ランタン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/20 09:18 UTC 版)
用途
La2O3 がセラミックコンデンサや、光学レンズの材料に使われる[17]。また、LaNi5 は水素吸蔵合金として注目されている。炭酸ランタンが腎不全患者のリン吸収阻害薬(腸管内でリン化合物を形成し吸収を阻害する)として使用されている。
ヨハネス・ベドノルツとカール・アレクサンダー・ミュラーが最初に発見(発表)した高温超伝導物質(この時点では転移温度は、それほど高温ではなかった)がランタンを含む銅酸化物セラミックスだった。
ランタンの歴史的な最初の用途は、ガスランタンマントルである。カール・ヴェルスバッハは酸化ランタンと酸化ジルコニウムの混合物を使用し、これをActinophorと呼び1886年に特許を取得した。元々のマントルは緑色の光を発しあまり成功せず、1887年にAtzgersdorfに工場を設立した彼の最初の会社は1889年に失敗した[36]。
ランタンの現代的な用途は以下。
- ニッケル・水素充電池の負極材として使用される材料の1つはLa(Ni3.6Mn0.4Al0.3Co0.7)である。他のランタノイドを除去するためのコストが高いため、純粋なランタンの代わりにランタンを50%以上含むミッシュメタルが使用されている。化合物はAB5タイプの金属間化合物である[37][38]。
- 2017年頃までの一部のハイブリッドカー、特に日本車はニッケル水素電池を使用しているため[39][40]、ハイブリッドカーの生産には大量のランタンが必要となる。トヨタ・プリウスの典型的なハイブリッド自動車用バッテリーには10 - 15キログラム (22 - 33 lb)のランタンが必要である。技術者が燃料効率を向上させるために技術を推進すると、1台の自動車につき2倍の量のランタンが必要になる可能性がある[41][42]。
- 水素スポンジ合金はランタンを含むことができる。これらの合金は可逆的な吸着過程で水素気体を自身の体積の400倍まで貯蔵することができる。熱エネルギーはこれを行うたびに放出される。それゆえ、これらの合金は省エネルギーシステムの可能性を持っている[11][43]。
- ミッシュメタルは軽い火打ち石で使われる発火合金で、25%から45%のランタンを含む[44]。
- 酸化ランタンやホウ化ランタンは、電子の放射率が高い熱陰極材料として電子真空管に使用されている。LaB6の結晶は電子顕微鏡やホールスラスタ用の高輝度、長寿命、熱電子放出源として使用されている[45]。
- 三フッ化ランタン(LaF3)はZBLANと呼ばれる重フッ化ガラスの必須成分である。このガラスは赤外域の透過率に優れているため、光ファイバ通信システムに使用されている[46]。
- セリウムをドープした臭化ランタンや塩化ランタンは、最近の無機シンチレータであり、高い光収率、最高のエネルギー分解能、速い応答性を兼ね備えている。この高い収率は優れたエネルギー分解能に変換され、さらに、光出力は非常に安定しており、非常に広い温度範囲で非常に高いため、高温で使うのには特に魅力的である。これらのシンチレータは、中性子やガンマ線の検出器ですでに広く商業的に使用されている[47]。
- 炭素アーク灯は光の質を向上させるために希土類元素の混合物を使用する[17]。この用途、特にスタジオの照明用や投影用の映画産業によるものは、炭素アーク灯が段階的に廃止されるまで、生産される希土類化合物の約25%を消費していた[11][48]。
- 酸化ランタン(La2O3)は、ガラスの耐アルカリ性を向上させ、希土類ガラスの高屈折率や低分散のため、赤外線吸収ガラスなどの特殊光学ガラスやカメラ、望遠鏡レンズの製造に使われている[11][17]。また、酸化ランタンは窒化ケイ素や二ホウ化ジルコニウムの液相焼結時の粒成長添加剤として使われている[49]。
- 鋼に添加される少量のランタンは、鋼の展性、耐衝撃性、延性を向上させる。その一方でモリブデンにランタンを添加するとその硬度と温度変化への感度を低下させる[11]。
- 藻類のえさとなるリン酸塩を除去するために、少量のランタンが多くのプール製品に含まれている[50]。
- タングステンへの酸化ランタン添加剤は放射性トリウムの代わりとして、TIG溶接の電極に使用されている[51][52]。
- ランタンなど希土類元素の各種化合物(酸化物、塩化物など)は、石油分解助触媒など様々な触媒の成分である[53]。
- ランタン・バリウム放射年代測定は、岩石や鉱石の年代を推定するために使用されているが、この技術の普及度は限られている[54]。
- 炭酸ランタンは、末期腎疾患に見られる高リン血症の場合に過剰なリン酸塩を吸収する薬(Fosrenol, シャイアー (企業))として承認されている[55]。
- フッ化ランタンは蛍光体ランプのコーティングに使用されている。また、フッ化ユーロピウムと混合して、フッ化物イオン選択電極の結晶膜にも使われている[7]。
- ホースラディッシュペルオキシダーゼと同様、ランタンは分子生物学において電子密度の高いトレーサーとして使用されている[56]。
- ランタン修飾ベントナイト(またはphoslock)は、湖沼処理において水からリン酸塩を除去するために使用される[57]。
ランタンと同じ種類の言葉
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