国鉄マニ30形客車 運用

国鉄マニ30形客車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/04 04:14 UTC 版)

運用

東京では尾久客車区隅田川貨物駅、大阪では宮原客車区に配置された[5]。主に急行旅客列車に併結されたが、荷物列車や普通列車に併結されたこともあった[6]。現金輸送時は日本銀行から警備の人員が乗り込んだが、担当者は2日前に「**駅に行け」としか伝えられず[7]、また乗車中は荷物室の鍵を持っていなかった時代もあった[8][注 3]。車両の定期検査大宮工場が担当していた[9]

荷物列車の全廃後も引き続き使用され、JR貨物への継承後も高速貨物列車に併結されていたが[注 4]、JR貨物がコキ100系コンテナ貨車で組成した高速貨物列車が最高速度110 km/hであるのに対し、本形式の最高速度は95 km/hであることが制約となり[10]、1992年(平成4年)から自動車での輸送への切り替えが始まり[10]、2003年(平成15年)の鉄道輸送終了により用途がなくなり、2004年(平成16年)に全車廃車され形式消滅した。

保存車

マニ30形存在秘匿にまつわる逸話

本形式の存在は新製当初から秘匿されていたわけではない。次の書籍および会誌には本形式が掲載されている[11]

ところがブルーリボン賞のノミネート直後の1978年(昭和53年)になると国鉄は『客車形式図』(国鉄発行)から本形式の掲載をしなくなった。

1979年(昭和54年)に刊行された『コロタン文庫51 鉄道時刻表全百科』(鉄道友の会東京支部編。小学館)では、郵政省所有の郵便車が存在することに関連して、簡単に「日本銀行所有の現金輸送車が存在する」事実がある旨が紹介されるにとどまり、具体的な形式名や写真の記述はなかった。

Rail Magazine」が本形式の模型製作記事を図面付きで掲載したところ、日本銀行の関係者に読者がおり、名取紀之編集長が日本銀行から呼び出され事情聴取を受けたことがある[12]。同社が毎年発行している「JR車両ハンドブック」にも、「日本銀行の所有車でありJRの車両ではない」として掲載されなかった[12]。『とれいん』の編集長も国鉄関係者から本形式について掲載しないように要請されたという。国鉄部内でも本形式の運行について知っている職員は、ごく少数であった[13]

鉄道ジャーナル」では、1978年(昭和53年)7月号巻末の編集後記に「マニ30は(略)“現ナマ輸送車”」との記述がある。同年8月号の「列車追跡」では急行荷物列車が取り上げられ、取材時の編成にマニ30 2001が組み込まれていたが、こちらには現金輸送車との記述はない。

鉄道ファン」1982年(昭和57年)10月号の荷物列車の特集記事中の写真に本形式が写りこんでいた。ただし、当時現役で活躍していた荷物車全形式を紹介している記事中に本形式に関する記述は一切なかった。

1990年代に全盛期だったパソコン通信NIFTY-Serve内に開設されていた「鉄道フォーラム」においても、マニ30の存在について触れる事は会員規約違反とされていた。

脚注

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注釈

  1. ^ 意味合いとしては、自動車の現金輸送車警備会社が所有)の鉄道版といえる。
  2. ^ 新製時の形式図では台枠はマニ32形(35以降)に採用されたUF116とされているが、帝車製のマニ34 4 - 6のうち2両については戦災車の台枠(UF30)を転用した可能性が指摘されている。また台車はTR40形とされているが、当時はころ軸受けの信頼性が低かったため郵便車に準じて平軸受けのTR23Aを採用している[4]
  3. ^ 出発時は日本銀行の別の担当者が荷物室の鍵を持ち帰り、到着駅にて支店の担当者が鍵を持参して荷物室を開けた。
  4. ^ 貨物列車が運転されていない線区では、当車両だけを機関車で牽引する臨時貨物列車のダイヤが設定された。

出典

  1. ^ 小樽百景~現金輸送車「マニ30形2012号」|キタル、オタル。|小樽を楽しむ時間を育てるための超発信型小樽ファンサイト”. 2021年9月4日閲覧。
  2. ^ rml208 2016, p. 11.
  3. ^ 小川 2010, pp. 12–13.
  4. ^ rml208 2016, pp. 21–22.
  5. ^ rml208 2016, p. 38.
  6. ^ rml208 2016, pp. 13–15.
  7. ^ rml208 2016, p. 5.
  8. ^ rml208 2016, p. 6.
  9. ^ rml208 2016, p. 47.
  10. ^ a b rml208 2016, p. 43
  11. ^ 小川 2010, pp. 13–14.
  12. ^ a b rml208 2016, p. 33, 名取紀之「悔恨のマニ30」
  13. ^ 小川 2010, pp. 14–15.






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