フレーバー (素粒子)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/27 05:40 UTC 版)
量子色力学
量子色力学では、クォークは六つのフレーバーを持ち、それらのクォークの質量はそれぞれ異なっている。その結果、それらは厳密には互いに交換可能ではない。アップおよびダウンフレーバーのクォークはほぼ等しい質量を持ち、これら二つのクォークは理論上、近似的なSU(2)対称性(アイソスピン対称性)を持つ。ある環境の下では、同じ質量を持つためのNfフレーバーを導入することで、有効なSU(Nf) フレーバー対称性を得ることができる。
ある環境下では、クォークの質量は完全に無視することができる。その場合、クォークの各フレーバーはカイラル対称性を持つ。その時、各クォーク場の左巻きおよび右巻き部分について独立にフレーバー変換を施すことができる。このフレーバー群はカイラル群SUL(Nf) × SUR(Nf)である。
もし全てのクォークが等しい質量を持つなら、その時このカイラル対称性は、クォークの両方のヘリシティへの同じ変換を適用する対角フレーバー群の"ベクトル対称性"について破れている。このような対称性の減少は明示的対称性の破れと呼ばれている。明示的な対称性の破れの大きさはQCDにおけるカレントクォーク質量によって制御される。
クォークの質量がない場合でも、理論の真空がカイラル凝縮を含むとすれば、カイラルフレーバー対称性は自発的に破れる。(低エネルギーQCDにおいて破れるように。)これは、QCDでは価クォーク質量としてよく現れるクォークの有効質量を生じる。
QCDの対称性
実験の解析によって、クォークのより軽いフレーバーのカレントクォーク質量はQCDスケールΛQCDよりかなり小さいことが分かっている。それゆえ、カイラルフレーバー対称性はアップ、ダウンおよびストレンジクォークについてのQCDへの良い近似である。カイラル摂動理論およびそれより単純であるカイラルモデルの成功はこの事実から生じている。クォークモデルから引き出される価クォーク質量はカレントクォーク質量よりもかなり大きい。このことは、QCDでは、カイラル凝縮の形成についての自発的カイラル対称性の破れが生じることを示唆している。他のQCDの位相は、また別の方法でカイラルフレーバー対称性を破りうる(クォーク物質を参照)。
- ^ a b 正確には左手型成分だけが弱アイソスピン対を形成している。
- ^ 実際には、アップの対となっているのはダウンの質量固有状態ではなく、ストレンジ、ボトムが混じっている。
- ^ a b アノマリーの条件から、クォークとレプトンの世代数は等しく、クォークとレプトンを併せて第1、第2、第3世代と呼ぶ場合が多い。
- ^ 本文の表を参照 S. Raby, R. Slanky (1997). “Neutrino Masses: How to add them to the Standard Model”. Los Alamos Science (25): 64. オリジナルの2011年8月31日時点におけるアーカイブ。 .
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