ミオパチー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/13 13:16 UTC 版)
ミオパチーの臨床像
筋力低下のパターンには間欠性と持続性の2種類がある。間欠性筋力低下では筋無力症、周期性四肢麻痺、高カリウム血症、先天性パラミオトニア、解糖系の代謝エネルギー欠乏(糖原病の一部)、脂肪酸代謝異常(カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損)、ある種のミトコンドリアミオパチーで認められる。筋型糖原病である糖原病V型(McArdle病)、VII型(Tarui病)では労作時筋痛、筋硬直を示し高CK血症とミオグロビン尿を認めるのが特徴である。
筋ジストロフィの各病型、多発筋炎および皮膚筋炎のほとんど筋障害では持続性の筋力低下を示す。通常は腱反射や感覚は保たれる。近位筋が遠位筋よりも強く対称性に障害され、顔面筋は障害されない肢体(limb-girdle)型の筋力低下を起こすことが多い。これ以外の筋力低下の分布を示す場合は鑑別診断はもっと絞り込むことができる[1]。顔面の筋力低下(閉眼困難、笑顔がつくれない)と翼状肩甲は顔面肩甲上腕型ジストロフィーに特徴的な所見である。顔面の筋力低下や把握性ミオトニアを伴う遠位筋優位の筋力低下は筋強直性ジストロフィーI型に特徴的な所見である。眼瞼下垂や外眼筋の筋力低下を起こすような脳神経障害をみた場合、脳神経接合部疾患、眼咽頭筋ジストロフィー、ミトコンドリアミオパチー、先天性ミオパチーなどを考慮する。封入体筋炎では手首と手指の屈曲を行う前腕屈筋群や大腿四頭筋の萎縮と筋力低下がしばしば非対称性に起こる。四肢遠位筋優位の筋力低下では遠位型ミオパチーが知られている。頸部伸筋の筋力低下を示唆する首下がり症候群(drop head syndrome)は頻度は少ないが診断学的に重要な徴候である。この分布と関連した最も重要な神経筋疾患には重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、遅発性ネマリンミオパチー、副甲状腺機能亢進症、限局性筋炎、ある種の封入体筋炎である。筋力低下の分布に関しては機能障害を疑うエピソードから調べていくことが重要である。
機能障害 | 筋力低下 |
---|---|
眼を強く閉じることができない | 上顔面筋 |
唇を尖らすことができない | 下顔面筋 |
腹臥位で頭を持ち上げることができない | 頸部伸筋 |
仰臥位で頭を持ち上げることができない | 頸部屈筋 |
腕を頭上に持ち上げることができない | 上肢近位筋(肩甲骨固定筋のみの場合もある) |
膝を過伸展(反跳膝)させずに歩くことができない | 膝の伸筋 |
踵を床につけて歩くことができない(つま先歩行) | アキレス腱の短縮 |
足を持ち上げて歩くことができない(鶏歩または下垂足) | 下腿の前区間 |
よたつかずに歩くことができない(動揺性歩行) | 殿筋 |
下肢に手をあて、よじ登ろうとしないと床から起き上がれない(Gowers徴候) | 殿筋、大腿筋、体幹筋 |
腕を使わないと椅子から立ち上がれない | 殿筋 |
- ^ BMJ. 1998 317 991-995. PMID 9765171
- ^ 医学生・研修医のための脳神経内科 改訂4版 p.400 ISBN 9784498328150
- ^ Neurology. 2006 May 23;66(10):1585-7. PMID 16717227
- ^ Neurology. 2003 Aug 12;61(3):316-21. PMID 12913190
- ^ JAMA Neurol. 2018 Dec 1;75(12):1528-1537. PMID 30208379
- ^ Curr Opin Neurol. 2019 Oct;32(5):704-714. PMID 31369423
- ^ Neurology. 2018 Feb 6;90(6):e507-e517. PMID 29330311
- ^ Ann Rheum Dis. 2019 Jan;78(1):131-139. PMID 30309969
- ^ Ann Rheum Dis. 2006 Dec;65(12):1635-8. PMID 16679430
- ^ Arthritis Rheum. 2004 Jan;50(1):209-15. PMID 14730618
- ^ Semin Arthritis Rheum. 2019 Dec;49(3):420-429. PMID 31109639
- ^ Mayo Clin Proc. 2017 May;92(5):826-837. PMID 28473041
- ^ 封入体筋炎 診療の手引き
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