ナズナ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/25 16:34 UTC 版)
名称
和名ナズナの由来は諸説あり、早春に開花して夏になると枯れることから「夏無き菜」、つまり夏無(なつな)から変化したという説[7][8]、撫でたいほど小さく可愛い花(菜)の意味から、「撫で菜(なでな)」から転訛したという説[7][9][10]、あるいは朝鮮古語のナジから「ナジ菜」となり変化したなどの説がある[7][11]。
ペンペングサ(ぺんぺん草)[7]やシャミセングサ[12]という別名がよく知られ、ビンボウグサ[9]などの呼び名もある。「ペンペン」は三味線を弾く擬音語で、花の下に付いている果実の形が、三味線の撥(バチ)によく似ていることから名付けられている[13][14][15]。また、シャミセングサの由来も同様に、果実が三味線のバチの形に似ることによる[16]。 英名の Shepherd's purse は「羊飼いの財布」の意味で、学名の種小名の語義も同じである。中国植物名(漢名)では、薺(せい)[15]、薺菜(せいさい)[13]と書かれる。
分布・生育地
北半球に広く分布する[15]。日本では北海道から九州まで分布する[14]。草原、野原、土手、荒れ地や、各地の郊外の道端、空き地、畑や庭のすみなど、日当たりの良いところならどこでもふつうに見られる[13][14][17][5]。
形態・生態
越年生の草本(二年草)。地中に白い直根がある[17]。春になると茎が伸びて草丈は10 - 50センチメートル(cm)になり[15]、春の終わりごろには50 cm近くに生長する[9]。冬越しの根生葉は、不規則に羽状に深く裂けた葉で、地面に張り付くように接して放射状に広がる[14][12][5]。これをロゼットといい、早春の弱い日光を少しでも多く受け取ろうとする性質と考えられている[16]。
株元にある葉の長さは10 cmで、ダイコンの葉のような切れ込みがあり羽状に裂けて、裂片は尖り、先は大きめになる[14][18][15][19]。茎につく葉は小さめで、柄がなく基部は茎を抱き、切れ込みは無い[14][18]。茎の上部につく葉は楕円形で、先は尖る[16]。
花期は春から夏(3 - 7月)ころで[7][18]、越冬するので背の低いうちから咲き始める[9]。花茎を伸ばして分枝する茎先に総状花序を出して、有柄で十字形に4枚の白い花弁を持つ直径3ミリメートル(mm)ほどの小さな花を多数付ける[14][18]。下から上へと次々に花を咲かせる無限花序で、下の方で花が終わって種子が形成される間も、先端部では次々とつぼみを形成して開花していく。花後は順次、実を結ぶ[5]。
果実は特徴のある軍配形の倒三角形で、左右2室に分かれていて、それぞれの室に5 - 6個の種子が入っている[9]。実は次第に膨らんで2室に割れて種子を散布する。こぼれ落ちた種子は秋に芽生え、ロゼットで冬を越すが、春に芽を出すこともある、越年草、または一年草である。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Capsella bursa-pastoris (L.) Medik. var. triangularis Grunner ナズナ(狭義)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月26日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Capsella bursa-pastoris (L.) Medik. ナズナ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月26日閲覧。
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ a b c d e f g 金田初代 2010, p. 134.
- ^ 琵琶湖博物館外来生物図 琵琶湖博物館
- ^ a b c d e f g h i j k 田中孝治 1995, p. 100.
- ^ 深津正 2000, p. 204.
- ^ a b c d e f g 亀田龍吉 2019, p. 16.
- ^ 深津正 2000, p. 203.
- ^ 深津正 2000, pp. 204–205.
- ^ a b c d e f 主婦と生活社編 2007, p. 48.
- ^ a b c d e f g 貝津好孝 1995, p. 52.
- ^ a b c d e f g h i j k l m 馬場篤 1996, p. 81.
- ^ a b c d e 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 160.
- ^ a b c d e 川原勝征 2015, p. 19.
- ^ a b c d 高橋秀男監修 2003, p. 80.
- ^ a b c d e 大嶋敏昭監修 2002, p. 297.
- ^ 久志博信『「山野草の名前」1000がよくわかる図鑑』主婦と生活社、2010年、19ページ、ISBN 978-4-391-13849-8
- ^ 深津正 2000, p. 205.
- ^ 高橋幹夫『江戸あじわい図譜』215頁。
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