久遠寺 旧末寺

久遠寺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 22:25 UTC 版)

旧末寺

日蓮宗では昭和16年(1941年)に本末を解体したため、現在では、旧本山、旧末寺と呼びならわしている。久遠寺は900以上の末寺を有したという。

文化財

夏景山水図

国宝

  • 絹本著色夏景山水図 昭和30年6月22日国宝指定
唐物を積極的に輸入した室町幕府の三代将軍足利義満の収集した東山御物のひとつである山水図京都金地院に所蔵されている秋景山水図、冬景山水図とともに国宝指定。東山御物は幕府の財政窮乏に伴い散逸したものが多いが、当品も経緯は不詳であるが、寛文13年(1673)に遠江国浜松藩主の太田資宗から寄進されている。現在は東京上野の東京国立博物館に寄託されている。
縦118.5cm、横52.8cm。制作年代は中国、12世紀の北宋末代、あるいは対角線構図であることから13世紀の南宋代とも考えられている。画面中央に雄大なの木が描かれ、下辺の左隅には山間の小道にを持つ高士が描かれている。高士の衣冠が風にたなびいていることから、夕立を描いているものとも考えられている。金地院本の二図と寸法や絹質が共通し、上下にはそれぞれ「仲明珍玩」「盧氏家蔵」の鑑蔵印があり、将軍義満の「天山」重廊朱文方印が見られる。また、画風にも共通点が認められることから、失われた春景山水図とともに四季の風景を描く一連の山水画四幅のうちのひとつと考えられている。
作者を示す落款や印章がなく、『御物御画目録』には北宋皇帝徽宗の作とされているが、久遠寺本には伝記不詳の画家「胡直夫」の作とする伝承がある。

重要文化財

  • 絹本著色釈迦八相図 - 平成3年6月21日指定
鎌倉時代に盛んに制作された釈迦八相図のひとつ。根津美術館所蔵の1幅と一連の仏伝図であると考えられており、久遠寺本は3幅が現存している。
  • 宋版礼記正義 2冊 - 昭和15年5月3日指定
北宋の頃に成立した五経のひとつである「礼記」の注釈書である『礼記正義』の写本。上下二巻(上巻は原本の63~66巻、下巻は67~70巻を収録)。で、日本国内では国宝の足利文庫本(国宝)が知られているが、身延文庫本は昭和3年に徳富蘇峰(猪一郎)により「本朝文粋」などとともに発見された。刊記欄外部分には金沢文庫の黒印があり、金沢文庫旧蔵本であったと考えられている。
  • 本朝文粋(巻第一欠)13巻 - 昭和31年6月28日指定
平安時代の漢詩文集である『本朝文粋』の写本で、全14巻のうち巻第一が欠巻。
巻第十三に建治二年(1276年)の書写奥書があり、その他の巻もこの前後に書写されたものと推定される。各巻の本奥書によれば、身延本は鎌倉時代の建治年間に金沢文庫所蔵であった「文永写本」を基に書写されたという。これは北条時宗所持本で清原教隆の加点がある「相州御本」の写本で、身延本は第三写本にあたる。発起者は鎌倉時代に甲斐国守護であったと考えられている二階堂氏と推定されている。全巻に墨訓や朱点があり、清原隆教の加点した相州御本の原型を伝える写本として注目されている。

登録有形文化財

以下の建造物19件は、2018年5月10日に国の登録有形文化財に登録された[2][3]

  • 祖師堂及び御供所(明治14年(1881年)建、1991年・1994年改修)
  • 御真骨堂拝殿(明治14年(1881年)建、2001年改修)
  • 仏殿納牌堂(1931年建、2013年改修)
  • 大客殿(明治19年(1886年)建、明治後期・1971年改修)
  • 法喜堂(明治16年(1883年)建、1971年・2011年改修)
  • 旧書院(明治9年(1876年)建、2011年改修)
  • 新書院(1931年)
  • 大鐘楼(明治15年(1882年)建、1939年改修)
  • 時鐘楼(1952年建、2013年改修)
  • 甘露門及び門番所(明治元年(1868年)建、1941年移築)
  • 太子堂(大正元年(1912年))
  • 三門(明治40年(1907年))
  • 本地堂(嘉永5年(1852年)建、2012年改修)
  • 祖廟塔(1942年)
  • 常唱殿(1958年)
  • 三昧堂(文政5年(1823年)建、1941年移築)
  • 水行堂(1952年)
  • 瑞門(1953年)
  • 思親閣仁王門(1935年)

以下の建造物8件は、2020年8月17日に国の登録有形文化財に登録された[4][5]

  • 御真骨堂 - 明治14年(1881年)
  • 祖師堂前香炉屋 - 明治12年(1879年)
  • 祖廟拝殿 - 昭和17年(1942年)
  • 祖廟域水屋 - 昭和19年(1944年)
  • 莚師堂 - 明治9年(1876年)建、平成3年(1991年)改修
  • 奥之院思親閣鐘堂 - 昭和10年(年)
  • 発軫閣(ほっちんかく) - 元文4年(1739年)建、昭和55年(1980年)改修
  • 総門茶屋 - 明治27年(1894年)

