国際特許分類 国際特許分類の概要

国際特許分類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/07/23 10:55 UTC 版)

特許文献とは、各国の特許庁によって発行される特許、発明者証、実用新案、公開特許公報などの文献である。国際特許分類を採用する国の特許文献には、「Int. Cl.」(International Classificationの略)という前置きとともに、アルファベットと数字からなる国際特許分類の分類記号が表示されている。2000年1月1日から2005年12月31日までの間に発行された特許文献には「Int. Cl.7」と表示されるIPC第7版が用いられた。2006年1月1日以降に発行される特許文献には、単に「Int. Cl.」と表示されるIPC第8版が用いられている。

国際特許分類の分類表は、英語フランス語を等しく正本としている。公定訳文中国語チェコ語ドイツ語ハンガリー語日本語朝鮮語ポーランド語ロシア語スペイン語で作成される。国際特許分類の日本語訳は日本特許庁によって提供されているが、かなりの翻訳ゆれ、表記ゆれや誤字脱字を含むことが指摘されている[1]

目次

分類と分類記号

国際特許分類の構造。A01B 1/02という分類記号の構造を示す。
A 01 B 1 /02
セクション  
クラス
サブクラス
メイングループ
サブグループ

セクションからサブグループまでがつくる階層構造

国際特許分類は、生物の分類に似ている。生物の分類では、全ての生物を動物界、植物界(など)の「界」に分け、動物界、植物界それぞれに分類された生物をさらに細かく(例えば動物界であれば海綿動物門から脊索動物門までの)「門」に分ける。それぞれの「門」を「綱」に分け、「綱」をさらに「目」に分け、「目」を「科」に分ける。国際特許分類には、生物の分類における「界」に相当するもっとも大まかな分類として「セクション」があり、以下「サブセクション」、「クラス」、「サブクラス」、「メイングループ」、「サブグループ」という細かい分類がある。

国際特許分類では、全技術分野を8個の「セクション」に分け、各セクションを5から36の「クラス」に分け、さらにそれを「サブクラス」に、サブクラスを「メイングループ」に、メイングループを「サブグループ」へと細分する。メイングループとサブグループはあわせて7万個ほどある。特許文献には7万個あるメイングループとサブグループのうちの1個または複数の記号が、その文献の分類を表示するために付される。

国際特許分類の分類記号は、セクションからサブグループに至る階層を示すアルファベットと数字の組み合わせである。例えば、

  • Aはセクション「生活必需品」を表す分類記号であり、
  • A01はクラス「農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業」を表す分類記号であり、
  • A01Bはサブクラス「農業または林業における土作業:農業機械または器具の部品, 細部または附属具一般」を表す分類記号であり、
  • A01B 1/00はメイングループ「手作業具」を表す分類記号であり、
  • A01B 1/02はサブグループ「鋤;ショベル」を表す分類記号である。

したがって、分類記号A01B 1/02が表示された特許は

  • 農業または林業における土作業:農業機械または器具の部品, 細部または附属具一般の中でも
  • 手作業具である
  • 鋤;ショベル

に関する発明について与えられたものだといえる。また、「鋤;ショベル」に関する発明にはどんなものがあるかを知りたければ、分類記号A01B 1/02が表示された特許文献を手当たり次第に調べればよい。

ドットによるインデントがつくる階層構造

国際特許分類の分類記号とその意味定義を示した分類表には、サブグループの分類記号の意味定義文の先頭に1または複数のドット(・)が付与され、インデントされている。このドットの個数、インデントの深さによって、意味上の階層構造が表されている。

例えば、メイングループA01B 1/00の分類表には、

1/00 手作業具(芝生の縁切り取り具A01G3/06)
1/02 ・鋤;ショベル
1/04 ・・歯を有するもの
1/06 ・ホー;手持ちカルチベーター
1/08 ・・一枚刃を有するもの
1/10 ・・二枚刃またはそれ以上の刃を有するもの
1/12 ・・歯を有する刃を有するもの
1/14 ・・歯のみを有するもの

(以下略) と書かれている。したがって、

  • メイングループA01B 1/00はサブグループA01B 1/02を含み、
  • サブグループA01B 1/02はサブグループA01B 1/04を含む

ことから、分類記号A01B 1/04は

  • 「手作業具」であって「鋤;ショベル」であって「歯を有するもの」

つまり「歯を有する鋤やショベル」に関する発明の文献に付与される。そして、分類記号A01B 1/02は

  • 「鋤;ショベル」であってA01B 1/04に含まれないもの

つまり歯を有しない鋤やショベルの発明、あるいは、歯を有するか否かに無関係に鋤やショベル一般に適用できる発明、の文献に付与される。

細かいこと

国際特許分類の各階層の桁数は次のようになっている:

  • セクションはAのように、アルファベット1文字。
  • クラスはA01のように、セクションに続いて数字2桁。
  • サブクラスはA01Bのように、クラスに続いてアルファベット1文字。
  • メイングループはA01B 1、B65H 29、D03D 101のように、サブクラスに続いて数字1桁から3桁(IPC8は数字4桁まで)。1桁か2桁であることが多い。特許文献に付与された分類として表示される場合はA01B 1/00、B65H 29/00、D03D 101/00のように後ろに「/00」が補われる。
  • サブグループはG02F 1/13、G02F 1/133、G02F 1/1335、G02F 1/13357のように、メイングループに続いて数字2桁から5桁(IPC8は数字2桁から6桁まで)。2桁であることが多い。

