反磁性 超伝導体の完全反磁性

反磁性

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/30 18:44 UTC 版)

超伝導体の完全反磁性

例外的に強い反磁性を持つのが超伝導体で(磁化率が χv = −1)、その性質は完全反磁性マイスナー効果)と呼ばれ、磁束が物質内部へ侵入できない。したがって、外部磁場を与えると、内部で打ち消され、強い反発力を生ずる(磁石の上に置くと磁気浮上する)。

超伝導体は第一種超伝導体と第二種超伝導体に分類される。

  • 第一種超伝導体の内部には完全に磁束が侵入できない。
  • 第二種超伝導体は、単一磁束が侵入し貫通する。第一種超伝導体と同様に強力な磁石の上に置くと浮上し、更に第二種超伝導体のピン止め効果によって静止力が生じる。

反磁性の原因

反磁性の起源を古典的に説明すると、物質に磁場を加えたとき、その電磁誘導によって物質中の荷電粒子(実質的には電子)に円運動が誘発され、一種の永久電流が流れ続ける。この電流は、磁場が弱くなる方向へ磁場と磁場勾配に比例した力(ローレンツ力)を生じるとともに、レンツの法則に従い外部の磁場を打ち消す方向に磁場を生み出す。この円運動の挙動はジョゼフ・ラーモアによって1895年に研究され、さらにポール・ランジュバンによって定式化されたので、これをラーモア反磁性、もしくはランジュバンの反磁性という。これは誰もまだ原子がどのように構成されているかを知らない時代であったにもかかわらず、反磁性の性質や発生する力の大きさを良く説明し、実験との一致はすばらしいものがあった。

この古典的な説明は、すべての導体が実質的に反磁性を示すことからも推測できる。変化する磁場に置かれた導体には、電磁誘導によって自由電子に円運動が起こり(誘導電流)、この電流によって磁場の変化とは反対向きの誘導磁場が生じるとともに、磁場と磁場勾配に比例した力(ローレンツ力)を生じ、導体の運動や磁場の変化に抵抗する力になる。この現象は物質の反磁性と良く似ている。

ラーモアらの理論から計算すれば、すべての物質は電子を持つのでその磁性には多かれ少なかれ反磁性の寄与があり、ほとんどのものは磁化率にして10-5程度のオーダーしかない極めて小さいものであることがわかる。

このように、反磁性は古典的な範囲で説明されたかのように思われていたが、ニールス・ボーアは古典力学で計算すると熱平衡の状態で磁性がゼロになることを1911年に見いだした(ボーア=ファン・リューエンの定理)。このため、反磁性の説明は量子力学に取って代わられたが、量子力学から厳密に導かれた結果はラーモアらの理論と正確に一致していた。量子力学によれば、不対電子が存在しない物質は弱い反磁性となり、不対電子によるスピンが存在する物質は常磁性強磁性などの性質が顕著になる。

なお、金属中の自由電子については量子論的な取り扱いによる定式化がレフ・ランダウによってなされている。そのため、金属の電子による反磁性は、ランダウ反磁性とよばれている。

反磁性磁場配向

ベンゼン環の面に対して垂直に磁場をかけると、レンツの法則によって磁場を打ち消そうとベンゼン環に沿って電流が流れる。これにより、ベンゼン環などを含む有機物では、他の物質よりも大きな反磁性が発生することがある。

更にグラファイトのようなベンゼン環の集まりの物体には、磁場に対してねじれ力が働く。これが反磁性磁場配向である。実際には、反磁性磁場配向を観測するには、強力な磁場が必要である。

参考文献


  1. ^ Properties of diamagnetic fluid in high gradient magnetic fields, S. Ueno and M. Iwasaka, J. Appl. Phys. 74 (1994) 7177 doi:10.1063/1.356686
  2. ^ モーゼ効果及び逆モーゼ効果の観測とその機構, 廣田 憲之, 日本物理学会講演概要集 50 (3) 192
  3. ^ Nave, Carl L.. “Magnetic Properties of Solids”. HyperPhysics. 2008年11月9日閲覧。


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