ミオパチー 筋肉の萎縮

ミオパチー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/13 13:16 UTC 版)

筋肉の萎縮

筋肉を思い通りに動かすには、筋肉が正常に機能するとともに、筋肉に動かす指令を伝える神経が正常に機能しなければならない。したがって、どちらか一方にでも問題があれば、結果として筋肉は思い通りには動かせなくなってしまう。筋肉は絶えずある程度の負荷を与えなければ、萎縮していく運命にある。健常人は特に運動をしなくても、日常生活をしているだけで筋肉には最低限の負荷が与えられるため、問題となることはほとんどない。すなわち、普通に生活をしているだけでも、無意識のうちにかなりの筋力を使っているのである。ところが、筋原性であれ、神経原性であれ何らかの原因で筋肉に異常を来たし筋肉の動きに制約が生じてしまうと、筋肉は徐々に萎縮を始め、さらに筋力が低下してしまうという悪循環に陥ってしまう。

遺伝子疾患としての側面

ミオパチーに分類される疾患の多くは遺伝子疾患である。骨格筋は筋細胞からなる筋繊維が束となっており、筋肉を構成する細胞と種々のタンパク質が、複雑かつ精巧なネットワーク[要曖昧さ回避]を形成して筋肉という組織を形づくり機能させている。遺伝子塩基配列はタンパク質のアミノ酸配列を指定する設計図であり、遺伝子に異常があれば異常なタンパク質が生成される結果となる。この異常なタンパク質で構成された筋肉は何らかの欠陥をかかえており、どの遺伝子(タンパク質)にどんな異常があるかによっても様相は異なるが、時には致命的となる場合もある。上述した筋ジストロフィーにもいくつかのタイプが存在するが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーは骨格筋を構成するジストロフィンという巨大なタンパク質をコードするdystrophin遺伝子の変異によるものであり、変異の様式により、重度なデュシェンヌ型と軽度なベッカー型に分類されている。筋肉を構成するタンパク質には巨大なものが多く、同じ遺伝子内の変異でも、変異の様式により症状に違いが生じ得る。また、代謝に重要なミトコンドリアもDNA(遺伝子)を保持しているが、ミトコンドリアDNAに変異があれば、筋肉などのエネルギー消費の激しい組織に症状が現れることが多い。

治療法

ミオパチーは種類が多く原因も多岐にわたっている。したがって、治療法もそれぞれ異なってくるが、根本的な治療法がないものも多い。近年、筋ジストロフィーをはじめとする筋疾患のモデル動物の作製、治療法の開発が積極的に行われつつある。また、iPS細胞の開発は再生医療に大きなインパクトを与えたが、まだまだ発展途上の段階であり、本格的に臨床応用されるまでにはかなりの時間を要するものと考えられている。


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