地理教育 理論および実践

地理教育

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/06 04:54 UTC 版)

理論および実践

地理教育論

「社会科地理教育論」
人間・社会・地理についての正しい理解と公民市民として必要な能力・態度の育成を目指す。
「地理科地理教育論」
  • 社会科解体論
  • 地理科独立論

地誌学習

地誌学習の方法には、静態地誌・動態地誌・比較地誌の3つがある[15]静態地誌(せいたいちし)は、ある地域の地形気候産業人口交通などの各項目を学習することによって、地域の特色を発見する学習法である[15]動態地誌(どうたいちし)は、ある地域のある地域的な特色(例えば、中華人民共和国の人口・フランスの農業など)を抽出し、それがどのようにして成立するかを多面的に考察する学習法である[15]比較地誌(ひかくちし)は2つの類似あるいは対照的な地域を比較する学習法である[15]。静態地誌は項目羅列的で平板な内容になりやすく[注 2]、動態地誌は地域の特色の選択が難しく[注 3]、他地域との比較がしづらい、という難点がある[15]

課題

教員養成に関する課題

原則的に、日本の学校で地理教育を行う場合、小学校・中学校「社会」・高等学校「地理歴史」の免許が必要となる。

小学校

中学校

社会科教育を参照。

なお、中学校「社会」の免許取得のためには、地理教育が扱う分野以外に以下の分野の単位を各2単位ずつ履修する必要がある。

高等学校

中学校「社会」・高等学校「地理歴史」「公民」教員免許は教員養成系や社会科学系の多くの大学・学部(通信教育を含む)で取得可能である[17][18]。日本で高等学校「地理歴史」の教員免許を取得する際には、教育職員免許法施行規則第五条に基づき、以下の分野の単位を各2単位以上履修する必要がある[19]

このほか、第六条第四欄に規定されている「各教科の指導法」として、「地理歴史」の指導法(地理歴史科教育法などと呼ばれる。基本的には、地理教育学・歴史教育学を含む)を履修する必要がある。

教育職員免許法施行規則の規定から、教員免許取得のためには地理教育が取り扱うべき分野以外に、歴史に関する分野も規定単位数以上履修しなくてはならない。免許取得のために地理教育で取り扱うべき学問領域以外の分野も学習することになる。

脚注


注釈

  1. ^ 戦後、1989年までは小学1年生から社会科の授業が行われていた。
  2. ^ つまり、結果的に学習者側は、地名や産物などの暗記中心学習になりやすいことを意味する[16]
  3. ^ 山口幸男は、地理教育上、特色選択の難しさ・特色の恣意的な選択は中心的な問題ではないが、それよりも系統地理的な学習に近いものになってしまい、本来の地誌学習からずれてしまうことのほうが問題であるとしている[16]

出典

  1. ^ a b c De Blij, H (2005). Why Geography Matters Three Challenges Facing America. Oxford University Press. ISBN 0-1951-8301-0 
  2. ^ 和田文雄「地理的技能の体系的指導による地理学習の改善―ARGUSのアクティビティの実践―」『地理科学』第56巻第1号、地理科学学会、2001年、36-55頁、doi:10.20630/chirikagaku.56.1_36 (38ページより)
  3. ^ a b c 大山修一、桐越仁美「地理的技能の体系的指導による地理学習の改善―ARGUSのアクティビティの実践―」『地学雑誌』第121巻第5号、東京地学協会、2012年、913-927頁、doi:10.5026/jgeography.121.913 
  4. ^ a b c d 志村喬「イギリスの地理教科書」(PDF)『高等学校 地理・地図資料』2006年4月号、帝国書院、2006年、16-17頁。 
  5. ^ a b c d 大嶽幸彦「フランスにおける地理教育のイメージ」『地理』第39巻第12号、1994年、90-96頁。 
  6. ^ a b 香川貴志「環境保全先進国ドイツの地理教科書の読解(2)- Westermann 社Schroedel ブランドのSeydlitz Geographie Gymnasium Niedersachsen 9/10 の例-」『京都教育大学紀要』第114号、2009年3月、49-62頁、hdl:20.500.12176/4046 
  7. ^ a b c 小俣利男「ロシアの地理学」『地學雜誌』第121巻第4号、東京地学協会、2012年8月25日、699-716頁、doi:10.5026/jgeography.121.699NAID 130002140009 
  8. ^ a b 大村纂「スイスの地理学」『地學雜誌』第121巻第4号、東京地学協会、2012年8月25日、626-634頁、doi:10.5026/jgeography.121.626NAID 130002140003 
  9. ^ a b 西脇保幸「トルコにおける近年の地理教育の動向(1)-中学校・高等学校の教科書を手がかりに-」『横浜国立大学教育紀要』第36号、1996年、43-60頁、hdl:10131/2433 
  10. ^ a b 伊藤智章 (2008年2月). “引率者から見た台湾の地理オリンピックとGIS” (PDF). 地理教育学会2月例会. 2012年5月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年5月23日閲覧。
  11. ^ a b 小金沢孝昭、南璟祐「環境教育と高校地理教科書の構成-日本と韓国の教科書における地球環境問題を中心にして-」『宮城教育大学環境教育研究紀要』第3号、2000年、1-9頁。 
  12. ^ a b c d e f 袁家冬「中国における地理教育の現状」『新地理』第35巻第3号、日本地理教育学会、1987年、10-21頁、doi:10.5996/newgeo.35.3_10NAID 130003456014 
  13. ^ a b c 泉貴久「ニュージーランドにおける地理教育の特色―教科書・Syllabusを手掛かりにして―」『日本ニュージーランド学会誌』第1巻、1995年、28-43頁、doi:10.20598/jsnzs.1.0_28NAID 110003988261 
  14. ^ a b 新井教之「サモアにおける地理教育の特色」『日本地理学会発表要旨集』第2019巻、2019年9月、166頁、doi:10.14866/ajg.2019a.0_166NAID 130007710924 
  15. ^ a b c d e 久山将弘. “中学社会研究室通信No.23” (PDF). 岡山県総合教育センター. 2011年8月18日閲覧。
  16. ^ a b 山口幸男 2009, p. 2.
  17. ^ 中学校・高等学校教員(社会・地理歴史・公民)の免許資格を取得することのできる大学”. 文部科学省. 2017年5月14日閲覧。
  18. ^ 取得できる教員免許状一覧” (PDF). 私立大学通信教育協会. 2017年5月14日閲覧。
  19. ^ 教育職員免許法施行規則”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2017年5月14日閲覧。


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