マンガン 名称

マンガン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/20 08:51 UTC 版)

名称

ギリシャのマグネシア地方で発見された Mágnes の石に由来する[2]ラテン語で「磁石」を意味するmagnesにちなむ[1]

日本では満俺とも書く[1]

性質

銀白色の金属で、比重は7.2(体心立方類似構造)、融点は1246 °C。マンガン族元素に属する遷移元素。温度によりいくつかの同素体が存在し、常温常圧で安定な構造は立方晶系である。これは硬く非常に脆い。空気中では酸化被膜を生じて内部が保護され、赤みがかった灰白色となる。酸(希酸)には易溶であり、淡桃色の2価のマンガンイオン Mn2+(aq) を生成する。

比較的反応性の高い金属で粉末状にすると空気中の酸素、水などとも反応する。化合物は2–7価までの原子価を取り得る(+2、+3、+4、+6、+7 が安定)。地球上には比較的豊富に存在するが、単体では産出しない。二酸化マンガン触媒とする過酸化水素酸素への分解反応は、日本の義務教育課程で触媒の実験の題材とされるため非常に有名である。

単体マンガン自体は常磁性であるが、合金にはホイスラー合金など強磁性を示すものがあり、さらに化合物にはさまざまな磁気的性質を示すものがある。ビスマスとの合金は強磁性体として知られるほか、フェライトに添加することでさまざまな特性を付加する。

歴史

スウェーデンカール・ヴィルヘルム・シェーレ(C. W. Scheele)が1774年に発見、同年ヨハン・ゴットリーブ・ガーン(J. G. Gahn)が単体を単離した[3]

用途

一番有名な用途は、二酸化マンガンがマンガン乾電池アルカリ乾電池の正極に使われる。また、リチウム電池の正極にも用いられ、リチウムイオン二次電池の正極材料として研究されている。また、磁性材料として、マンガン、亜鉛を含む金属酸化物であるMnZnフェライトインダクタトランスのコア材料として用いられている。

マンガン単体が金属材料として用いられることはほとんどなく、合金として、マンガン鋼の原料や、フェロマンガンとして鋼材の脱酸素剤・脱硫黄剤などに使用される。鉄鋼用途で耐磨耗性、耐食性、靭性を付加するために、マンガン合金(フェロマンガン)や金属マンガンとしてマンガン分が添加される。

また、生物の必須元素としても知られており、硫酸マンガンなどの化合物は肥料としても用いられる。

産出

マンガンは単体としては産出せず、軟マンガン鉱(MnO2)、菱マンガン鉱(MnCO3)などとして産出する。

戦前では日本国内でも製鉄用に採掘され、第二次世界大戦中にはおもに乾電池用としてマンガンを採掘する鉱山が多数開発された。とくに後者は日本各地で見られ、京都府中部(丹波地方)を中心に近畿地方に零細鉱山が集中して存在していた。しかし、1950年代以降の鉱物資源の輸入自由化によって激しい競争に晒され、すべての鉱山が1970年代までに閉山に追い込まれた。前者は東日本に多く(北海道上国鉱山、同大江鉱山など)、規模が比較的大きいことから1980年代まで存続したが、現在では岩手県の野田玉川鉱山において宝飾品材料としてバラ輝石が限定的・間欠的に採掘されているほかは皆無である。

この金属は、日本国内において産業上重要性が高いものの、産出地に偏りがあり供給構造が脆弱である。日本では国内で消費する鉱物資源の多くを他国からの輸入で支えている実情から、万一の国際情勢の急変に対する安全保障策として国内消費量の最低60分を国家備蓄すると定められている。

深海底には、マンガン、鉄などの金属水酸化物の塊であるマンガン団塊(マンガンノジュール)として存在しているが、コストの関係で試験的な採取に留まっている。

国別の産出量

2011年における国別の産出量は以下の通りである[4]

順位 マンガン鉱
の産出量
(万トン)
全世界での割合(%)
1 南アフリカ共和国 340 21.3
2 オーストラリア 320 20.0
3 中華人民共和国 280 17.5
4 ガボン 185.8 11.6
5 ブラジル 120.9 7.6

  1. ^ a b c 新村出編『広辞苑 第六版』岩波書店、2008年、2672頁。
  2. ^ 寄与者:池田黎太郎, 市毛みゆき, 杉田克生, 『元素名語源集』 2014年, 千葉大学教育学部養護教育講座, doi:10.20776/B9784903328164, ISBN 9784903328164
  3. ^ 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1998年、139~140頁。ISBN 4-06-257192-7 
  4. ^ 『地理 統計要覧 2014年版』二宮書店、2014年、96頁。ISBN 978-4-8176-0382-1 
  5. ^ 太田, 恵造『磁気工学の基礎 I』共立出版、1973年。ISBN 4-320-00200-8 
  6. ^ 日本人の食事摂取基準(2015年版)
  7. ^ Dietary Reference Intakes for Vitamin A, Vitamin K, Arsenic, Boron, Chromium, Copper, Iodine, Iron, Manganese, Molybdenum, Nickel, Silicon, Vanadium, and Zinc.. Institute of Medicine (US) Panel on Micronutrients.Washington (DC): National Academies Press (US). (2001). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK222332/ 






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