる。50両→100両、100両→200両で演じるなど。
  • 金の包みがひどく熱い、という展開で演じる場合がある。その場合、熊は目が覚めた時、股間に火鉢を挟んでいる。
  • サゲで下ネタに走らない演じ方がある。船宿の主人の「うるせえぞ熊、静かにしろ」という注意の声でシーンが急変し、「ああ……夢だ」で終える(3代目金馬ら)。
  • 「欲深き人の心と降る雪は積もるにつけて道を忘るる」という狂歌を冒頭に振る場合がある。



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