フレーバー (素粒子)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/27 05:40 UTC 版)
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概要
「フレーバー」と言う語は、ハドロンのクォークモデルの中で1968年に初めて使われた。クォークモデルが提唱された当初、フレーバーはアップ、ダウンおよびストレンジの3つのクォークを区別する量子数として導入された。しかし、第4のクォークであるチャームクォークが理論的に予想された後に発見され、さらにボトムクォーク、トップクォークが発見された。そのため、これは量子数ではなく単にクォークとレプトンの種類を指す用語となった。(「量子数としてのフレーバー」は#フレーバー量子数の節を参照)
クォークおよびレプトンのフレーバーは、現在6種類ずつ発見されている。クォークはアップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、ボトムおよびトップの6種類が存在し、それぞれアップ-ダウン、チャーム-ストレンジ、トップ-ボトムで弱アイソスピンによる対を形成している[1][2]。このそれぞれの対を世代という。すなわちアップ-ダウン対を第1世代、チャーム-ストレンジ対を第2世代、トップ-ボトム対を第3世代という[3]。
レプトンには電子、ミュー粒子、タウ粒子、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの6種類が存在し、それぞれ電子-電子ニュートリノ、ミュー粒子-ミューニュートリノ、タウ粒子-タウニュートリノで弱アイソスピンによる対を形成している[1]。クォークと同様に電子-電子ニュートリノ対を第1世代、ミュー粒子-ミューニュートリノ対を第2世代、タウ粒子-タウニュートリノ対を第3世代という[3]。
弱い相互作用の入った標準理論や大統一理論などの理論の枠組では、弱アイソスピンと世代でフレーバーが表現されるため、しばしばフレーバーと世代は区別されずに用いられる。
量子色力学においては大局的対称性であるフレーバー対称性が存在するために、フレーバー量子数は保存量となる。 一方、標準模型の一部をなす電弱理論においてはこの対称性は破れており、クォークやレプトンの崩壊を引き起こす。 レプトンの世代に関するフレーバー量子数は標準模型の範囲内では保存量であるが、 ニュートリノ振動の観測により、レプトンの世代に関するフレーバー量子数は保存されないことが分かっている。 この事実は標準模型を拡張する必要性を端的に示すものであり、非常に重要な観測結果である。
定義
もし、同一の相互作用を持つ二つ以上の粒子が存在すれば、それらは物理作用をせずに交換されうる。これら二つの粒子のどんな(複素)線形結合も、それらが互いに直交または垂直である限り、同じ物理を与える。言い換えれば、この理論はのような対称性変換を持つ。ここで、uおよびdは二つの場でMは単位行列式を持つ任意の2 × 2ユニタリ行列である。このようなリー群からの行列はSU(2)と呼ばれる(特殊ユニタリ群参照)。これはフレーバー対称性の例である。
- ^ a b 正確には左手型成分だけが弱アイソスピン対を形成している。
- ^ 実際には、アップの対となっているのはダウンの質量固有状態ではなく、ストレンジ、ボトムが混じっている。
- ^ a b アノマリーの条件から、クォークとレプトンの世代数は等しく、クォークとレプトンを併せて第1、第2、第3世代と呼ぶ場合が多い。
- ^ 本文の表を参照 S. Raby, R. Slanky (1997). “Neutrino Masses: How to add them to the Standard Model”. Los Alamos Science (25): 64. オリジナルの2011年8月31日時点におけるアーカイブ。 .
- 1 フレーバー (素粒子)とは
- 2 フレーバー (素粒子)の概要
- 3 フレーバー量子数
- 4 量子色力学
- 5 保存則
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