ここで、サブグループの数字の上から2桁目の後、3桁目の前には、見えない小数点があるものと考える。すなわち、G02F 1/133は「G02F 1/百三十三」ではなく「G02F 1/十三点三」と考えるべきで、辞書的な順序ではG02F 1/13の次に配列される。(音読するときは「G02F 1/いちさんさん」のように呼ばれ、「G02F 1/十三点三」のように呼ばれることはない。)

セクションの下、クラスの上には、分類記号を持たない分類であるサブセクションがある。例えば、セクションA「生活必需品」には、A01からA63まで(途中大幅に欠番があって)15個のクラスがあり、これらは「農業」、「食料品;たばこ」、「個人用品または家庭用品」、「健康;娯楽」の四つのサブセクションにまとめられている。

サブセクションに類似して、サブクラスの下、メイングループの上には見出しが付けられていることがある。例えば、A01B 19/00「回転具を有しないハロー」から25/00「特殊な付加装置を有するハロー」までをまとめて、「ハロー」という見出しが付けられている。

サブセクションと見出しが省略されて表示されない特許分類データベースもある。

適切な分類の探し方

自分の発明にはどの分類記号が付与されるべきか、を調べるには、特許分類データベースや特許データベースを使う。

特許分類データベースを使って適切な分類を探す

独立行政法人工業所有権情報・研修館から提供されているパテントマップガイダンスのような特許分類データベースには、分類表の中に出現する語句を使って特許分類を検索する機能がある。そこで、検索語句として自分の発明に関係する語句を与えれば、自分の発明に付与すべき分類記号の候補がリストアップされる。

国際特許分類が分かると特許情報の全体把握が可能になる。全てのセクションとクラスが1ページにまとまり、サブクラス→グループへマウスだけで把握できる。その検索一覧でIPCの逆引きもおこなえるため、国際特許分類を把握するには便利なページがある。

例えば、「洗面器」に関する発明はどんな分類に入るかを調べるには、「洗面器」を検索語句として与え、国際特許分類を検索する。例えばパテントマップガイダンスで実行すると、17個の分類がリストアップされる[2]

このうち、

  • A47K 3/03は、他の浴槽, 流し, 洗面器または類似のものに取付けうる浴槽
  • A47K 4/00は、このサブクラスの中で他の単一のグループに分類されない浴槽, シャワー, 流し, 洗面器, 便器または小便器の組み合わせ
  • A47K 10/08は、洗面器, 浴槽, またはそれらに類似のものに取付けた点に特徴のあるタオル掛け

などは、洗面器そのものではなく、「洗面器に取り付けた何か」なので除外する。

また、

  • A47L17/02 たらい(皿流用テーブルA47B33/00;洗面器A47K1/04;廃水管と連結された洗面器E03C1/12)

は、たらいの分類に付された注釈の文字列にヒットしていることがわかる。注釈によれば、洗面器の分類はA47K 1/04であることがわかる。

そして、

  • A47K1/04 洗面器(排水管と連結されたものE03C1/12);水差し;それらの保持装置

が洗面器の発明が分類されるべき分類である。なお注釈によれば、排水管と連結された洗面器、すなわち洗面台の洗面器、には、E03C 1/12の分類記号が付与されることがわかる。

特許データベースを使って適切な分類を探す

適切な分類を探すためのもう一つの方法は、特許データベースを使用する方法である。以下に、独立行政法人工業所有権情報・研修館から提供されている特許データベースである公報テキスト検索を利用して、「洗面器」の発明に適切な分類を探す例を示す。

  1. まず、「検索項目」を「発明の名称」として、「検索キーワード」を「洗面器」として検索ボタンを押す。発明の名称に洗面器を含む発明を記載した特許文献が検索されることになる。130件くらいの発明がヒットする。
  2. 「一覧表示」ボタンを押す。すると、「洗面器」を含む発明の名称がずらりと表示される。
  3. このうち、「洗面器取付用手摺り」や「浴室用洗面器台」といった洗面器そのものではないものを除外し、洗面器の発明らしい発明の名称を探し、リンクをクリックする。
  4. すると、特許文献の本文が表示される。【国際特許分類第?版】として、その特許文献に付された分類が表示されているので、それをメモする。
  5. 洗面器の発明らしい発明の名称を持つ複数の文献を調べると、A47K 1/00やA47K 1/04といった分類がだいたい共通して付与されていることがわかる。

特許データベースを使う方法が、特許分類データベースを使う方法よりも優れている点は、検索語句が国際特許分類では使われていない用語であったとしても、適切な分類の候補を選び出せる点である。

例えば、「コピー機」という用語は国際特許分類の分類表には使われていない。(国際特許分類の分類表では「帯電像を用いる電子写真法用の装置」といった用語が使われている。)したがって、「コピー機」を検索語句として特許分類データベースを検索しても、ヒットしない。特許データベースで発明の名称を検索すれば、「コピー機」を発明の名称として含む特許文献があるので、適切な分類を見つけることができる。

なお、ヒット件数が多すぎて一覧表示できないときは、文献の公開日を最近1年に制限するなどして、ヒット件数を小さくすればよい。




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