県指定文化財

  • 銅鐘 - 昭和34年2月9日指定
    上帯上部が欠損している中世梵鐘。火災跡があり、銘文によれば旧巨摩郡大井庄最勝寺所蔵の梵鐘で、伝来した経緯には諸説ある。『甲斐国志』では武田征伐の際に織田氏により陣鐘として徴発されたとしており、ほかに水害による流出や最勝寺の経営事情から売却されたとする説や、庄司により寄進されたとする説などがある。佐藤八郎は諸説を検討し、陣鐘として徴発された後に河内領穴山氏により寄進されたとする見解を示している。
  • 銅鐘(朝鮮鐘) - 昭和35年11月7日指定
    県内に残存する唯一の朝鮮鐘
  • 刺繍十六羅漢像 - 昭和58年3月10日指定
  • 紙本墨書弘決外典鈔 - 昭和35年11月7日指定
  • 版本法華経 7巻 - 昭和48年7月12日指定
    提婆達多品を欠くものの明代翻刻本の舶載品。墨書折本。各巻は桐箱に収められ、奥書によれば戦国時代の天文19年(1550年)に武田晴信(信玄)により奉納されたもの。天文年間は信濃侵攻を本格化させている時期でさかんに諸宗寺社への納経が行われており、武田家と日蓮宗寺院の関係を示す資料にもなっている。

町指定文化財

  • 釈迦如来立像 -昭和44年9月12日指定。本師堂奥殿安置。鎌倉時代の像。(身延町史)
  • 丈六釈迦像 -昭和44年9月12日指定。丈六堂安置。江戸寛永年間、京都鳴滝三宝寺の中正院日護の作。
  • 三光堂金銅釈迦如来坐像 -昭和41年6月1日指定。露仏。江戸時代に京極高勝から寄進されたもの。
  • 三門二王尊像 - 昭和44年9月12日指定。伝・運慶もしくは定朝作とされるがネット上では運慶作とされることが多い。おそらくは運慶の真作ではなく迫力のある像であるがゆえに伝運慶作を称したと考えられる。六浦平次郎入道日荷が一夜にして鎌倉称名寺から運んできたと伝える鎌倉時代の名作。(以上いずれも身延町史による)

主な行事

  • 1月1日午前4時 - 新年祝祷会
  • 1月1日~3日 - 新春特別加持祈祷
  • 1月13日午前10時 - 御頭講会・曳馬式 - 祖師堂
  • 2月3日午後1時 - 節分会
  • 2月15日午後1時 - 釈尊涅槃会 - 本堂
  • 2月16日午後1時 - 日蓮聖人降誕会 - 祖師堂
  • 3月彼岸中日午後1時 - 春季彼岸施餓鬼法要
  • 4月6日~8日午後1時 - 釈尊御降誕会
  • 4月28日午後1時 - 立教開宗会
  • 5月3日~5日午後1時 - 千部会
  • 6月1日午後6時 - 祖師堂御更衣式(夏衣)
  • 6月15日~17日午後1時 - 身延山開闢会
  • 6月中旬日曜日午前9時 - 御入山行列
  • 7月16日午後1時 - 盂蘭盆施餓鬼供養
  • 8月18日午後1時 - 英霊施餓鬼供養
  • 9月12日午後1時 - 龍口法難会
  • 9月彼岸中日午後1時 - 秋季彼岸施餓鬼法要
  • 10月1日午後6時 - 祖師堂御更衣式(冬衣)
  • 10月11日~13日午後1時 - 宗祖御会式大法要
  • 10月12日午後5時 - 万灯行列
  • 10月25日午後1時 - 身延山開基法寂院日圓上人報恩会
  • 11月中旬の日曜日 - 七五三祝祷会

注釈

  1. ^ ただしいずれかの日蓮宗寺院に弟子入りした上で、師僧と身元保証人が必要。
  2. ^ その場合は実修生期間内は沙弥の扱いになり、身延山内および寄宿生活中に教師袈裟をつけることはできない。

出典

  1. ^ 甲斐保勝協会編『甲斐勝景写真帳』昭和初期の「山門」昭和7年(1932年)発行、国立国会図書館蔵書、平成29年10月21日閲覧。
  2. ^ 平成30年5月10日文部科学省告示75号
  3. ^ 登録有形文化財(建造物)の登録について(文化庁サイト、2018年3月9日発表)
  4. ^ 令和2年8月17日文部科学省告示第106号
  5. ^ 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)について”. 文化庁. 2020年3月20日閲覧。
  6. ^ 身延山久遠寺オフィシャルサイト 身延山僧道実修生のご案内 - 2020年4月26日閲覧






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