マックス・ブルッフ 来歴

マックス・ブルッフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/26 02:40 UTC 版)

来歴

作風

ブルッフの作品を第一に特徴づけているのはその旋律性である。ブルッフは魅力的な旋律を生み出すことに長けており、それはほぼ全ての作品を覆い、親しみやすいものにしている。ヴァイオリン作品を多く書く理由についても「ヴァイオリンはピアノより旋律を良く歌うことができるし、旋律は音楽の魂だからだ」と語っている[2]

もうひとつの特徴は、民族音楽への興味である。ブルッフは「歌というものに対して不親切な時代における、ひとつの光明」として、ヨーロッパの様々なうたに興味を持ち、『スコットランド幻想曲』(作品46)や『コル・ニドライ』(作品47)をはじめとする複数の作品で民俗的な要素を取り入れている。当時の音楽界では、ヨハネス・ブラームスの『ハンガリー舞曲集』やアントニン・ドヴォルザークの『スラヴ舞曲集』のヒット(ブルッフも同様に出版社ジムロックに依頼されて『スウェーデン舞曲集』(作品63)を書いている)からも分かるように民俗的な題材への興味が高く、ブルッフがその分野に関わったことは彼の名声を高めた理由のひとつでもあった。

語法の一貫性も特筆される。ブルッフの音楽的理想はその活動の最初期に確立され、20世紀に入り第一次世界大戦を経験する最晩年までその態度を変化させることはなかった。彼はロマン派音楽の中でも古典的な理想を掲げており、フェリックス・メンデルスゾーンロベルト・シューマン、友人でありライバルでもあったヨハネス・ブラームスへの尊敬は終生変わることがなかった。それに対しフランツ・リストリヒャルト・ワーグナーら「新ドイツ楽派」へは明らかな敵意を持っていた。

生前のブルッフは合唱音楽の分野を中心に精力的に活動を行い人気を博したが、後年前述した少数の作品を除いて急速に忘れ去られ、今に至るまで復権はなされていない。その理由のひとつは、彼のスタイルが晩年には完全に時代遅れになっていたことであり、リヒャルト・シュトラウスマックス・レーガーら新しい世代には激しい攻撃を加えたことも、反動家としての彼の評判を広めることになった。また、ユダヤの題材を用いた作品で成功を収めたためにユダヤ人の血を引くのではないかと疑われ、1935年ナチス政府によって上演禁止となっていることも、彼の作品の演奏機会を少なくする理由であった。なお、ブルッフの祖先がユダヤ人だったという説はブルッフ本人や複数の家族が否定しており、確かな証拠は何もない。

主な作品

交響曲

協奏的作品(独奏と管弦楽のための作品)

室内楽曲

合唱曲

  • 『ユビラーテ・アーメン』 作品3(1858年)
  • 『フリトヨフ』 作品23(1864年)
  • 『美しきエレン』 作品24(1867年)
  • 『オデュッセウス』 作品41(1872年)
  • 『アルミニウス』 作品43(1875年、77年改訂)
  • 鐘の歌』 作品45(1879年)
  • 『モーゼ』 作品67(1895)
  • 『グスタフ・アドルフ』 作品73(1898年)
  • 『歌の力』 作品87(1912年)

オペラ

  • 『戯れと悪口と復讐』 作品1(1858年)
  • 『ローレライ』 作品16(1863年)
  • 『ヘルミオーネ』 作品40(1871年)

  1. ^ 伊藤恵子『チャイコフスキー』音楽之友社、2005年、172頁。
  2. ^ アーサー・M・エーブル(吉田幸弘訳)『大作曲家が語る 音楽の創造と霊感』出版館ブック・クラブ、2013年、221頁。


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