ボウイング 奏法としてのボウイング

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ボウイング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/21 16:41 UTC 版)

奏法としてのボウイング

ここで示しているのは「奏法」としての各用語である。奏法としてのボウイング用語は一定したものがなく、時代・国籍・流派によって違っており、また奏法の用語と発想用語が混在し、全体として混乱した状態になっているので注意。

デタシェ

フランス語で「分割」の意味で、英語のseparatedに当たる。クリアな発音で弾くが、出だしが特に強いわけではない。「普通の弾き方」とも言える。

アクセント

音の立ち上がりの圧力か速度を高めにし、発音をはっきりさせる。

マルトレ

マルテラートとも。「ハンマーで叩かれた」という意味で、英語のhammeredに当たる。高い圧力で音を始め、弓の必要量を一気に移動させて「ポン」という感じで音を出す。スタッカートやアクセントのついた音符で使うと適切な場合が多い。

コーレ

「貼りついた」という意味で、英語のgluedに当たる。マルトレと同様のことを、手首と指の運動だけで行う。短い音符で連続したスタッカートなどで、マルトレでは間に合わない場合に使われる。チェロやコントラバスには存在しない。

レガート

弓の返しぎわができるだけ滑らかになるよう、右手首や右手指の動きを駆使して音の境を目立たないようにするもの。

スピッカート

「目立った、際立った、明らかな」という意味。サルタート(「跳ねる」という意味)、飛ばし弓、(弦から弓が完全に離れることから)オフストリングとも呼ばれる。弓を弦上 1 - 2cmのところから落とし、はねかえる力を使って弓を跳ねさせつつ弾く。

ソティエ(サルタンド)

「跳びまわる、踊る」という意味。半飛ばしとも。弦から弓が離れるようでいてそうでもないことから、「オンフ」(Onff)と言う場合がある。速い16分音符などで、弓の張力で勝手に跳ねようとする力を利用し、返しの時に弦から弓が離れかかっている状態をつくり、それぞれの音をはっきりさせる。

リコシェ

「石や弾丸が水面や平面で斜めに跳ね返る」様子という意味。弓を弦の上から落とし、一弓で連続して跳ねさせる。ゴセックのガボット(新しいバイオリン教本版などの楽譜で、16分音符のスラーの中にスタッカートで書かれている箇所)は初心者が最初にリコシェに出会う例。

ワンボウ・スタッカート

単にスタッカートと言われる場合もある。ソリッド・スタッカートとも言う。一弓で何音も連続させる奏法だが、リコシェと違い跳ねさせることはせず、前腕の回転・手首でトレモロの動き・人差し指と親指で弓をはさむ動きのいずれかで弓を数㎝ずつ進める。大半はアップボウである。ホラ・スタッカートはワンボウ・スタッカートを駆使した難曲の例である。

トレモロ

「振動・揺らぎ」という意味。一つの音を何度も速く細かく弓を返して(方向を変えて)演奏する。独特の聴感が効果的で、描写的な音楽でよく使われる。合奏の場合は全員が同時に返す場合と、同時でなくなるべく速く返すようにする場合とがあり、聴感が異なる。

ポルテ

ここまでの用語に比べれば、認知度は落ちるが、ガラミアンの著書に記載がある[23]。意味は「運ぶ」で、英語のcarryに当たる。音の始めに圧力でこころもち大きな音を出し、徐々に音を軽くしていき、柔らかく区切るように弾く。テヌートのように「音の出だしや切り替わりは分からせたいが、音のすき間は絶対に入ってほしくない」という場合に、弓圧の変化で音の切り替わりを分からせるものである。

ランセ

ポルテと同様、やや認知度は落ちるが、ガラミアンの著書とそれ以外にも記載がある[24]。意味は「発射する」で、英語のlaunchに当たる。音のはじめが一番弓速が速く、音の終わりに向かって速度を緩めるもので、圧力は変化させない。付点のリズムを弾ませる場合や、一音一音をていねいにおさめつつ弾きたい場合などに使う。

ポルタート

ランセと同様、やや認知度は落ちるが、ガラミアンの著書とそれ以外にも記載がある[25]。意味は「持ってくる」で、英語のbringに当たる。ひと弓で音を区切りつつ複数の音を出す。ひと弓で弾くというだけで、やることはほぼポルテ。音の最後に弓圧を軽くし、すぐに弓を弦に食い込ませる。


  1. ^ 記号は「ヴァイオリン各駅停車」による。
  2. ^ 弦楽器奏者にとっては常識的な話であるため、出典は挙げたもの以外も当然あり得る。ただし、日本語の弦楽器の文献は貧弱であり、英語版の書籍にしかなかった記載も多い。
  3. ^ いまさら聞けないヴァイオリンの常識、25~27ページ。
  4. ^ 『おのふじびおらデラックス』2015追伸付版、小野富士著、せきれい社。
  5. ^ ヴァイオリン各駅停車、180ページ。
  6. ^ ヴァイオリン各駅停車、186ページ。
  7. ^ ヴァイオリン各駅停車、189ページ。
  8. ^ ヴァイオリン各駅停車、199ページ。
  9. ^ ヴァイオリン各駅停車、201ページ。
  10. ^ ヴァイオリンBasics、41ページ。
  11. ^ ヴァイオリン奏法と指導の原理、58ページ。
  12. ^ The Violin Lesson、5ページ。
  13. ^ a b c The Violin Lesson、13ページ。
  14. ^ The Violin Lesson、84ページ。
  15. ^ a b The Violin Lesson、7ページ。
  16. ^ The Violin Lesson、2ページ。
  17. ^ The Violin Lesson、8ページ。
  18. ^ The Violin Lesson、22ページ。
  19. ^ 基本と言うには難しく、奏法と言うには半端であり、しかし大変に重要な用語であるため、敢えて項を独立させて記載する。
  20. ^ 新しいバイオリン教本3、43ページ。
  21. ^ いまさら聞けないヴァイオリンの常識、79ページ。
  22. ^ 海外ではコーレが重要技術と認知されているようであり、日本でヴァイオリン教師が指弓の習得を気に掛けるのと同様のようである。
  23. ^ ガラミアン同著68ページ。
  24. ^ ガラミアン同著68ページ。また、遠藤記代子「かっこいい!ヴァイオリン ベーシックスタディ」にも記載があるが、奏法自体の説明はされておらず、既知のものとして扱われている。
  25. ^ ガラミアンの同著、68ページ。
  26. ^ この項に関しても、基本的すぎて文献を示すことができない。ここでは、弦楽器を習ったり、弦楽合奏やオーケストラに所属したことがある人が暗黙のうちに共有している「弓づかい」の意味でのボウイングについて、可能な限り公平な記載を試みる。





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