単段式宇宙輸送機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/05 14:23 UTC 版)
開発状況
かつて、アメリカ航空宇宙局 (NASA) にはX-30、X-33の2つのSSTO開発計画が存在した。このうちX-30はスペースシャトルの後継のみならず大陸間輸送機も視野に入れたスペースプレーンであったが、要素技術の開発だけで断念した。X-33はロケットエンジンによる垂直離陸、水平着陸式の実験機であったが、開発中に判明した諸問題を解決する目処が立たず、機体製造途中にキャンセルされた。アメリカ以外ではSSTOの概念設計や要素技術研究は行われているものの、実験機の開発は行われていない。このため2009年現在、機体全体の開発は行われていない。
スペースプレーンの要素技術はアメリカ、日本、ヨーロッパで研究されており、将来の実用開発に向けて努力が続いているが、実用機の開発に着手する目処は立っていない。開発費や需要を考えると国際共同開発が想定されるが、それに向けた具体的な動きもなく、研究機関同士の情報交換や共同実験に留まっている。
一方、ロケットエンジンによる方式は比較的開発が容易と考えられている。アメリカでは民間資金によりSSTOを開発する構想も発表されている。英国Reaction Engines社ではハイブリッドエンジンによるスカイロンが構想されている。
日本
JAXA
日本では2009年現在、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が宇宙開発を一元的に担っているが、その統合母体となった3機関では、それぞれSSTOの開発構想を持っていた。
まず航空宇宙技術研究所 (NAL) は、スペースプレーンの開発を掲げ、スクラムジェットエンジンの研究に取り組んできた。この研究はそのままJAXAにも引き継がれている。2009年現在は、前述した複数のエンジンを搭載しなければならない問題に対処するため、スクラムジェットエンジンとロケットエンジンの機能を単一のエンジンで持つ、複合サイクルエンジンを研究している。
宇宙開発事業団 (NASDA) は、ロケットエンジンで垂直離陸し、水平着陸するロケットプレーンと称する構想を発表したことがある。この機体は開発構想というよりロケット式SSTOの開発に必要な技術を整理するためのスタディーと呼ぶべきものであった。この結果、ロケット式SSTOであっても、当時の技術では機体構造の重量超過とエンジン性能の不足により衛星軌道に到達できないことが判明した。
一方宇宙科学研究所 (ISAS) では、まずHIMESと呼ばれる水平着陸型SSTOの研究が行われた。これは、離陸に際してリニアモーターを使用したカタパルトや、気球による空中打ち上げを利用することで本体の性能を補おうとしたものであったが、実現しなかった。
ISASではその後、HIMESのエンジン技術を引き継いで、ATREXの研究が続けられている。
JAXAでは、ATREXの実用化対象としてTSTOの構想を示している(二段式宇宙輸送機#JAXA)。
垂直離着陸SSTOの要素技術としては、ISASがRVTを開発している。RVTは垂直離着陸SSTOの要素技術である、ロケットエンジンによる垂直離着陸と、そのような機体を繰り返し飛行させ、故障があっても飛行を中止して安全に帰還できる技術の開発を目的としている。本計画は統合後も継続されており、当面の目標として、微少重力実験や高層大気の観測を目的とした小型ロケットを代替する、低コストの準軌道機実用化を掲げている。
- ^ “宇宙飛行に革命を! NASAが「回転デトネーション・エンジン」の試験に成功”. TECH+(テックプラス) (2023年2月4日). 2023年2月6日閲覧。
- ^ “JAXA小惑星探査機「はやぶさ」物語|ミッションカレンダー”. JAXA. 2017年7月2日閲覧。
- 単段式宇宙輸送機のページへのリンク