マンガン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/20 08:51 UTC 版)
結晶構造
マンガンは温度により4つの相を持つ[5]。
- αマンガン
- 742 °C以下で安定。単位胞あたり58個の原子を含む複雑な立方晶(体心立方格子類似構造)。原子の位置により4種類の異なるスピンを持ち、全体としては磁気モーメントを持たない、広義の反強磁性体であると考えられている(詳細はいまだ明らかになっていない)。
- βマンガン
- 742–1095 °Cで安定。単位胞あたり20個の原子を含む複雑な立方晶。常磁性体である。
- γマンガン
- 1095–1134 °Cで安定。面心立方構造。反強磁性体である。
- δマンガン
- 1134–1245 °C(融点)で安定。体心立方構造。常磁性体である。
おもな化合物
- 過マンガン酸カリウム(KMnO4) - 酸化剤
- 二酸化マンガン(MnO2) - 触媒
同位体
人体への影響
摂取基準
属性 | 目安量(AI) (mg/日) |
耐容上限量(UL) (mg/日) |
---|---|---|
男性(18歳以上) | 4.0 | 11 |
女性(18歳以上) | 3.5 |
属性 | 目安量(AI) (mg/日) |
耐容上限量(UL) (mg/日) |
NOAEL mg/日 |
---|---|---|---|
男性(19歳以上) | 2.3 | 11 | |
女性(19歳以上) | 1.8 | ||
女性(妊娠) | 2.0 | ||
女性(授乳) | 2.6 |
生理作用
人体にとっての必須元素。骨の形成や代謝に関係し、消化などを助ける働きもある。一部では活性酸素対策としての必須ミネラルに挙げるものもいる。
不足すると成長異常、平衡感覚異常、疲れやすくなる、糖尿病(インスリンの合成能力が低下するため)、骨の異常(脆くなるなど)、傷が治りにくくなる、生殖能力の低下や生殖腺機能障害などが起こる。しかしマンガンは川など天然の水などに含まれ、上水道水としては多すぎてむしろ除去する場合があるなど、普通に生活していてマンガンが不足することはまずない。
中毒
マンガン鉱石精錬所作業員・れんが職人・鋼管製造業者など、過剰に曝露されるとマンガン中毒を起こす。
頭痛・関節痛・易刺激性・眠気などを起こし、やがて情動不安定・錯乱に至る。大脳基底核や錐体路も障害し、パーキンソン症候群・ジストニア・平衡覚障害を引き起こすほか、無関心・抑うつなどの精神症状も報告されている。マンガン曝露から離れれば、3–4か月で症状は消える。
酸素欠乏
マンガンは脱酸素剤として使用されるように強い酸素吸着作用があるため、十分に酸化されていない天然マンガンが多い地層の洞窟や井戸などでは、貧酸素化した地下水を経由して内部の空気の酸素が欠乏し、そこへ十分な換気を行わず奥へ入った場合は酸素欠乏症になり最悪の場合死亡するおそれがある。また肥料の撒きすぎによる土壌の酸化などで土中のマンガンが還元されたり、湖などの水底に溜まったマンガンが貧酸素水などで還元され、結果としてマンガンが酸欠状態を保持したり流れに乗って移動させてしまう現象などもある。
出典
- ^ a b c 新村出編『広辞苑 第六版』岩波書店、2008年、2672頁。
- ^ 寄与者:池田黎太郎, 市毛みゆき, 杉田克生, 『元素名語源集』 2014年, 千葉大学教育学部養護教育講座, doi:10.20776/B9784903328164, ISBN 9784903328164
- ^ 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1998年、139~140頁。ISBN 4-06-257192-7。
- ^ 『地理 統計要覧 2014年版』二宮書店、2014年、96頁。ISBN 978-4-8176-0382-1。
- ^ 太田, 恵造『磁気工学の基礎 I』共立出版、1973年。ISBN 4-320-00200-8。
- ^ 日本人の食事摂取基準(2015年版)
- ^ Dietary Reference Intakes for Vitamin A, Vitamin K, Arsenic, Boron, Chromium, Copper, Iodine, Iron, Manganese, Molybdenum, Nickel, Silicon, Vanadium, and Zinc.. Institute of Medicine (US) Panel on Micronutrients.Washington (DC): National Academies Press (US). (2001)
マンガンと同じ種類の言葉
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